◇リリー・マルレーン(1981年 西ドイツ 120分)
原題/Lili Marleen
原作/ララ・アンデルセン『Lili Marleen』
監督/ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 脚色/マンフレッド・プルツァー・ファスビンダー
撮影/ザヴィエル・シュワルツェンベルガー 美術/ハリー・ベアー 音楽/ペール・ラーベン
出演/ジャンカルロ・ジャンニーニ メル・フェラー カール・ハインツ・フォン・ハッセル
◇ハンナ・シグラの歌声に酔え
ララ・アンデルセンが「リリー・マルレーン」のレコードを出したのは、1939年。
でも、まるきり売れなかったらしい。それが、たまさかドイツ兵の慰問のためのレコードに紛れ込んでいたことから、戦場で流され、世界的な大ヒットになった。
マレーネ・ディートリッヒがこれを吹き込んだのは、亡命先のアメリカで、ぼくなんかはどちらかというと、ディートリッヒ版の方が印象が濃いものだから、映画を見たとき、ん?と一瞬とまどい、やがて「そういうことだったんだ~」と納得した。
ま、ララ・アンデルセンの自伝が元だそうだけど、原作を読んでないぼくは、どこまで脚色されてるのかはよくわからない。
でも「リリー・マルレーン」の誕生秘話としては、よくできてる。ただ、惜しむらくは、詰め過ぎてちょっと余韻に欠ける気もするんだよね。編集のおもいきりが良すぎるっていうんだろうか、とにかく、めまぐるしい。ナチの首脳陣が描かれていないためか、歴史的な面の展開も難しく感じられる。
けどまあ、ファスビンダーがそれだけ、ひとりの女性に拘ってるのもわかるし、ララ・アンデルセンの半生を客観的に見つめてたってことにもなるんだろね。
ま、それはそれとして、ハンナ・シグラの嗄れた歌声は、逸品だわ。