前回の巨細胞性動脈炎(GCA)の治療についてのまとめの続きで、今回はステロイド治療中や中止後の疾患の再燃/再発についてです。再燃/再発の見分け方、そのリスクなど、まとめました。
再燃と再発、リスク因子
・再発は、GCA患者の25から65%が経験。
・グルココルチコステロイド(GC)の投与量を徐々に減少においてさえ、臨床的な再燃flaresは、患者の50%以上で発生することが報告されている、特に最初の12〜16ヶ月の間に、プレドニゾロンの投与量は、1日あたり約5〜10 mgまで低下したとき。
・ほとんどの再発は軽度であるが、グルココルチコイドの投与量漸減中または治療の中止後に、一部の患者は、失明や脳卒中を発症する
・多くの患者は、臨床検査でリバウンドの異常および/または再燃を経験し、そのうちのいくつかは明らかに完全に回復した後に再発していた。
・疾患の自然経過では、GC1日用量が<10 mg漸減されている場合は特に、再燃relapsesは患者の約50%で発生する頻繁なもの。
・何人かの著者は、再燃しないようGCを継続する必要がある状況をGC依存性として定義する。長期間の>10 mg/日のGC1日用量は陰性の長期生存と相関していることが示唆されている。
・Hachullaらは、永続的視力喪失の存在(p=0.04)、6ヶ月の治療時点で10mg/日以上のGCが必要(p<0.001)な患者において生存の有意な減少を見いだした。しかしこれら要因は、独立して多変量解析で生存率と関連していなかった。[Clin Exp Rheumatol. 2001 Mar-Apr;19(2):171-6.]
・UddhammarらのPMR/GCAでの死亡例の分析では、超過死亡は最も高いESR、診断時の最も多いプレドニゾロン処方量、または診断後1年でプレドニゾロン10 mg以上/日の用量、を有する女性で発見された。[J Rheumatol. 2002 Apr;29(4):737-42.]
・Martinez-Ladoらの生検で診断されたGCAの174人の少なくとも1年間追跡した研究では、70名(40.8%)は、疾患の再燃または再発を経験した。 [Medicine (Baltimore). 2011 May;90(3):186-93.]。
合計のGC治療期間は再燃/再発患者で有意に長かった。初回再燃時のGC用量およびGC治療期間の中央値それぞれ5mg/dと16ヶ月。初回再燃時の徴候では頭痛(52%)が最も一般的で、PMR症状は30%で発生した。いずれでも視覚的障害は発生せず。GC中止後に32人が疾患再発を経験、診断から再発時までの期間中央値は23ヶ月。 GCA診断時での貧血(Hb<12g/dL未満)の存在は、GCA再燃/再発の予測因子(odds ratio, 2.17; 95% confidence interval, 1.02-4.62; p = 0.04)。
・ESR値の増加のみでは通常、GC投与量を増量するため正当な理由ではない。
・上昇した炎症マーカーは単独では疾患の再発を示すものではなくGC投与量増加を促すべきではない。
・インターロイキン6は、疾患関連、急性期応答の検出のためESRとCRPよりも感度が高く、疾患再燃のよりよい予測因子であるかもしれないことを示唆するいくつかの根拠がある。
・インフリキシマブのGC寛解維持能力を試験したHoffmanらの論文では、疾患再燃は、ESRが正常から40mm以上の増加プラスGCAの少なくとも1つの症状や兆候(1週間以上の熱、頭蓋症状、視力症状、舌や顎や四肢の跛行、側頭動脈や後頭動脈の徴候、血管造影検査異常、脳虚血、PMR症状)と定義した。 [Ann Intern Med. 2007 May 1;146(9):621-30.]。 また臨床的寛解はESR<40mm/hrおよびGCAの症状や兆候がない、と定義し、完全寛解はGC治療中止後12週間の臨床的寛解の維持と定義していた。
・HoffmanらのMTXのGC補助薬としての効果をみた試験では、[Arthritis Rheum. 2002 May;46(5):1309-18.] 再燃relapseの定義は、他条件に起因しない≥40mm/hrへESR変化に加え、熱、頭蓋症状、視力、顎痛、四肢跛行、PMR、血管造影異常、脳虚血、などの異常の少なくとも一つとしている。また治療失敗の定義とは、2回の異なる疾患再燃の発生、またはプレドニゾロンで治療された再燃(以前に有効な投与量+10mg)が改善につながらない、としている。
・Albaらは、GCAの94人のより若年性とより高齢発症者との違いを分析した。(3群、67歳以下、68-80歳、81歳以上)。 より若年患者(≤67歳)は、より頻繁に熱(p=0.002)、高いESR(0.039)を示した。より高齢の患者(≥81歳)はより重篤な虚血性合併症(一過性黒内障)の高い有病率(p=0.046)と失明(p=0.006)を示した。フォローアップ期間中高齢発症GCA患者はより頻繁には再燃しなかった(p=0.027)。 [Ann Rheum Dis 2012; 71: pp. 230]
・GCAの持つより若いめの患者(≤67歳)ではより高い炎症のパラメータを示し再燃率は高いかもしれない、これは彼らはより活性および/またはより重症の血管炎かもしれないことを示唆している。より若いGCA患者は、その疾患を制御するために、より積極的な治療を必要とするGCA患者のサブグループを構成するかもしれない。
次回に続く