◎仇討(1964年 日本 103分)
英題 Revenge
staff 監督/今井正 脚本/橋本忍 企画/岡田茂、小川貴也、翁長孝雄、本田延三郎 撮影/中尾駿一郎 美術/鈴木孝俊 音楽/黛敏郎
cast 中村錦之助 田村高廣 佐々木愛 神山繁 丹波哲郎 石立鉄男 加藤嘉 信欣三 三田佳子 山本麟一 進藤英太郎 小沢昭一 蜷川幸雄
◎播州脇坂藩竜野城
橋本忍の傑作のひとつであることはまちがいない。
けど、いったいこの企画はどうやって成立したんだろう。当時、時代劇は衰退の一途をたどってて、血みどろになって戦うリアリズムに活路を見出していた。だから、この果し合いを主場面にした作品になったであろうことはわかるんだけど、誰がいいだして作品の中身を検討したんだろう。ふつうだったらこんな地味な企画はとおらない。原作があるならまだしも、橋本忍のオリジナルをよくもまあ当時の東映つまり大川博が許したもんだ。
しかもプロデューサーにのちの社長岡田茂と同じく東京大泉撮影所所長の翁長孝雄が名をつらねてるのを見れば、この人達が橋本忍と顔をつきあわせて物語を練ったことになるんだけど、いや、まじな話、これだけ凄い構成をよくぞ練られたもんだ。というより、橋本忍の独壇場といっていい回想形式という実に映画的ながらも東映的ではない構成を、よくぞ、このプロデューサーたちが認めたもんだ。
いや、まったく、たいしたもんだわ。
作品自体は決して大掛かりなものではないし、果し合いの場といってもロケセットはたいしたことはないんだけど、どこをとってもリアルな時代劇になってるのは、さすが今井正というべきなのかそれとも当時の京都太秦撮影所の力量なのか、どちらにせよ見事なものだった。
役者さんたちも若くてなんだか気持ちがいいしね。
中でもやっぱり錦之助の迫力は凄い。神経が昂ぶって血まみれになって突進するさまはことに凄い。
必見だね。