くろにゃんこの読書日記

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死神の館 テリー・プラチェット

2006年06月11日 | ディスクワールド関連
随分前のことになるけれど、「ディスクワールド騒動記」のレビューを書いたときに「死神の館」のことを触れていたのを思い出し、書き出してみた。

「死神の館」
死神が自分の仕事をほっぽり出して休暇をとる。その間は、弟子にした人間の子供に鎌を持たせて代わりをさせるが、その弟子が、死ぬ運命だった女の子を助けてしまうからさあ大変。弟子は、その事実を隠そうとしてあの手この手でごまかそうとするけど、さらにドツボにはまる。

う~む。
短いレビューだけれど、悪くはないかな。
手元に本がない状態で、しかも、数年前に読んだことを考慮に入れれば、「魔法使いの弟子」を下敷きにしていて(途中のゾウが暴れるシーンはディズニーのもじり?)、
死神が出てくると分かればよし。
今回はディスクワールドの新刊「ソウル・ミュージック」を読む前に、復習しておこうと「死神の館」を図書館から借りてきたわけ。

「死神の館」は、私がディスクワールドを知った、記念すべき一冊です。
この一冊で、何故こんなにはまってしまったかと言えば、死神が凄くキュートだったから。
死神というのは、ガイコツで黒いマントを翻して大鎌を持っている、
あの死神で間違いはございません。
しかし、この死神、つかみはOKとばかりに転びます。
カレー食べます。
パイプの煙、眼窩から出します。
輪っかにして。
ウィンクだってしちゃいます。
そんな死神は、死神としての仕事に疲れているようです。
人間とのかかわりを持つことで、人間らしさを身につけ(そこが可愛い)、どんどん人間っぽくなっていく一方で、弟子のモルトは人間でありながら死神らしさを増していきます。
本書は、シリーズの最重要人物(人物?)である死神を堪能する一冊であると思ってください。

ところで、落語には「死神」という噺があります。
日本の文化に死神?
と首を傾げる方も多いと思いますが、この落語は、もとをただすとオペラ「クリスピーノ」がルーツだとか、グリム「名づけ親になった死神」がルーツだとか言われているようで、三遊亭園朝が輸入した噺なのだそうです。
グリム「名付け親になった死神」はちょっと面白いですよ。

ある子だくさんの男に13人目の子どもが生まれます。
困った男は家の外に飛び出して、最初に出会った人に名付け親になってもらおうとします。
最初に会ったのは神様。
「あんたは、金持ちばかりにものを与えて、貧乏人にはひもじい思いをさせる」
と言って男は断ります。
次に会ったのは悪魔。
「おまえはいつも人間をだまして、誘惑するじゃないか」
と言って断ります。
3番目に会ったのは死神。
「おまえさんは誰だね」
「わしはすべてのものを平等に扱う」
「あんたがいい。あんたは金持ちも貧乏人も区別なしに連れて行くからな」
「わしはお前の子どもを金持ちにし、有名にしてやろう。
 何しろわしを友達に持てばなにひとつ不足はないのだ」
「今度の日曜日に洗礼式があるから、遅れないように来てくれよ」
死神は約束どおりにあらわれ、名付け親として洗礼式に立ち会いました。
生まれた男の子が大きくなると、死神は再び姿を現し、医者になる手ほどきをします。
死神が足元に立っていたら思い切ったことを言い(落語では「あじゃらかもくれん、てけれつのぱあっ」)ある種の薬草を与えれば助かり、
死神が頭の方に立っていれば死ぬ運命で助からないということを教えます。
名付け子は、医者となり財を成しますが、2度死神をだまし、
死すべき運命の王様と王女様を助けてしまいます。
怒った死神は、何千というロウソクのある部屋へと名付け子を連れて行きます。
名付け子のロウソクはもうすぐ燃え尽きようとしていました。
名付け子は、新しい大きなロウソクをついでくれるよう死神に頼みますが、死神はつぐフリをして、ロウソクをわざと落としてしまい、それと同時に名付け子も崩れ落ち、
死神の手に落ちてしまいます。

「名付け親になった死神」を読んでみますと、「死神の館」とよく似ていることに気付きます。
助けるのは王女様で2度も裏切る。
結末は違いますが、それはディスクワールドの死神が名付け親の死神よりも、生きている肉ある存在に好意を持っているからでしょう。
落語の場合は、下げがいくつかあるようで、「ああっ、消える・・・」というものとやっとついだロウソクの火の目の前でくしゃみをしてしまうというものがあるようです。
私は、くしゃみの方が笑い噺っぽくて好きですが、「消える・・・」の方が原典に近いようですね。
詳しく知りたい方はウィキペディアで。
落語の場合でも、死神の声というのは重要なポイントになるようですよ。
落語もグリムも人の命はロウソクで、短くなったロウソクを長いロウソクにつげばいいわけですが、ディスクワールドでは砂時計。
砂時計ですから、、、おっとネタバレ。
失礼いたしました。

死神の館
ソウル・ミュージック


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