感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

NICE:好中球減少性敗血症

2012-12-21 | 感染症
英国の医療ガイダンス作成期間である国立臨床評価研究所(NICE)が、好中球減少時敗血症についてガイドラインを発表している。この領域では米国IDSAの発熱性好中球減少症ガイドライン(最新で2011年)が出ている、それと比較して、この英国のガイドラインでユニークなところは、好中球減少+{発熱 または 敗血症を疑う徴候} を好中球減少性敗血症疑いとしていること、 (自宅待機の患者を想定して)24時間の相談窓口や緊急受診の体制を記載、 初期抗菌薬はPIPC/TAZと指定していること、 キノロン予防投与を好中球<500mm3の予想期間で投与としている、 初期臨床評価ではSepsisを意識してか乳酸値測定もすすめている、 などである。 自宅から2,3次医療機関受診までを意識した内容となっていて、真菌治療などの重症遷延化した場面などは触れられていない。


NICE clinical guidelines
Issued: September 2012
CG151
Neutropenic sepsis: prevention and management of neutropenic sepsis in cancer patients

http://guidance.nice.org.uk/cg151



要約

患者と介護者のための情報とサポート
・抗癌治療を行なっている患者とその介護者へ、治療開始前とその抗癌治療期間中に提供される書面と口頭での情報 
  :好中球減少性敗血症、 いつどのように24時間対応の専門オンコロジー相談に連絡するか、いつどのように救急医療受診するか

抗癌治療の敗血症の合併症リスク軽減
・化学療法の結果、著しい好中球減少 (好中球数500/mm3以下)の予想される 急性白血病、幹細胞移植、または固形腫瘍の成人患者(18歳以上)のため、好中球減少の予想期間中のみにおいてフルオロキノロンによる予防をすすめる
・予防のためフルオロキノロンを使用している患者の所属施設では、抗菌薬耐性率と感染パターンを監視する必要がある
・化学療法レジメンの不可欠な部分として、または用量強度の維持のためG-CSFを受けていない限り、化学療法を受けている成人に好中球減少性敗血症の予防のためにルーチンでG-CSF使用をすすめない

市中において好中球減少性敗血症が疑われる患者をいつ紹介するか
・抗がん剤治療中の患者における体調不良は、好中球減少症性敗血症を疑う
・疑い患者は二次または三次施設における評価のためすぐに紹介

二次、三次医療における好中球減少性敗血症疑い患者の管理
・好中球減少症性敗血症疑い例を医学的な緊急事態として治療する、すぐに経験的抗菌薬治療の開始をすすめる
・初期臨床評価に含めるもの: 病歴と診察、 血算、腎および肝機能検査(アルブミンを含む)、CRP、乳酸値、血液培養
・さらなる評価: CVCを有する患者では追加の血液培養、 5歳未満小児では尿検査
・臨床的適応がない限り胸部X線は行わない
・抗菌薬療法開始
  初期経験的抗菌薬治療としてPIPC/TAZによる単剤療法をすすめる
  アミノグリコシド(単独または併用)使用はすすめない
  CVC使用者での経験的なグリコペプチド系薬使用はすすめない
・本症疑いの初期経験的管理の一環としてCVCを抜去しない
・好中球減少性敗血症の診断確認: 好中球数500/mm3以下で、38℃以上の熱または敗血症と一致する徴候

好中球減少性敗血症診断例の管理
・敗血症性合併症の患者のリスクを評価: 二次または三次医療機関は、抗癌治療管理専門家により紹介24時間以内に合併症リスク評価をする (臨床徴候のリスク分析に基づき、検証リスク•スコアリング•システムを使用して)
・合併症のリスクが低い患者: 外来抗菌薬治療を考慮
・合併症のリスクが高い患者: 抗癌治療管理専門家により毎日、患者の臨床状態確認、敗血症の合併症の患者リスクを再評価
・反応しない発熱患者では初期経験的抗菌薬を切り替えない (臨床症状の悪化または微生物学的適応がある場合は除き)
・抗癌治療管理専門家により合併症発症リスクが低度として再評価された患者は治療開始48時間後に、静注抗菌薬から経口抗菌薬へ切り替える
・本症のため経験的抗菌薬治療中の患者へ退院をすすめるのは: 合併症発症リスクが低度として再評価された、問題が発展した場合、速やかに病院に戻る必要性を説明している
・経験的抗菌薬治療の期間: 治療反応しない熱を持つ患者では入院経験的抗菌薬治療を継続、 治療に反応した患者では、好中球数にかかわらず経験的抗菌薬治療を中止


今後の研究課題
・市中で好中球減少性敗血症を予測する徴候と症状はどんなものか?
・固形腫瘍や血液悪性腫瘍、幹細胞移植の治療を受ける小児(18歳未満)、とリンパ腫の成人における、好中球減少性敗血症の一次予防としてのキノロン内服とG-CSF製剤の臨床試験。
・好中球減少性敗血症患者における入院静注治療からの外来経口抗菌薬治療に切り替え、の臨床試験

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