感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

手の変形性関節症(OA)は骨びらんを起こすか

2015-04-08 | 免疫

当初、手指のPIP関節などの疼痛あり来られた方で、PIP腫脹や圧痛の目立ち、RFは陰性でも早期RAを否定しきれずエコーやMRIなど画像検査で滑膜炎所見あればなおさらRAとして治療に入ることが多い。しかしその後比較的速やかに炎症も症状も改善して初期治療がうまくいったと考え経過をみている例で、XPをとっていくとDIPやPIPに骨棘変化など明らかになってきて、またそれら以外の関節への病変の広がりもなく、結局OAだったかと思われる例にも遭遇する。OAは手指関節疼痛はでるものの腫脹や圧痛は強くなく、炎症反応もでず、骨びらんも来さないと思われてきたので、びらん性手指OAの疾患提唱は、現場に混乱を招く。これは通常多関節性で、長期間持続しうる、骨棘が小さいまたは存在しないことがある、などから手のRAと間違えやすいと思われる。 最近の文献をまとめた。

 

 

まとめ

 

・古典的にはリウマチ医により変形性関節症(OA)は、炎症性関節炎が存在することを特徴とするいわゆる関節炎と区別するために、非炎症性関節疾患であるとみなされてきた。いまだOAは炎症状態を示す接尾辞‘itis’の代わりに、退行性機能の有病を強調する接尾辞‘osis’を含む用語により呼ばれている。

・しかし過去数年間に、様々なタイプの炎症がOAの病因に重要な役割を果たしていることを示唆した証拠が蓄積されている。

・OAに関与するすべての関節組織における滑膜、軟骨と軟骨下骨などの炎症性サイトカインのアップレギュレーションによって、OA患者の少なくとも50%の滑膜において炎症の特徴の存在を証明されている。

・OA患者の軟骨細胞、ならびに滑膜細胞は、インターロイキン1β(IL-1β)および腫瘍壊死因子α(TNF-α)の産生するレベルの増加を、次いで、メタロプロテイナーゼ(MMP)を含む他のサイトカインおよび炎症性メディエーターの産生および活性を刺激する、プロスタグランジンE2、一酸化窒素(NO)および活性酸素種(ROS)増加をしめす。

・機械的ストレス、静的および断続的な圧縮により、NO合成酵素(NOS)発現などと同様に軟骨細胞によるNO産生を増加させる。 ROSは、間接的に軟骨細胞のアポトーシス、異化プロセスおよびマトリックス分解の促進に関与している。

 

・しかし古典的な炎症状態と一致した特徴を示すのはOAの全体でも一部のみで、ほとんどのOA患者において血液中の急性期マーカーは正常値で、滑液中の白血球数は2000 per mm 3より低い数値である。したがって、現在は、手OAバリアントのみが炎症性のものであると提案され分類されている。

・時間的に、炎症性手OA(HOA)患者のほとんどがX線撮影びらんを明らかにするため、用語「びらん性HOA」‘erosive HOA’ はより具体的と考えられた。

びらん性の手変形性関節症(EOAは、非びらん性疾患よりも高い臨床的負担に関連した手の変形性関節症(HOA)のサブセットと考えられている。

・より大きい炎症の程度と単純X線での軟骨下骨びらん所見は、手の一般のOAからEOAを区別するのに役立つ。

 

・EOAの有病率は一般集団の2.8%であると推定されている、そして 症候性HOAを持つものにおいては15.5%に上昇する(Ehrlich, 2001)。

・Verbruggen とVeysらは、症候性の更年期HOAの患者の半数数がXPでびらん性の特徴を示していることがわかった。

・Maheuらは88名の連続した症候性HOA患者のうち38名(43.1%)においてびらん性HOA(少なくとも2つの画像上びらんの存在によって定義)を観察した。

・EOAは主に閉経後の女性におこり、女性男性比率が12:1 (Greenspan, 2003)。発症の典型的な年齢は50〜55歳の間。

・EOAサブセットがほぼ独占的に女性に影響を与えていることが確認された。Punzi らの調査では126は女性であった(89.3%)。

 

・EOAは、別の病気の実体であるのか、あるいはHOAの激しいステージであるのかは、これまで不明である。

・その同一性は議論されており、種々HOAのサブセットとして提案されている、 すなわちHOA、HOAの重症型、HOAの炎症期や、OAとは異なる実体の変種など。

・びらん性進化につながるプロセスはまだ不明である。

 

・EOAの臨床経過は、炎症症状および徴候のエピソードによって特徴付けられる。

・指節間関節を対象とし、突然の発症、著明な痛み、機能障害、こわばり、軟部組織の腫脹、紅斑、感覚異常を含む炎症症状および徴候、軽度C反応性タンパク質上昇、と非びらん性HOAよりも悪いアウトカム、によって特徴づけられる。

・分布に関しては、最も影響を受けやすい関節はDIPで次にPIPである。最も多い指は第4および第5で続いて第2、第3指である。大関節の関与も認められたが稀であると推定。(足、膝、腰椎、肩)

・EOAは結節OAよりDIP、PIPと母指IP関節で有意に高いXPびらんスコアを有し、MCPとCMC関節ではそうではなかった。これからはEOAにてのIP関節の選択的標的性をサポートする。

