
WBAバンタム級タイトルマッチ
昨日ラスベガスで行われ、論議を呼ぶ結末に終わったカンピーヨ対シュメノフ2。最も問題視され非難されているのが117-111でシュメノフ勝利とスコアしたパトリシア・ジャーマンさんなんですが、日本のファンには馴染みのある名前だったりします。
ジャーマン女史の名前を日本のボクシングファンに刻みつけた24年前の試合、大阪で行われたバンタム級戦、ウィルフレド・バスケス選手(Wilfredo Vazquez)対六車卓也選手(Takuya Muguruma)の一戦は、熱戦の末に12回三者三様のドローに終わって王者バスケス選手が王座防衛に成功した一戦でした。(体格比較)
日本で行われる世界タイトルマッチでは初の女性ジャッジということで、試合前は勝利の女神となるか?みたいな感じで好意的に迎えられていたジャーマンさん。しかし3人がそれぞれ異なったスコアを示したこの試合においてジャーマンさんのスコアは117-112バスケスというもの。(残る2人は116-114六車、114-114ドロー)
終始積極的に攻めつづけていたのは六車選手だったのにもかかわらず、5ポイントもの差をつけてのバスケス勝利。さらに試合後にジャーマンさんが残した「腫れた顔は嫌いよ」との言葉で日本の多くのファンを憤怒させたジャッジ、、、
というのが一般的な認識でしょうか。(ウィキペディア(Wikipedia)でもやはりそのように書いてありました。)
試合は終始積極的に前へ出る六車選手をバスケス選手が真っ向から迎え撃つ打ち合いで始まります。六車選手の前進を受けてロープに詰まるバスケス選手なのですが、巧みなカバーリング、ボビングで六車選手の攻撃の多くを殺しながらフォロースルーを効かせた非常に強く的確なパンチで応戦します。
バスケス選手の左右フック、アッパー、右クロスなどのパワフルで正確なパンチがかなり入るのですが、まったく前進が鈍らずこちらも力強いショートの攻撃をしつこく出し続ける六車選手のタフさとスタミナは驚異的なものでした。
この六車選手のエンドレスアタックに閉口したかのように、中盤からは打ち合う場面では打ち合いながらも、無理には付き合わず足を使ってロープを背にする状況から退避する場面も見せ始めるとペースは王者のものへと傾いていきます。9回以降はバスケス選手の「ボクシング」がペースをはっきりとキープしていた流れ。11回に六車選手が意地を見せて良いラウンドを作りますが、続く最終回は王者のハードなアタックが挑戦者の前進を弾き返し試合終了。
公式のスコアは上述の通り三者三様のドローとなった試合でしたが、私としてはバスケス選手の正確で強いブローが上回った試合と見ました。シロート採点117-111バスケス。
試合を生中継で見ていたときは、こんな事があって良いのか!と怒りに震えたものでしたが、当時はまだ採点基準も何も知らない小僧。
採点基準を理解し、そこそこの数の試合を見て採点の傾向もある程度理解したつもりの現在の目で見てどうなのか、非常に興味深かったのですが、現在の目で見た限りこの試合は疑いなくバスケス選手の勝利でした。
ジャーマンさんのスコアは至極まっとうなもので立派なジャッジ。問題の「腫れた顔は嫌いよ」との発言も本当に言ったのかどうか疑わしく感じてしまいます。日本語訳ではなくジャーマンさん自身がどう発言したのか英語で知りたいところであります。
などと、ジャーマンさんあんたはプロや、とか思ってたので、今回の不可解採点が解せない思いであります…
Wilfredo Vazquez Snr vs Takuya Muguruma
2010-01-31 21:08:26
ジャッジの話も大阪のマスコミに作られた可能性が十分ありますね。「顔見ればわかるだろ」的
な発言はあったのかもしれませんが。
ただそれも関西での六車の人気ゆえ。当時の六車に対する盛り上がり方は非関西圏の人にはちょっと理解しにくいかも。
ヘナロ・ガルシアをKOしたとはいえ、それほどの強敵と対戦してないですがどうなんでしょう。
バスケスは小柄で常にロープを背負ってましたが、硬そうなパンチを六車の顔面にモロに当てていたのが印象的でした。
