ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

子宮内反症

2010年03月06日 | 周産期医学

inversion of the uterus

【定義】 子宮内反症とは、子宮体が内方に反転して頚管内に下降したり腟内あるいは腟外に脱出し、子宮内膜面が外方に内転した状態をいう。

Naihan

【分類】 内反の程度により、
①全内反症 complete inversion of the uterus
②不全内反症 incomplete inversion of the uterus
③子宮圧痕(陥凹) impressio uteri
に分類される。

【頻度】 初産婦に多く、非常にまれ(2000~20000分娩に1例の頻度)である。23127例中に1例(Das)。自然発生:40%、臍帯牽引:21%、子宮底圧出:19%。

【予後】 治療が遅れると、大量出血・ショックのため母体死亡に至ることもある。死亡率14.8%(Das)。用手整復例の次回分娩時には再発がある。

【原因】 胎盤剥離徴候以前に臍帯を過度に牽引したり、強引な胎盤の子宮底圧出法を行った場合に発生しやすい。しかし、通常の扱いでも生じることがあり、また一度発生すると次回分娩時の再発率が高いことから、内因性の素地に外因性の力が加わって発生すると考えられている。

【症状】 分娩第3期の胎盤剥離前後に生じ、子宮内反症を生ずるとすぐに大量の出血と下腹部の激痛が始まり、出血性ショックと腹膜刺激症状による神経原性ショックが加わって重篤なショック状態になる。

※ 出血量とショックの程度とは一致しない。

【診断】 内反子宮が子宮腔より脱出している場合は、赤色腫瘤を認める。この腫瘤に胎盤が付着していれば、診断は確実である。子宮底は下降し触知不能で、超音波断層法で陥凹した子宮を確認する。

【治療】
①全身療法
 十分な輸液・輸血と抗ショック療法を行う。

②感染対策
 厳重な無菌操作を行い、十分な抗生物質を投与する。

③用手的整復
 胎盤が付着していれば静脈路を確保し、吸入麻酔や子宮収縮抑制剤を投与し子宮が弛緩した後に剥離を行う。発生後間もない(1時間程度)内反子宮は、術者が一方の手掌を子宮底に当て、反対の手の指で骨盤軸の方向に押し上げるだけで修復可能なことが多い。元に戻れば子宮を弛緩させる薬物は中止し、オキシトシンを点滴して子宮を収縮させる。この間、子宮底を把持して正常な子宮の位置を保ち、子宮が収縮して止血するまで双手圧迫を続ける。

④手術的整復(Huntington手術)
 絞扼が強く、用手的整復が不可能な場合は開腹する。円靭帯と子宮底部を同時にゆっくりと引き上げながら、子宮体部を下方に押し下げるようにして修復する。絞扼が強くて修復できないときは、後壁を注意深く切開して子宮底部を露出させる。修復した後は子宮筋を弛緩させる麻酔薬は止め、オキシトシンの点滴を始める。

⑤子宮摘出
 子宮内反症の整復に不成功の場合は、腟式または腹式に子宮を摘出する。


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