感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

MRSAによる重症感染症

2013-01-31 | 感染症
前回の続き。CID2010年の記事から、MRSA感染症の診療について。市中MRSAや感染制御に関する記載もあったが今回は菌血症と心内膜炎のところについて。
ブドウ球菌が血液培養で1本でも生えたとき、“抗MRSA薬”を開始すると記載。 MRSA菌血症/IEのVCMの目標トラフは2005年IEガイドラインを引用し10-15と記載、こちらは昨年のTDMガイドラインでは15-20でした。
前回ブログで示した文献と同様この文献でも14日未満の治療の可能性につき言及ありました。
リネゾリドは当院でもよく血小板減少を起こします、ビタミンB6にて防止する策があるんですね。



まとめ

菌血症と心内膜炎

・黄色ブドウ球菌感染症でも菌血症は、比較的高い罹患率と死亡率に関連。
・2つのメタ分析で、MRSA感染はMSSA感染と比較して、死亡のリスクの増加と関連。
・MRSA感染で成績の悪い理由として完全にではないが多因子で理解される。潜在的説明として、病原体毒性増、感染患者像の違い(例えば、MRSAは高齢者や免疫不全患者に多い)、治療薬の相対的効果減少 (具体的にはバンコマイシンはβ-ラクタム系抗菌薬と比較して)、適切な治療の開始遅れ、 が考えられる。
・黄色ブドウ球菌の連続例のレトロスペクティブ調査で、入院後2日以上経って診断された患者で 適切な抗菌薬治療の遅れがMRSA感染に伴う死亡率のほぼ2倍の増加と関連。
・黄色ブドウ球菌では血液培養がただ1つ陽性であっても、経験的に抗MRSAの抗菌薬治療開始をすべき、開始後48~72時間でフォローアップ血液培養をとるべき。
・感染症範囲や感染源の決定に、徹底的な調査をするべき。ICUで一般的な発生源は、静脈内カテーテルおよび他の血管内デバイス、軟部組織感染症、人工呼吸器関連肺炎。 転移感染巣として一般的部位は、骨や関節、特に人工素材が存在、 硬膜外腔と椎間板; 心臓弁; 腎臓、脾臓などの腹腔内臓器。

・多くの専門家は、人工弁を保有、恒久的心臓デバイス、遷延する菌血症や発熱、または心臓伝導系異常、を持つ黄色ブドウ球菌菌血症には心臓画像検査を勧める。 経食道心エコー(TEE)は手術を要する合併症(例えば、弁輪膿瘍または弁尖穿孔)と抗菌療法短期コース(すなわち⩽14日)の候補となり得る患者を同定するのに有用である。
・膿瘍や感染関節の切開やドレナージ、カテーテル除去、左側黄色ブドウ球菌性心内膜炎患者における早期の弁置換術を考慮した補助療法が治療の成功に不可欠である。
・90年代retrospective研究で、早期の転移性合併症の存在しないときはカテーテル関連の黄色ブドウ球菌菌血症のため治療は10~14日が適切かもしれないことを示唆。
・感染の低リスク患者を識別(以下の方法)できるまでは静脈内療法の>2週間を勧める : TEE検査下にて心内膜炎が除外でき、フォローアップ血液培養の陰性結果(最初の陰性の培養結果の後2-4日)、 かつ効果的な抗ブドウ球菌の治療開始後72時間以内に解熱。 しかしこれらの基準は、前向き研究で検証する必要がある。

・いくつかの報告はバンコマイシン治療中にMRSA菌血症と心内膜炎の長期持続を記録。 また臨床的失敗がバンコマイシン耐性の証拠もない患者にて報告。 失敗のいくつかは、heteroresistant MRSA感染症患者に発生。これは高い細菌負荷と初期の血清VCM低濃度に関連。
・MRSA菌血症と心内膜炎のための現在のガイドラインでは、10-15μg/ mLのバンコマイシントラフ値維持を勧める[Circulation 2005;111:e394-e434]  このトラフ濃度は、VCMの1g12時間毎の伝統的用量よりも、15 mg / kgを12時間毎投与、で最も良く得られる。
・高いバンコマイシントラフ濃度は必ずしもMRSA感染の良い結果につながらないかもしれず、増加した毒性をもたらすかもしれない

・黄色ブドウ球菌菌血症や心内膜炎の235人の患者を対象に前向き無作為化試験では、ダプトマイシン(6 mg / kgを毎日)と、バンコマイシンまたは抗ブドウ球菌ペニシリン+初期低用量ゲンタマイシンから成る標準的治療、と同程度に有効であった。 MRSA感染が原因であった89例(38%)においても、ダプトマイシンは少なくともバンコマイシンと同等に有効であった。  この調査では、ダプトマイシンを受けている患者は、標準的治療を受けた患者はいたより、黄色ブドウ球菌感染を持続または再発のため治療失敗を経験する可能性が高かった(15.8%対9.6%)。
・この観察結果は、深部感染巣が外科的デブリドマンされていない菌血症のダプトマイシンの使用に関するいくつかの懸念を提起し、 心内膜炎や他の感染症転移部位の存在のための黄色ブドウ球菌菌血症患者の注意深い評価の重要性を強調している。

・リネゾリドは肺炎と軟部組織感染症の治療のためにバンコマイシンと同等の有効性を示している
・リネゾリド治療への応答に失敗したMRSA感染性心内膜炎の症例も報告されている
・注目すべきは、オープンラベル無作為化試験からの予備的な結果は、(カテーテル部位感染症を含む)の血管内カテーテル関連血流感染症の重症患者の治療のための標準的治療とリネゾリド比較するとリネゾリドを受けた患者の死亡の高い機会を見いだしていること(21.5%対16.0%)
・リネゾリドの副作用は骨髄抑制、特に血小板減少症は、最も一般的。 事例報告では、血球減少症は、ビタミンB6併用投与によって改善または防止することができることを示唆。
・末梢および視神経障害の両方が>28日間の使用にて報告。



参考:
Clin Infect Dis. 2010 Sep 15;51 Suppl 2:S183-97.

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