くろにゃんこの読書日記

マイナーな読書好きのブログ。
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比類なきジーヴス P・G・ウッドハウス

2005年07月22日 | P・G・ウッドハウス
ああ、また新しいカテゴリーを加えてしまった。
いったいいくつカテゴリーって作れるんだろう?
だいたい、ジーヴスがいけない。
これって、純文学に入れられないじゃん。
いや、入れようと思えば入れられるけど、違和感がない?
「よしきたジーヴス」と「ジーヴスの事件簿」をこれから読む予定なので、「ボートの三人男」も抱き合わせで、カテゴリー作っちゃえ。
あ、そうすると「サーズデイ・ネクスト」もこっちに入るのかなぁ。
でも、バークリーとディスクワールドは別格ですから。
ウッドハウスの冊数が増えれば、カテゴリー変更もまたするかもしれないな。

ウッドハウスといえば、最近出版ラッシュですね。
「比類なきジーヴス」「よしきた、ジーヴス」「それゆけ、ジーヴス」は、国書刊行会から。
ウッドハウス選集1「ジーヴスの事件簿」は文藝春秋から。
「ジーヴスの事件簿」は「比類なき」と重複するところもあるけれど、「比類なき」に未収録な短編と(もしかしたら「それゆけ」に収録されているかも)巻末付録にイブリン・ウォーと吉田健一のウッドハウス讃があり、無論のこと翻訳者も違うので、両方読んでみるのも楽しいかも。
文藝春秋のウッドハウス選集は、エムズワース卿、マリナー氏と続くらしいので、そちらも楽しみですね。

さて、「比類なきジーヴス」です。
ジーヴスとは、バーティー・ウースターに仕える完璧な執事。
(正確にはvaletで、従僕を指しているようですが、
日本人的感覚では執事がぴったりだということで執事としたようです)
使用人ネットワークにより事情通のジーヴスは、小脳の活動めざましく、ご主人バーティーが巻き込まれる問題を次から次へと解決していくという凄腕の持ち主。
バーティーは上流階級のいいとこのボンボンで、つまり、信託遺産などで遊んで暮らせるという、なんともうらやましい境遇。
自他共に認めるおばかさんですが、ワーズワースやテニスンの詩の引用をしたりするところからも分かるとおり、頭はそこそこなんですね。
ところが、紫色の靴下を好んで選んで、ジーヴスとワードロープ戦争を巻き起こしたり、親友ビンゴのどう考えてみても賢明とはいえない頼みをきいてやり、結局は大失態を招いたりと、どこかおマヌケ。
でも、憎めない可愛いやつなんです。
ジーヴスもきっとそう思っているに違いありません。

本書でのジーヴスが解決する問題は、上流階級の人々の巻き起こすドタバタ喜劇なんですが、決して批判をしているわけではないと思うんです。
こういう、苦労知らずの人々だから、ユーモアが成立するんじゃないかな。
イギリスらしいユーモアといえば、私の一番のお気に入りは、どんな女性でも、たちどころに恋をしてしまうというビンゴが、ウェイトレスに一目ぼれをするシーンのビンゴの表情。
どこに骨を埋めたか思い出したばかりの犬みたいな顔つき
このようなユーモア満載です。
また、繰り返しの妙といいますか、ひとつのエピソード(奇抜な色のカマーバンドや、靴下、スパッツ)を繰り返すうちに、水戸黄門ばりのきたきた~という感覚で、おかしさが倍になるんです。
だから、後半になればなるほど面白い。

ウッドハウスは、後年の文化人に多大な影響を与えているようなんですが、
私の好きなバークリーもその一人。
「シシリーは消えた」の冒頭シーンは、ウッドハウス、いえ、「比類なきジーヴス」のオマージュと断言できるでしょう。
「シシリー」の忠実な従僕ブリッジャーとマンロー青年の関係は、イギリス人ならきっとジーヴスとバーティーを思い浮かべたに違いありません。

イギリス的な笑いは、万人受けするとは思いませんが、上記の赤字部分におかしみを見い出す方なら、きっと気に入ること間違いなしです。
ジーヴスのイギリス的な皮肉のこもったラストにもご注目です!

執事に関する詳しいブログを発見!
gentleman's personal gentlemanとvaletってどう違うの?
と思った方、こちら執事たちの足音をご覧ください。
興味深いですよ。

比類なきジーヴス
よしきた、ジーヴス
ジーヴズの事件簿 P・G・ウッドハウス選集1


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9 コメント

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はじめまして (nanika-possible)
2005-07-24 02:04:18
ブログ村を経由して辿り着きました。

私も割とマイナーな本を好んで読む傾向にあり、なんとなく親近感が・・・。

さて、『ジーブス』ですが、気になっているのです。本屋に行くたびに、パラパラめくって、オモシロそうだな~、と思っていたのです。

しかし、値段が高くて・・・

文庫化されているはないのでしょうか。
返信する
面白かったですよねぇ。 (しま)
2005-07-24 07:41:53
トラバありがとうございました。

「ジーヴス」シリーズ面白いですよねぇ。私もウッドハウスという名前は、それこそジェローム・K・ジェローム並によく他の本で目にしてましたが、実際に読むのはこの本が初めてでした。

