ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

両大血管右室起始症(DORV)

2011年10月19日 | 周産期医学

double-outlet right ventricle

【概念】 大動脈と肺動脈の両大血管の半分以上が右室から出ている先天性心奇形で、心室中隔欠損を伴っている。

最も多いタイプ(約50%)は大血管がside by side(同じ断面積で真横に同じ高さ)に並び、心室中隔欠損が大動脈弁下(subaortic VSD)にあるタイプである。

Dorv

① overriding aorta
② ventricular septal defect
De-oxygenated blood enters the aorta from the right ventricle and is returned to the body.

【分類】
左右心室間の短絡のため肺血流が増加し心不全と肺高血圧症を呈する場合と、肺動脈狭窄を合併しチアノーゼを呈する場合の2つに大別される。

心室中隔欠損の位置による分類:
大動脈弁下型
心室中隔欠損が大動脈弁の下に位置する。

肺動脈狭窄を伴わない場合は心室中隔欠損症と同様の、肺動脈狭窄を伴った場合にはファロー四徴症と同様の臨床症状を示す。

肺動脈弁下型(Taussig-Bing奇形)  
心室中隔欠損が肺動脈弁の下に位置する。

大血管位置関係により、正常大血管型のoriginal Taussig-Bing奇形と、大血管転位型のfalse Taussig-Bing奇形に分類されている。

両大血管下型  
心室中隔欠損が大動脈弁及び肺動脈弁両弁の下に位置する。

遠位型
心室中隔欠損の上縁が正常大動脈径以上離れている。

【心エコー、心カテーテル、心血管造影】

① 両血管が右室より起始すること
② 僧房弁がいずれの半月弁とも線維性連続性を欠くこと
③ 左室からの流出路がVSD以外にないこと

を確認する。

【治療・予後】

本症の自然予後は病型ごとに異なる。肺動脈弁下型が最も予後不良で、大動脈弁下型がこれに続き、肺動脈狭窄合併例が最も良い。(※ 自然予後と治療後の予後とは全く異なりますので、それぞれの患者さんの治療後の予後については、担当の心臓血管外科専門医の先生とご相談ください。)

通常、乳児期は、肺血流量が減少するタイプではプロスタグランジンの使用やシャント術を、肺血流量が増加する病型では心不全の治療や肺動脈絞扼術を考える。

根治手術の方法はそれぞれの病型によって異なる。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お子様の御病気で御心配な点については、担当の心... (管理人)
2011-10-29 16:04:49
最近、新生児疾患について一通り勉強する必要に迫られ、いくつかの心臓疾患についても基本事項をまとめてみました。上記の記載はいくつかの小児科教科書などから得た情報です。私自身、心臓疾患については教科書を読んでもなかなか理解できないことが多く、疑問点については、時々、同僚の心臓血管外科専門医の先生に基本的なことを質問しましたが、その先生は紙に心臓のシェーマを描いたりして、非常にわかりやすく説明してくださいました。何事も、経験豊富な専門家に聞いてみるのが一番確かです。

両大血管右室起始症は、タイプによってはファロー四徴症と同義であったり、また大血管転換症を伴うことも少なくないことなどから、最近ではひとつの疾患単位というよりは、単に心臓の形態を示すために使われることが増えているそうです。
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例えば、両大血管右室起始症の大動脈弁下型で肺動... (管理人)
2011-10-29 18:12:59
また、大血管転位症を伴う場合は、出生直後に適切な治療が行われなければ、きわめて予後不良と考えられ、自然予後や出生直後の治療、根治手術などは大血管転位症にほぼ準じます。

すなわち、同じ両大血管右室起始症という疾患名でも、その中に多くの病型があり、それぞれの病型ごとに自然予後も治療法も治療後の予後も全く異なるので、今後それらの全く異なる病態の病型群を同一の疾患として扱うかどうか?が心臓血管外科領域で問題となっているという意味だと思います。

また、“自然予後”と“治療後の予後”とは全く異なります。“自然予後は不良だが、治療後の予後は良好”ということもあり得ます。

お子様の御病気で御心配な点については、担当の心臓血管外科専門医の先生とよく御相談ください。

産科医の立場だと、両大血管右室起始症は、出生前診断が比較的難しい疾患です。すなわち、胎児心臓超音波検査の四腔断面像で異常が明らかでないため、正常と判断される場合も多いと思います。出生後に症状が発現し、新生児科医によって診断される場合が比較的多いと思います。

最近は、先天性心疾患の多くが産科で胎児期に診断されるようになり、先天性心疾患の胎児期の診断率は年々高まりつつありますが、出生前診断が難しい疾患も少なくないです。
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