前回の続きで、薬剤誘発性ループスについて、各論的に、諸文献からまとめ。 ミノサイクリンも、アンジオテンシン変換酵素阻害剤も、スタチンも一般に内科でよく使われるので注意が必要ですね。 そもそも免疫性疾患に使う生物学的製剤によるDILEは、その診断で「自己免疫疾患の以前の証拠はない」との要件は満たしにくいので、薬剤誘発性なのか、マスクされていた自己免疫原疾患が明確になったのか区別が難しいと思われる。
DILEへの関与薬とその関連性の分類
・Definite association(DILE誘導性を確認した対照試験に基づく)
ヒドララジン、プロカインアミド、イソニアジド、メチルドパ、キニジン、ミノサイクリン、クロルプロマジン
・Probable association(一貫して報告された大シリーズ、コホートに基づく)
スルファサラジン、抗痙攣薬、抗甲状腺薬、スタチン、テルビナフィン、ペニシラミン、フルオロウラシル、ヒドロクロルサイアジン
・Possible association(いくつかのケースで報告)
抗生剤、NSAIDs、降圧剤、リチウム、インターフェロン、金製剤
・Recent case reports
インフリキシマブ、エタネルセプト、インターロイキン2、ザフィルルカスト、クロバザム 、トカイニド 、リシノプリル、ブプロピオン
各論
・DILEは1945年のスルファジアジンと関連して、その最初の記述である。しかし実際は過敏反応だったかも。
・DILEのプロトタイプ薬は1951年に導入されたクラスIa抗不整脈プロカインが初めてである。
・スルファサラジンとDILE間の関連性は以前はいわれていたが、最近の前向き無作為化研究では5年以上の使用でもリスクがなかった。
・ミノサイクリンに誘導される自己免疫症候群は最近までで80例が報告、最も一般的な症状はDILEと自己免疫性肝炎
・一般的DILEとは違って、ミノサイクリン誘導性では、皮膚(レイノー、結節性多発動脈炎、結節性紅斑)や肝(脂肪症、アレルギー性)異常の特徴を有する。抗ヒストン抗体陽性はまれ。
・ミノサイクリン誘発性ループスの発生率は100 000処方あたり14.2例
・ミノサイクリン誘発性ループスを開発するための1度の使用でのリスク比single-use risk ratioは、非使用者と比べて、ミノサイクリンで治療の長さに応じ8.5から16の範囲
・D-ペニシラミン DILEとの関連の可能性をみるいくつかの事例が報告。 ユニークな点は、腎障害だけでなく抗dsDNAが陽性や低補体血の存在
・アンジオテンシン変換酵素阻害剤 リシノプリル誘発性DILEではANA陰性で、陽性の抗ヒストン抗体と関連
・様々なスタチン(フルバスタチン、ロバスタチン、最近アトルバスタチン)によるDILEが報告。 通常のDILEと異なりARDS(急性呼吸促迫症候群)、皮膚(多形性紅斑、レイノー、爪周囲紅斑)、肺炎のケースが記載
・スタチン誘発性の自己免疫疾患はこれまで28例報告され、ループスは10例、PM/DMが14例、自己免疫性肝炎は2例。 薬物暴露の平均期間は12.8±18か月。 多くの患者ではANAは臨床回復後の数か月陽性。
・強力な細胞アポトーシス促進剤であるスタチンによってこれは悪化又はトリガされ、核抗原の放出は、病原性自己抗体の産生を促進する。このメカニズムは紫外線などの他の環境要因とも関与する。
・プロピルチオウラシルまたはメチマゾールを投与後に、陽性ANCAとなった16人の患者のうち、 10人は皮膚病変を、1人は肺や腎臓病変を開発。 対照群に比べて、MPO-ANCA、ANA、抗ヒストン抗体、抗カルジオリピン抗体、クリオグロブリン、低C4の頻度が高い。
・抗TNF誘導性ループス(ATIL) その頻度と臨床的特徴は、それぞれの薬剤間で異なる。 dsDNA抗体陽性、皮膚、腎臓および脳病変は、古典薬物誘発性狼瘡(DIL)と比較してATILでより一般的。
・ATILの全発生率は、インフリキシマブとエタネルセプト投与患者のための0.18%と0.19%
・ATIL患者のほとんどは、発熱や他の全身所見を持っていた(75%)。その他のSLEの症状は発疹、関節炎、血液学的異常と自己抗体(ANAおよび二本鎖DNA)。漿膜炎(25%)および筋炎(33%)がやや少なかった。
参考文献
Lupus. 2006;15(11):757-61.
Drug Saf. 2011 May 1;34(5):357-74.
J Eur Acad Dermatol Venereol. 2007 Jan;21(1):17-24.
Drug Saf. 2011 May 1;34(5):357-74.
とても興味深かったです。
もしよろしければ、こちらの記事の文献元を教えていただけないでしょうか。
よろしくお願いします。
ミノサイクリンについては、
Lupus. 2006;15(11):757-61.
Drug Saf. 2011 May 1;34(5):357-74.
の中にある程度記事がありました。