コメント(私見):
神奈川県の場合、妊娠反応が陽性になってすぐに病院を受診しても、なかなか分娩予約ができない状況のところもあると聞いてます。数年前から話題になっていますが、最近になってもいまだに分娩取扱いを中止する自治体病院の報道が続いています。
首都圏は交通の便がよいので、今のところは最終的に何とかなっているのかもしれませんが、いろいろ努力しても、結局、神奈川県内で分娩予約ができなかった人たちは、一体全体、どこで産むことになるのでしょうか?東京都内に流れることになるのでしょうか?妊婦健診を受けず陣痛開始してからいきなり救急車で病院に駆け込む(飛び込み出産)しかないのでしょうか?
首都圏は人口が集中しているだけに、首都圏からいったんお産難民が大量に出現し始めたら、日本中どこを探しても、どこにもお産難民の受け皿がなくなってしまう可能性が高いと考えられます。
産科医の頭数が圧倒的に不足していますので、多くの新人を獲得する必要がありますが、産科医の養成には10年かかります。日本中どこにも産科医は余ってませんので、他の地域から出来上がった産科医を引っ張ってくるのは至難の業です。今、現場に踏みとどまっている産科医達がこれ以上離職しないような対策を、国策として強力に実施する必要があります。
****** 東京新聞、2008年10月22日
お産難民首都圏でも 横須賀市深刻年300人が市外出産
深刻な産科医不足で出産場所がなかなか見つからない“お産難民”が、首都圏にも押し寄せている。特に神奈川県では、三浦半島の横須賀市で四年ほど前から始まった産科医不足が、隣接の横浜市などに波及。横須賀市では年間三百人程度の妊婦が、市外でのお産を余儀なくされているという。お産難民が流入する横浜市でも出産施設が非常に少ない区が増加するなど、危機的な状況は悪化の一途をたどっている。【稲垣太郎】
「うわさでは聞いていましたが、まさかここまでとは思いませんでした」。今月初め、横須賀市内のバス停。臨月のおなかを抱えながらバスを待っていた横浜市金沢区の主婦(31)は、妊娠したころをそう振り返った。今年初め、市販検査薬で妊娠に気づいた。「子宮筋腫を持っていたので、お産は大きい病院の方がいい」と思い、以前から知っていた横浜市と横須賀市の四つの病院にすぐに電話を入れた。だが「予約がいっぱい」と全部断られた。
さらに五病院に電話したが、すべて「お産はやらなくなったんですよ」と言われて愕然(がくぜん)とした。結局、病院を断念し、地元の診療所に通うことに。「二人目も欲しいが、これからどうなっていくのか」と不安げに話した。
三浦半島に広がる横須賀市は人口約四十二万人。以前、産科施設は病院と診療所、助産所の計九つあったが、二〇〇四年以降、二病院と一診療所がお産の取り扱いをやめた。
年間四百件近いお産を扱っていた聖ヨゼフ病院の事務部長は「産婦人科に常勤医が三人いたが、二人が大学の医局に引き揚げられ、もう一人は定年退職して医師がいなくなった」と話す。年間六百件以上を扱っていた民間病院の担当者も「常勤の産科医が三人いたが、全員、大学の医局に引き揚げられた。再開したいが、医師の確保が難しい」と言う。
市の昨年の出生届は約三千三百件。お産件数との差などから市では、このうち約三百人の赤ちゃんが横浜市など市外で生まれたとみている。
さらに横須賀市では、年間約六百五十件のお産を扱ってきた民間診療所が今年いっぱいで、院長の健康問題で閉院することが決まり、お産難民は一層増えそうだ。
神奈川県内でお産を取り扱う病院は、三年前の七十八病院から六十四病院へと18%減少。診療所は二〇〇二年に約百施設あったが、今年は約六十施設と四割も減った。
人口約三百六十万人の横浜市でも今年四月の市の調査で、お産を扱う施設がなかったのは栄区、一施設だったのは緑、西、瀬谷の計三区、二施設だったのは計五区。
(以下略)
(東京新聞、2008年10月22日)
聞かれない、行政や産婦人科学会ではどう考えているんでしょう?