そして一冊でノックアウト状態。



あ、私はこれからバークリーの「シシリー~」を読むので、余計に楽しみになってしまいました。



文庫かぁ……文庫で手軽に購入できると嬉しいですねぇ……。国書刊行会も文庫が出来るといいのになぁ。
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文庫化は・・・ (くろにゃんこ)
2005-07-24 23:20:02
あの国書刊行会ですからねぇ。

それにしても、国書刊行会から文庫が出たらいいのにね。

文学の冒険シリーズとかさ。

いい本いっぱいあるのに・・・あ、一般ウケはしないからダメか。

期待するなら、文藝春秋かなぁ。



>nanika-possibleさま

何故でしょう、マイナーな本を選んでしまうのって。

お仲間が増えてうれしい

国書刊行会から出版される本はみんなお高いですよねぇ。

私は、図書館でせっせと借り出してますが。

そういえば国書刊行会の本って、ブックオフでも古本屋でも見たことないですね。

やっぱりマニア狙いなのか。



>しまさま

これから「シシリー」ですか、いいですねぇ~。

「比類なき」を読んでからの方が、断然面白みが大きいはず。

バークリーにしては、爽やかさにあふれた作品で、その時代の読者になったつもりで読むと楽しさ倍増ですよ。
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こんにちは~! (multivac)
2005-07-30 22:03:20
英国風ユーモアって本当にはまると深いですよね。もう文春の第2弾が待ちきれずに、しょっちゅう検索かけていますもん♪

ウッドハウスの名を始めて聞いたのはアイザック・アシモフのエッセイでしたが、古典文学だと思って手を出さずにいたのです…勿体無かった!

そうそう、わたしも「シシリー」を注文しました。早く読みたいな~。
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英国ユーモアに (くろにゃんこ)
2005-07-31 00:27:29
はまってます。

「よしきた」の方も読み終わりました。

笑いましたよ。ええ。

それにしても、英国おばさんというのはユニークですよね。

パワフルだし。

そういえば「シシリー」のおばさんも、いや、老婦人もユニークだったな。

届くのが楽しみですねぇ~。



少し文春版をさわりだけ読んでみたのですが、訳文の違いに少し戸惑いました。

国書版の方は、リズミカルな文体で、それだけでも楽しかった。

慣れっていうのは怖い。

まあ、内容はこれからゆっくりじっくり読んでいきます。
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「よしきた」これから読みます。 (countsheep99)
2005-08-05 22:50:02
お返事遅れました。

TBありがとうございます。

リンクOKです。というか、非常に嬉しいです。



文春版は本屋で立ち読みしました。

ジーヴスとバーティーの出会いは押さえとこうと思いまして。

ちょっとまだお互いの距離感がつかめていないウイウイしいふたりの関係が…ふふふぅ。



訳文はやはり、最初に読んだほうに分がありますよね。



>国書版の方は、リズミカルな文体で、それだけでも楽しかった。



会話の声のイメージが、すっかり頭の中に出来上がっちゃてるんだもの。

ジーヴスもバーティーも。(あ、ビンゴも)



「シシリー」はくろにゃんこさんのブログで初めて知りました。

従僕が登場するのですね!?

ああ、知って良かった。うれしい。



ちなみに我が家の「ボートの三人男」は付箋と手あかでボロボロです。
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「プリーストリー氏の問題」にも (くろにゃんこ)
2005-08-06 00:18:34
興味深い執事が出てきますよ。

ゆで卵みたいにつるりとした風貌で表情ひとつ変えない彼が、主人の持ち込んだある問題に、顔を赤くして笑いをこらえるというシーンで主人が一言

「人間だったんだな。」

普段の仕事振りが想像できますよね。



そうそう、ジーヴスの中にも、「ボートの三人男」をうかがわせるところがありますよね。

ビンゴが叔父さんに本を読んであげて、喉を痛めたとき、病気の本を調べたりするところとか。

「よしきた」にも一箇所あったようなんだけど、どこか忘れちゃった。

イギリス文学特有の、さりげない引用が、とても魅力ですよね。
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「プリーストリー氏…」読みました (countsheep99)
2005-09-18 01:40:59
「プリーストリー氏の問題」読みました。

読み終えて「あー、教えてもらって良かったー知らなかったぁー」と安堵(?)しました。

というのも、今までにないタイプの執事だったので。



その執事(バーカー)についてのブログもUPしました!

できればくろにゃんこさんの「プリーストリー氏の問題」のページにリンクをはらせて頂きたいのですが…いかがでしょうか?



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パーカーは (くろにゃんこ)
2005-09-18 13:09:59
ちょっと癖のある執事でしたよね。

そこが面白い。



リンクしてくださるなんて光栄です!

ありがとうございま~す。
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