感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

抗CCP抗体とリウマチ以外の疾患

2015-04-21 | 免疫

リウマトイド因子RFにつきまとめました前回の続きです。

抗シトルリン化タンパク質/ペプチド抗体(ACPA)はRA診断においてさらに特異度を改善したとされていますが、はたしてこれが陽性であればRAとほぼ診断できるのでしょうか? 

ACPA陽性と関節症状で当初RAと診断したものの、移動性の関節炎であったり、あまり炎症反応上昇せずにすぐによくなったり、乾燥症状やレイノーがはっきりして、他の膠原病だったと思われる例も経験します。やはりEULARのRA分類基準にあるようにACPAは所見の一つであって、他にRA所見がそろうことが重要だと思われます。

 

 

まとめ

 

・もともとRAの診断には抗体検査は、リウマチ因子(RF)の存在に限定されていた。60〜80%の感度で診断において有用であるが、他の自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)およびシェーグレン症候群等におけるRFの存在は、診断特異性を低下させる。

・抗CCP抗体は、主に局所的なプラズマ細胞により滑膜において産生される、そして及び滑膜タンパク質のシトルリン含有抗原決定基に結合するように設計されている。酵素peptidyl-arginine-deiminase generatesは、通常のアルギニン残基に作用してシトルリン残基を生成する。

 

・抗シトルリン化タンパク質/ペプチド抗体(ACPA)は、関節リウマチ(RA)診断の70%の感度および95%の特異度を持つRA関連の主要な自己抗体系である。

・このアッセイの特徴的な特性を評価するために使用されるコントロール血清は、主に正常個体、 感染症を有する患者、 またはリウマチ性疾患の多種多様の患者のコホートの患者から来ている

 

・抗CCP抗体の産生はまた、若年性特発性関節炎、MCTD、SLE、SSc、自己免疫性肝炎、SjS 、PsA、および感染性疾患(活動性結核)を有する患者において報告されている、

 

・Takasakiらは様々な膠原病患者からの血清ACPAを分析 (96名のRA、86名のMCTD、42名のSLE、23名のSSC、21名のPM/DM、17名のSjS)。ACPA検出はRAで85%、そしてMCTD 9%, SLE 14%, SSc 13%, PM/DM 14%, SjS 18%であった。RA診断基準を満たした8 名のMCTD患者では、7名がSLEおよびSSCのoverlap で、4名のみが抗CCP抗体を有していた。RA基準は満たさないがACPA陽性の4名のMCTDではSLEおよびSSCのoverlapはなくSjSを持っていた、そしてこれらでは抗体は低力価であった。

 

・Gottenbergらは原発性シェーグレン症候群と診断された149人の患者での研究で、ACR基準や骨びらん保有などRAも持つ9名と、RAおよびSjSを持つ6名を除外した134名では、IgM-RFは59%で、ACPAは7.5%で陽性であった。ACPAの陽性および陰性患者の間でRFの有病率を含む臨床的および生物学的特徴における差異は認められなかった。

 

・van Rossumらは若年性特発性関節炎(JIA)を有する71人の患者での研究で、ACPAはIgM-RF陽性のJIA患者の73%で、その他のJIA患者で3%にて陽性であった(p <0.0001)。ACPA陽性患者で80%は画像的関節損傷を示し、ACPA陽性と陰性でのオッズ比は12.7であった。

 

・特発性炎症性筋疾患の患者では、抗CCP抗体は時折低い力価で報告されている

・Labrador-Horrilloらは特発性炎症性筋疾患の90の連続した患者のコホートにおけるACPA測定研究では、12名で陽性であった(13.3%)、うち8例の値は中程度の上昇だった(20-100以上Ul/mlの範囲)。ACPA陽性と陰性者の間の比較では臨床的または生物学的な差を示さなかった。両群で平均血清IgG値も差がなく高ガンマグロブリン血症によるACPA陽性の試験結果は説明できなかった。長期追跡でもACPA陽性筋炎患者コホートにおいてRAは発症しなかった。

・ACPA試験陽性は慎重に解釈されるべきであることを示唆し、患者が(たとえびらんで)関節炎を提示してもこの症状は、特に抗シンセターゼ抗体が存在している筋炎患者の症状でもあり得る。

 

