感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

アナフィラキシー まとめ

2014-04-21 | 内科

毎年4月は新入研修医・医師のためのオリエンテーションに参加して、感染症管理や抗菌薬使用時注意点などについてお話しています。菌検出連絡時の感染対策指示とか、抗菌薬処方時の届出書、血中濃度測定などの注意ですが、アレルギー問診をすることと、アナフィラキシーへの対応についてもあらかじめお話すべき重要なところです。 当院にもアナフィラキシー対応マニュアルもあるのですが、主に看護師向けで作成から大分期間も経っているので、見直すことにしました。アナフィラキシーの診断基準って、あまり知られていない気がしますが…。



まとめ

・アナフィラキシーは最初に約100年前に説明された、医学上で発生する最も憂慮すべき疾患の一つ
・アナフィラキシーとは、アレルギーの原因となる物質と接触した後、突然発生した深刻な潜在的に致命的な全身性アレルギー反応である
・成人では、抗菌薬、非ステロイド性抗炎症薬、および昆虫刺傷が、アナフィラキシーの最も一般的な原因。 食物アレルギーは小児において最も一般的な病因。
・2005年、アレルギー感染症国立研究所(NIAID)と食物アレルギーアナフィラキシーネットワーク(FAAN)は、アナフィラキシーのその定義や診断基準のための会合を開催
・参加者は、診断基準は、緊急応答者またはアナフィラキシーの診断を行うために、比較的簡単で迅速な手段で医師の治療を提供しなければならないことに合意
・この基準は、100%の感度および特異性を提供しないことが認められたが、しかし、提案の基準は、アナフィラキシー症例の95%以上を捕捉する可能性があると考えられた。


アナフィラキシー診断の臨床基準

以下の3基準のいずれか1が満たされた場合に可能性が高い。

1 .疾患の急性発症で(数分から数時間)、皮膚、粘膜組織、またはその両方の関与を伴う(例えば、全身性蕁麻疹、そう痒または紅潮、口唇-舌-口蓋垂の腫れ)
そして、以下の少なくとも1つ
 a .呼吸障害(例えば、呼吸困難、喘鳴、気管支痙攣、喘鳴、PEF減少 、低酸素血症)
 b .血圧の低下または臓器機能障害関連症状 (例えば、筋緊張低下、失神、失禁)

2 .可能性が高いアレルゲンに暴露した後に急速に(数分~数時間)発生する以下のもの:
 a .皮膚粘膜組織の関与(例えば、全身性蕁麻疹、そう痒、紅潮、口唇-舌-口蓋垂の腫れ)
 b .呼吸障害(例えば、呼吸困難、喘鳴、気管支痙攣、喘鳴、PEF減少 、低酸素血症)
 c .BP減少または関連する症状(例えば、筋緊張低下、失神、失禁)
 d .持続する消化器症状(例えば、痙性腹痛、嘔吐)

3 .既知のアレルゲンへの暴露後の血圧の低下(数分~数時間):
 a .幼児や小児:低い収縮期血圧(年齢別)または収縮期血圧の30%を超える低下*
 b .成人:収縮期90mmHg未満の血圧やその人のベースラインから30%以上の減少

 

・慎重に評価した場合症例の80%以上に記載され、アナフィラキシー反応の大半は皮膚症状が含まれている
・しかし、皮膚症状は食物アレルギーや虫刺されアレルギーのある子供のアナフィラキシー反応の20%までには存在しない可能性がある
・Yocumらの154のエピソードの後ろ向き研究では、アナフィラキシー発生率が10万人あたり30人•年、年間発生率10万人あたり21人•年( ・アナフィラキシーの軽症な兆候での認識と診断の重要性(例えば、アレルゲン曝露後の発疹および嘔吐)がPumphrey氏による研究によって強調される。
・アナフィラキシー既往歴は重要ではあるが、死亡の82%が重度のアレルギー反応の既往のない患者で発生したとの報告もある。


・Campbellらによる、NIAID /FAAN診断基準の診断精度を評価では、アレルギー専門医による最終診断が参照標準として分析し、感度96.7%、特異度82.4%、陽性適中率68.6%、陰性的中率98.4%、であった。高感度であったが特異度はやや劣った。陰性的中率が高いので、この基準を満たさない患者がアナフィラキシーを持っている可能性は非常に低いことを示す。
・しかし陽性適中率からはNIAID /FAAN基準を満たす100人の患者のうち69人のみがアナフィラキシーを持っているだろうことを意味するので、これらは臨床的判断に置き換えることはできない。
・これらの臨床基準はまた、世界アレルギー機構によって承認され、「アナフィラキシーのための評価と治療ガイドライン」と2010年アナフィラキシー合同会議の実践的パラメータに含まれた。

