ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

長野県・上伊那地域の産科医療

2009年05月25日 | 地域周産期医療

上伊那地域では、従来、町立辰野総合病院(辰野町)、伊那中央病院(伊那市)、昭和伊南総合病院(駒ヶ根市)の3公立病院のそれぞれの産婦人科で分娩を取り扱ってきました。この3病院にはそれぞれ2~3人の常勤の産婦人科医が勤務してました。

ところが、平成17年に町立辰野病院・産婦人科の常勤医がいなくなって、同院での分娩の取り扱いを中止しました。また、平成20年には昭和伊南総合病院・産婦人科の常勤医がいなくなって、同院での分娩の取り扱いを中止しました。さらに、産婦人科の開業医の先生方も、高齢のため次々に分娩の取り扱いを中止しました。

そのため、地域内のほとんどすべての分娩が伊那中央病院に集中するようになりました。同病院は、この地域の産科医療の最後の砦として、幾多の困難を乗り越えて頑張っています。産婦人科の常勤医を6人に増員し、施設も増築して、分娩件数の急増に対応しています。

元来、この地域の産科施設では年間千6百件程度の分娩を取り扱っていたそうですから、伊那中央病院が千2百件程度の分娩を取り扱うにしても、4百件程度の分娩の受け入れ先が地域内で見つからないことになってしまいます。しかし、来春には駒ケ根市内で産科医院開業の予定があるとのことですから、そうなれば現在の危機的状況もある程度は緩和されると思われます。諏訪地域や飯田下伊那地域などの近隣地域の産科関係者もできる限り連携・協力し、一緒にこの危機を乗り切っていきたいと思います。

地方の産科医療にとって、医師の確保は最大の課題ですが、地方の病院が自力で医師を確保するのは非常に難しく、最終的には大学病院の人的支援に頼るしかありません。それぞれの地域の状況に応じて、医師確保、病診連携、助産師パワー活用など、地域産科医療の崩壊をくい止めるための最大限の自助努力を継続してゆく必要があると思います。

****** 信濃毎日新聞、2009年5月23日

伊那中央病院、分娩数過去最多1170件

08年度 昭和伊南扱い休止で

 伊那中央病院(伊那市)が2008年度に扱った分娩の件数は、前年度より149件増の1170件となり、開院した03年度以降で最多だったことが22日、分かった。昭和伊南総合病院(駒ケ根市)が08年度から、医師不足のためお産の取り扱いを休止したことが影響したとみられる。医師数や施設の面から「ぎりぎりの状態が続いている」(事務部)としている。

施設や医師数 「ぎりぎりの状態続く」

 伊那中央病院で03年度に扱ったお産は年間733件で、04年度も700件台だった。だが、05年度は辰野総合病院(辰野町)が医師不足によりお産の扱いを休止したため、940件に増加。伊那中央が上伊那地方のお産の大部分を担っている。

 年間約500件を扱ってきた昭和伊南がお産の扱いを休止したのを受け、上伊那地方の関係機関は、伊那中央が里帰り出産の受け入れを断った上で、年間1000件だった扱いを約1200件に増やすことを確認していた。年間約300件の要望があるとみられる里帰り出産は、今後も断らざるを得ない状況だ。

(以下略)

(信濃毎日新聞、2009年5月23日)

****** 信濃毎日新聞、2009年5月21日

上伊那で助産所の開業相次ぎ6カ所に 

全国的にも珍しい

 上伊那地方でここ数年、助産所の開業が相次いでいる。妊婦が入院してお産できる「有床分娩(ぶんべん)」を扱う助産所は、県内8カ所のうち6カ所が上伊那に集中するようになった。産科医不足は上伊那でも深刻なことから、助産師たちは安心してお産ができる地域にしようと意気込んでいる。

 日本助産師会県支部上伊那地区によると、有床分娩を扱う助産所が1地域に6カ所もあるのは全国的に珍しい。

 駒ケ根市の昭和伊南総合病院の近くに8日、「おひさま助産院」を開業した小林まゆみさん(37)は「母親と赤ちゃんを温かく包み込む助産院にしたい」と抱負を話す。伊那市の伊那中央病院に1993年から14年間勤務。産科医不足が深刻化する中で、助産師がもっと活躍できる場があるはず-との思いから開業に踏み切ったという。

 6カ所のうち、最も早く有床分娩の扱いを始めたのは84年に開業した「幸(さち)助産院」(駒ケ根市)。その後、2005年の「助産所ドゥーラえむあい」(伊那市)、07年の「野ノ花助産院」(駒ケ根市)と開業が続き、08年には伊那市でさらに2カ所が開業した。

(以下略)

(信濃毎日新聞、2009年5月21日)


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