感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

コリネバクテリウム(C.jeikeium)心内膜炎

2012-12-27 | 感染症
現在、他科入院中の方で、血液培養複数セットでCorynebacterium検出例の相談を受けている。CVカテーテルが入っており、この感染関与を考え抜去、また心臓超音波検査で疣贅も疑われる状況。 この菌は血液培養で生えても常在菌混入とされることが多く起炎菌として対処されにくい。成書などでもあまり触れられない菌なので種々文献を調べた。この文献はこの菌の代表種であるC.jeikeiumのIEに関するものである。


まとめ

・ブドウ球菌やβ-溶血性連鎖球菌以外の皮膚細菌叢はめったに心内膜炎を生じない
・C.jeikeiumによる心内膜炎例の1966~2004年英語記事のMedline検索を行った
・文献報告されたC. jeikeium心内膜炎患者は38名
・IE発生の素因として、74%で人工心臓弁の関与あり、 血管内留置デバイスは30%、血液透析は25%、 以前の歯科処置歴は20%
・心臓弁では、大動脈弁が46%、僧帽弁が32%、両方が16%
・弁病変を有する中では、人工弁78%、生体弁22%
・発熱は最も一般的な症状で78%に存在、 呼吸困難と新しい心雑音が各々39%
・徴候や症状の発症とIE診断の時間間隔は1-3ヶ月で、C.jeikeium IEでも亜急性が特徴付けられる
・心臓弁設置からIE徴候発現までの平均時間は6.04ヶ月、初期(術後2ヶ月以内)と後期感染はそれぞれ57%と43%
・治療は、1名除くすべてが抗菌薬治療うけ、62%は弁置換術も受けた
・抗菌薬治療では、VCMとGMが最も使用された処方、つぎにPCG 。ただしPCG使用例は古い報告で1981年以降は報告なし(PCGは単独でなく併用として投与例が大半)。感受性試験はPCG感受性株は2%のみ報告。
・C. jeikeium心内膜炎に起因する死亡率が33%であり、それは弁置換術を受けなかった患者でも同様
・PCG+GM併用治療を受けた患者の3/4が治癒している、発生した単一の死は術後合併症によるもの
・特に人工心臓弁患者でC. jeikeiumが血液培養から分離されたとき精査が必要である
・C. jeikeium IEの頻度は過小評価される可能性がある、なぜなら病原性の希少性からこの菌が潜在的な汚染物質としての頻繁な解釈につながるかもしれないため。 この点で血液培養の複数のセットを取得する必要がある。



参考
Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2006 Jun;25(6):349-53.

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