・臨床検査は、アナフィラキシーの診断をサポートするために有用であり得る。 しかいこれらは普遍的に利用できず、急性期臨床管理に対しその結果は適切なタイミングで得られず、多くのマーカーは感度が限られている。 血清トリプターゼは、症状の発症後1~1.5時間をピークとし5-6時間まで持続しうる。血清値は理想的には症状の3時間以内にとられる。(蘇生後できるだけ速やかに採血し、さらに1時間後及び6時間後に再び採取)  15 ng / mLより大きいトリプターゼ値はアナフィラキシー反応を示唆。
・アナフィラキシー提示する97人の患者シリーズ研究では、42%のみが血漿ヒスタミン濃度が増加し、21%のみが血漿トリプターゼ濃度が増加していた。

・アナフィラキシーの原因のさらなる評価は、臨床病歴に基づいて追加の診断テストを行う、皮膚プリック/皮内テストおよび血清特異的IgEなど。最初は陰性である場合、~4週間以内でのテストを繰り返して 追求されるべき。


アナフィラキシーの治療

・アナフィラキシーの治療は、迅速な評価と気道、呼吸、循環の維持で始まる。
・上記で概説したアナフィラキシーの3基準のいずれかを満たしたとき、エピネフリンがアナフィラキシーにおける最適な治療法であるため患者はすぐにこれを投与されるべきである。
・その、α 1の効果は、血圧をサポートするために役立ち、そのβ2の効果は、気管支平滑筋の弛緩を示すため。
・また症状がいまだアナフィラキシーの基準を満たしていなくても、例えばピーナッツを摂取した人でピーナッツで致命的なアナフィラキシー既往歴があり、そして数分以内にじんましんや全身紅潮をきたしている患者が存在すれば、 それはエピネフリンによる治療を開始することが適切であろう。
・その後の介入は、臨床経過およびエピネフリンに対する応答に基づいて決定される。

・エピネフリン0.01 mg / kg(最大用量 0.5 mg)、必要に応じて5から15分毎を筋肉内投与、 が症状を制御し血圧を維持するための推奨用量。
・アナフィラキシー未経験小児例の研究では、皮下投与後の値と比較した場合、エピネフリンの前外側大腿部に筋注投与の場合はより迅速な吸収と高い血漿エピネフリン濃度を実証
・アナフィラキシー未経験成人で、エピネフリンを大腿部に筋注した後は、皮下注または上腕(三角筋)筋注後よりも血漿エピネフリン濃度ピークをより迅速に達成しより高かった
・これらの証拠に基づいて、 NIAID /FAANシンポジウムの参加者は、前外側大腿のエピネフリンの筋注は皮下注よりも好ましいと結論した。 静脈ラインがある場合は、静脈内エピネフリンは場合によっては好ましいかもしれない。(筋注で反応しない重度の低血圧や心停止の患者のため) (低血圧のための5 - 10 μgの静脈内ボーラス(0.2μg /kg)、心血管虚脱の存在下で0.1 - 0.5 mg静脈内投与)

・アナフィラキシーのための入院率が救急部門前にて早期にエピネフリンを投与した患者で低かった。

・患者の体位 アナフィラキシーショックの患者は、嘔吐や息切れがない限り、臥位で下肢挙上に配置する
・積極的な輸液はエピネフリンにもかかわらず低血圧のままである患者に推奨される。
・もしエピネフリンおよび急速輸液でも、90mmHgより高い 収縮期血圧を維持するのに失敗しているなら、ノルアドレナリン、バソプレシン、メタラミノールなどの強力な昇圧剤が血管拡張を克服するために必要になるかもしれない。
・抗ヒスタミン薬は、蕁麻疹/血管浮腫及びそう痒症の対症治療に有用(血圧には影響しない)
・アナフィラキシーにおけるコルチコステロイドの有効性はプラセボ対照試験において決定されていない。作用の発現が遅いため、ステロイドは急性管理段階に有用ではない。 それらの使用は長引く、または二相反応を防ぐかもしれないことが示唆。
・二相性反応は患者の最大20%で発生する可能性があり、最初のイベントの後1-78時間から発生する可能性がある。

・患者には完全な説明を与えられるべきで、記録は患者健康カードなどになされるべき


参考文献

J Allergy Clin Immunol. 2006 Feb;117(2):391-7.

J Allergy Clin Immunol. 2012 Mar;129(3):748-52.

Allergy Asthma Proc. 2013 Mar-Apr;34(2):115-9.

Int J Emerg Med. 2009 Apr;2(1):3-5.

J Oral Maxillofac Surg. 2010 Apr;68(4):855-62.


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