・乾癬性関節炎PsA患者における抗CCP抗体を評価した研究では、5.6から20%の陽性率を報告している。

・Popescuらの 乾癬性関節炎(PsA)患者での横断的研究と文献レビューでは、41名のPsAのうち5名(12.2%)はACPA陽性であった。陰性者と比較してACPA陽性PsA患者はより頻繁に多関節疾患パターンを有した(p=0.005)、より頻繁に生物学的製剤治療、DMARDs治療を有した。

・PsAと診断された患者でACPAが筆者らが設定したカットオフ11.6 U/mLを上回っている場合はACPAの高い感度(97.6%)のため実際にRAおよび乾癬を有するその可能性が高いと思われるが、5〜11.6 U/mLの範囲ではACPAの低い特異性(52.5%)のためRAは完全には除外できない。

・Vanderらは乾癬性関節炎を有する192人の患者からの血清サンプルを分析。カットオフレベルは42 U/ml。ACPAは15名(7.8%)でみられた。

 

・強直性脊椎炎(AS)は主に軸骨格に影響を与えるが、末梢関節炎型は症例の35%で最大で発生する。修正ニューヨーク基準を満たしたAS患者625名の研究で、末梢関節炎型は37.4%(234/625 )で診断され、ACPAは患者の4%(25/625)で見られた。多重ロジスティック回帰では、末梢関節炎は女性(P=0.001)およびACPA存在(P=0.001)に有意に関連していた。特にアッセイの通常の上限3倍オーバーの抗CCP抗体力価の存在で。その存在は末梢関節炎を予測するための血清マーカーとして役立ち得る。

 

・Fusconiらは自己免疫性肝炎などの肝疾患患者でのACPA陽性を調べた。自己免疫性肝炎で12/133(9%)、原発性胆汁性肝硬変2/49(4%)、C型肝炎ウイルス関連慢性肝疾患で1/80(1%)で抗体がみられた。

 

・Larsonらは、ACPAとRF陽性で複数の小関節の腫脹を伴って発生した肺癌症例を報告。ACPA陽性伴う腫瘍随伴性多発性関節炎の症例であったとしている。

 

・Elkayamらは、活動性肺結核と最近診断された47名の連続した患者と39名の健常対照を研究した。結核関連症状の平均(SD)期間は4.4(1.7)ヶ月で、73%が発熱、94%で咳を有していた。平均(SD)ACPAレベルは有意に対照群と比較してTB患者にて増加していた(44.9 (51) IU vs 20 (7.3) IU, p = 0.002)。血清レベル>40 Uは、対照群2.6%と比較してTB患者で32%で見られた(p =0.002)。また平均(SD)IgM-RF血清レベルも有意にTB患者で増加 (17.8 (19) vs 4.3 (5), p<0.0001)

 

・Ruiz-Esquideらは、非RAで慢性閉塞性肺疾患(COPD)のあるor ないヘビースモーカーと、RAと、いままで喫煙していない健常者 の血清中ACPAの頻度とレベルと比較し分析した。ACPA陽性の最高率は、COPDの被験者群でヘビースモーカーで発見された (COPD患者におけるACPA陽性は7.4%、 比較して過去喫煙のない者で2.4%: OR3.26; 95%CI 0.85-12.6、p=0.089)

 

・Sigariら はRAのない、タバコ誘発性慢性閉塞性肺疾患(COPD)と、木材煙誘導性COPD患者におけるACPAを測定し、木材煙誘発性COPDで8名(14.2%)、タバコ誘発性COPDで4名(7.14%)、健常コントロールで2名(3.57%)で抗CCP抗体陽性の従来のカットオフを超えた。

 

・39名の歯周炎患者から非外科的歯周治療前後と、36名の健常者から血清およびプラーク試料を収集し検査したところ、未治療の歯周病患者は、健常対照よりも高い抗CCP抗体価を有していた(0.40±0.10 AU対1.37±0.23、 p <0.0001)。Porphyromonas感染症は関節リウマチを特徴付ける自己免疫応答を誘導しうる。

・寺尾らは30から75歳の9804名の日本人の健康なボランティアにてACPAとRF値を調査。ACPAおよびRFはそれぞれ被験者の1.7%と6.4%で陽性であった、2マーカーは有意な相関を示した(P =2.0×10(-23))。老齢はACPA陽性と関連(P = 0.00062)。喫煙はACPA高値との有意な関連を示した(P = 0.0019)

 

・しかし、抗CCP抗体を有する患者は、最終的にRAを発生する可能性がありその可能性は排除できない。ACPAはRAの最初の徴候より数年前に存在可能であることが知られている。

 

 

 

参考文献

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