前回帝王切開時の子宮切開方法と、VBAC(帝王切開後の経膣分娩)における子宮破裂の発生率の関係は、以下の通りです(アメリカ産婦人科学会、1999)。
古典的帝王切開(子宮縦切開) 4~9%の子宮破裂
T字切開 4~9%の子宮破裂
子宮下部縦切開 1~7%の子宮破裂
子宮下部横切開 0.2~1.5%の子宮破裂
古典的帝王切開(子宮縦切開)の時代には、『一度帝王切開受けたのなら、ずっと帝王切開(Once a cesarean, always cesarean)』が常識でした。
1980年に米国NIH(国立衛生研究所)はVBACを推進する勧告を発表し、1990年に米国厚生省は2000年までに帝王切開率を15%、VBAC率を35%にする目標を掲げました。これらの国策によって、米国では1990年代の半ばには帝王切開の既往のある妊婦の約6割に試験分娩が行われるまでになりました。
しかし、その後の大規模研究で、選択的帝王切開群に比べ、試験分娩群での子宮破裂の頻度上昇とそれに伴う児の予後の悪化、母体合併症の増加、医療費増大などの報告が相次ぎ、 エビデンスに基づきVBACの安全性をもう一度考え直す機運が高まりました。帝王切開率も1996年を境に上昇に転じ、VBAC率も低下しつつあります。
1999年にアメリカ産婦人科学会はVBACに関するエビデンスに基づいた勧告を発表し、米国においては、現在、従来より慎重な対応が求められるようになり、十分なインフォームドコンセント(説明と同意)が強調される傾向にあります。
我が国においては、帝王切開の既往のある妊婦の分娩方法を決定する際に臨床医が準拠すべきガイドラインがまだ示されてないので、VBACを希望する妊婦に試験分娩を実施するかどうかの判断は各施設の全くの自由裁量に任されています。積極的にVBACを実施している施設もある一方で、帝王切開の既往のある妊婦の全例に選択的帝王切開を実施している施設も多く、施設による方針の差が大きく、VBACの是非に関しては未だに議論が多いのが現状です。
こうしてVBACやお産についての情報提供を医師が病院としてでなく個人で公開するというのは貴重です。
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