・EOAの特徴は、多くの場合、夜行性の指先のズキズキしたthrobbing感覚異常である。

・EOAは、通常は、多関節性であることを強調することが重要で、同時に複数関節が罹患し、長年持続しうる。これは結節性HOAとは対照的である。結節性HOAでは、「たどたどしく」‘stuttering’発症する多関節症で、遠位IP(DIP)と近位IP(PIP)の各関節の主に関与の開始時にそのフレアを発揮する。

・いわゆる萎縮型のようにEOAのいくつかのケースでは、骨棘は小さな、あるいは存在しない、したがって、他の形態の関節炎でいくつかの誤解を招く。

 

・確立された診断基準はない

・Anandarajahらのの研究の目的のため基準は、単純X線写真上の少なくとも2指節間関節(1つはDIP関節)におけるびらんの存在(中央性びらんの存在に重点)、RFやACPA陰性、乾癬性関節炎病歴や家族歴が存在しない、結晶誘発性関節症の病歴がない

 

・EOAの診断は、指節間関節(IPJ)におけるX線写真上の軟骨下びらんの存在に基づいている。軟骨下びらんsubchondral erosion、骨皮質の破壊と骨性強直を含むことができ、その後の修復の変化によってX線写真にて定義される。診断するのに必要なびらんIPJの数は明らかではないが多くでは複数のびらんIPJが必要であると述べられている。

・EOAに特徴的であると考慮されるのは一般的に、それらは中央性centralのびらん、一般的に古典的な「カモメ翼seagull-wing」または「鋸歯saw-tooth」パターンを示すこと、である。 最終的には強直をもたらす。強直はEOA患者の約15%に起こると推定される。

・中央性の病変の性質は、滑膜炎症の結果というよりむしろ、軟骨下崩壊または圧縮性萎縮を表すことを示唆している。

・非びらん性OAと比較したとき、IP強直ankylosisは、びらん性HOAでほぼ独占的に存在している。

 

・急性期反応の古典的な指標のうち、赤血球沈降速度(ESR)とCRPは、低度であるが活動的OA患者の一部で増加が認められた。

・炎症マーカーのC反応性タンパク質及びミエロペルオキシダーゼは疾患活動性と相関することが見出されている。

・滑膜炎のマーカーと考えられるヒアルロン酸(HA)の血清レベルは、 非びらん性HOAと比較してびらん性HOA の55名の女性で有意に高いことが判明した。

・びらん性および非びらん性HOAの両方で最も有用な軟骨マーカーは、コラーゲンのよう。(Coll) 2-1, Coll 2-1NO(2) and Col2-3/4C(short)

・アディポネクチン(レジスチンではなく)が非びらん性HOAまたは健常対照よりも、びらん性において有意に高かった。

 

・最近の研究では、XP上の浸食などびらん性HOAの他の古典的な特徴は、より頻繁に敏感な画像技術、特に超音波検査及びMRIを用いて調べたときHOAを有する患者において予想以上に見られると示唆

・びらんや骨棘の検出は、X線写真に比べて超音波でかなり多かった。

・超音波を用いた最近の研究は、このようなパワードップラー信号(PDS)、グレースケール滑膜炎、滑膜肥厚および滲出などの炎症性徴候は、しばしばHOAとEOAの両方に見られることを実証した。

 

・Kortekaasらは(ACR基準を満たす)連続した手の変形性関節症(HOA)の患者を超音波所見を調査。十八節間関節をVerbruggen-Veys解剖学的相スコアを使用してX線写真で採点し、EとR相はびらん性と定義した。55 名HOA患者の51%はEOAを持っていた(平均年齢61歳、86%女性)。 手の変形性関節症(HOA)でびらん性OA(EOA)サブセットの非EOAに対し、超音波評価により炎症を比較した。滲出液、滑膜肥厚およびパワードップラー信号(PDS)は、4点スケールで超音波で採点した。94のびらん性関節では滑膜肥厚、滲出およびPDSは、それぞれ、13%、50%および15%に認められた。また896の非びらん性関節では、それぞれ10%、26%、8%であった。PDSのみE相と関連していた(OR 5.3、20.5、95%CI 1.3)。EOAの患者でびらんのないIPJは、非EOAの患者のIPJと比較してより多くの炎症性の超音波の兆候を示した:PDS (OR 3.2, 95% CI 1.6 to 6.4) と、浸出液 (OR 2.2, 95% CI 1.2 to 3.8)。

 

・EOAの治療は、まだ不十分なまま。

・非EOAとは対照的に、パラセタモール、さらに非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、EOAの症例のかなりの数が無効である

・コルチコステロイドの関節内注射は、症状を制御する際に、より効果的であると思われる

・いくつかの研究は、ヒドロキシクロロキンがよく耐容され、炎症マーカーの改善と関連し得ることが実証されている 

・びらんHOAの破壊的な傾向を低減するために、選択された例ではメトトレキサート、金塩など一般にRAに用いられる薬物で治療されたが、説得力のあるは証拠ない。

 

 

参考文献

Ann Rheum Dis. 2013 Jun;72(6):930-4.

Best Pract Res Clin Rheumatol. 2010 Jun;24(3):301-12.

Discov Med. 2010 May;9(48):468-77.

Eur J Intern Med. 2013 Jan;24(1):11-5.

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。