妊婦のみならず、今後妊婦になるだろう家族を持つ
私も非常に不安が増しています。
良くする対策を立てることより、、これ以上悪くならな対策が必要なことをマスコミも強く言うべきです。これ以上悪くなる意味は、現役バリバリの産科医の相次ぐ離職です。それを止めなければなりません。お金で済むならば、何千万円でも払い、刑事免責でもして、何とか離職を食い止めることです。いくら医学部の定員を増やしても指導者がいなければ絵に描いた餅です。一度失った人材の養成は何十年の歳月がかかります。
>七カ月間で二人の医師が退職する事態となった。
>同病院は「いずれも個人的な事情」と説明しているが、
>産科の再開には「最低三人の常勤医が必要」と話している。
「破格の報酬」にも関わらず何故7ヶ月間で2人医師したのか、
ちょっとでも想像力があれば、自ずと現場が知れるというものです。
私の勤務地近隣でも、続々と崩壊が進みつつあります。
隣の市の自治体病院も産科崩壊決定です。
来春から一体どうなるのか想像がつきません。
少しでも崩壊を食い止めるのであれば、
現有戦力の維持は絶対条件です。
神奈川の産科医先生の最後の一言は至言であると思います。
政府もダメ、マスコミもダメ。日本の医療、特に産科医療の未来は残念ながら無いようです。
でも、高次病院が維持出来なくなればすべては崩壊するわけですから、このままではお先真っ暗というところでしょうか?
今の世の中で、足りなくて困っているのは、高次病院の常勤医であり、単純に産科医の頭数の問題だけではありません。非常勤専門の人だけがいくら増えても、常勤医が減り続けるようでは全く問題の解決にはなりません。周産期医療の崩壊をくい止めるためには、高次病院の常勤医が減らない施策が絶対に必要です。
そもそも、大学医局というのは何の法的根拠もない団体です。地域医療を支える責任があるというのは内部の人間の勝手な思い込みです。
厳しいことを書きますが、世間では、労働者というのは自ら権利を主張し交渉しない限り無限に搾取され続けるものです。また、就職というのは労使双方の合意に基づく労働契約ですので、各々の労働者がどのような状況を受け入れるかは自己責任です。
先生が今後現在の職場での勤務が困難と考えているならば、とりうる選択肢は二つ、辞職するか、自ら交渉し持続可能な労働条件を手に入れるかのみです。
もし、大学などのしがらみで現時点での辞職が困難なのであれば、あらゆる手段を用いて職場環境の改善に取り組まなければなりません。
幸い材料は揃っていると思います。墨東病院の件で総合周産期母子センターは常時2人の当直体制が望ましいとされていることが知られました。常勤医5名でこの体制を維持することは誰の目にも困難であり、その状況を放置して今回の様な不幸な事故が起きれば病院管理者や自治体トップにまで責任追及が及ぶことも明確となりましたので、一旦センターの看板を下ろし現状の人数で維持可能なレベルに診療体制を縮小することと、自治体病院ならば、首長自らが全国駆け回ってでも補充の医者を連れてくるように交渉すべきです。
また、今、特に地方誌などのマスコミは医療問題に非常に敏感です。役人や政治家が最も恐れるのは世論の批判ですから、匿名を条件にしてもよいので、現在の状況と今後現状の診療体制の維持が困難な見通しであることを記事にしてもらうというのも有効な手段と考えます。
情報操作できるというのは強みですね。
良い意味でも悪い意味でも。
良心的でよく勉強しているマスコミの方に産科医療を取り上げてもらいたいものです。
今の流れじゃ増加した医学部生はほとんどが産科以外に流れますね。まず間違いない。