反面、六車のパンチはあまりクリーンヒットしてなかったと思います。
六車のことは「何て打たす選手なんだろう、脳が壊れる、見てられない」と思ってました。
最終回、バスケスが、いきなりの右を主体としたアウトボックスをして、完勝したと思いました。
次の日の新聞で六車のことを「非常にガッツのある選手だ、しかし、私のハードパンチをあれだけ受けたのだからら、(体のことを考えたら)引退した方が良い」とコメントしてました。
バスケスは小柄だけど、パンチにウェートを乗せるのがうまく、真性ハードパンチャーだと思います。エロイロハス戦の完全KOが印象的でした。
終わった瞬間「勝った!」と叫んでました。
採点発表後、解説の輪島さんが「え~これはないわあ」と率直に感想を言っていたのがとても印象的。
この人の日本での戦いはいずれも非常に印象的なものでした。
>ふみさん
日本の放送ですから、日本人を応援する実況や解説ってのはアリだと思うんです。
ただ実際に解説者が日本人選手が劣勢だと感じた時にそれをハッキリと言い出せないような状況というか雰囲気ってのが問題なんだと思います。
輪島さん、二郎さんともに六車優勢と見ていたのかもしれませんが。
バスケスJrは以前にに何試合か見ましたが、その時は荒削りな未完成の選手といの印象でした。その頃からだいぶ時間が経っているので現在どうなのかはわかりませんが…
攻撃力はある選手との印象でしたので、同じく攻撃力のあるソンソナとの対戦は興味深いですし、以前と比べてどう成長しているのか楽しみです。
>パクさん
記憶の中の六車選手ってのは、とにかく前に前に出て手を出し続けるコリアンファイター的イメージだったのですが、見返してみると一発一発のパンチを強く打てて、しかもしつこく連打を出せるかなりレベルの高いファイターだったんだなと驚きでした。
>まっからむさん
バスケスの試合後のコメントも納得できるほど、強烈なパンチをしこたま食ってましたね。
ただ強いパンチを食って一瞬体が傾くような場面こそ見せながらも、最後の最後まで力のあるパンチを出し続けていた六車選手のタフさとスタミナは本当に驚異的なものでしたし、バスケスがそれに対して脅威を感じていたようにも見えました。
私は、完全に終わったと思っていたバスケスがメキシコでヒバロ・ペレスをチョロンチョロンにした試合なんかが印象的ですね。
>だっくすさん
輪島さんは六車勝利をわりと本気で言っていた感じでしたね。
二郎さんは「日本でやってるんですから・・」とか言っていたので、内容的に厳しい面もあったとの認識はあった感じを受けました。
私もこの試合をハッキリ覚えています。
当時ジャッジの判定結果には日本人として非常に悔しい思いをしながら見ていました。
今冷静に振り替えってユーチューブでこの試合を見てたけど、かなり接戦でしたね。
あちこちでこの試合の寸評を見ていて、バスケス判定勝ちだったと言ってる人が結構見受けられるけど、自分の採点では114ー114のドローでした。
自分も今までいろんな世界戦の試合を見ていて思ったのが、どちらにポイントをつけていいか分からないラウンドが3ラウンド以上ある試合はほとんがスプリットデシジョンになりやすいという事です。
この試合もそうですが特に中盤から後半にかけて、バスケス、六車とどちらにポイントをつけていいか分からない悩ましいラウンドが4ラウンドあり、どっちに転ぶかで結果が全然違うものになっていた。そう言った意味で大変『ジャッジ泣かせ』の試合だったかも知れません。
どっちにつけていいのか迷うラウンドがあるからこその3人のジャッジなんでしょう。
現行の採点制度が抱える問題点ってのは少なくない、ってのは確かなことだと一面では感じますが、ならばそれを解消する新しい方法ってのはどんなものなのか。
少なくとも私には思いつけないものだったりして、そうならば今のやり方が最善なのかなぁ、、、
てな感じでなかなか結論が見出せないでいます。
ただ1つ。接戦だった場合、すべての人が納得する判定結果というものはありえないものだ、というのは確実だと思ってます。