子宮肉腫は子宮の悪性間質性腫瘍で、平滑筋とともにしばしば種々の中胚葉性由来組織から発生する。直接周囲の臓器に連続的に波及するが、しばしばリンパ行性あるいは血行性に転移する。
子宮体部から発生する悪性腫瘍の5%以下で、比較的まれな婦人科悪性腫瘍である。主として閉経後に発症し、不正性器出血を訴える場合が多く、ときに子宮が急速に増大してみつかる場合もある。子宮内膜間質肉腫や特に癌肉腫は内膜の細胞診や生検で悪性が疑われる場合が多いが、平滑筋肉腫は通常筋腫摘出子宮の組織診断で確定される場合が多い。
治療は手術療法が優先するが、放射線療法や化学療法、特に内膜間質肉腫に対しては内分泌療法が併用される。予後は進行期が最も影響するが、子宮に限局した早期でも5 年生存率は50%前後と極めて不良である。
1.分類
子宮肉腫は組織発生学的に複雑で、その機序は十分に解明されていないが、主に子宮内膜間質肉腫、平滑筋肉腫、癌肉腫の3 範疇に分類される。半数近くを癌肉腫が占めるが、ついで平滑筋肉腫、ときに子宮内膜間質肉腫が発生する。
1)子宮内膜間質肉腫
低悪性度は子宮内膜間質細胞に類似した細胞よりなる肉腫で、子宮筋層ことに脈管を侵襲し、ときに子宮外の脈管へ進展する。子宮内膜間質結節とは腫瘍境界部の特徴(脈管侵襲を示さない)で鑑別される。
高悪性度は低悪性度と腫瘍境界浸潤部は共通しているが多くの分裂像(10高倍率視野で10以上)を伴った多形性の細胞よりなり、低分化で特徴ある組織像を示さない場合が多く、また異所性成分を含まない。
2)平滑筋肉腫
典型的な場合は高い細胞密度、著しい核の多形性、異型分裂像を含む高頻度(10高倍率視野で10以上)の核分裂像などがみられ、また腫瘍の凝固壊死や境界部の浸潤所見より平滑筋腫と区別される。
極めてまれであるが、上皮性細胞に類似した細胞よりなる類上皮平滑筋肉腫など変異型がある。
3)癌肉腫(悪性ミュラー管混合腫瘍)
上皮性、間葉性混合腫瘍の中で最もよくみられる肉腫で、診断には癌腫と肉腫両者が必要で、両成分の判定は通常の組織染色によって行われる。異所性成分(骨,軟骨,横紋筋など)の有無によりいわゆる癌肉腫と異所性癌肉腫(悪性中胚葉性混合腫瘍)に分類される。
胎児性横紋筋肉腫は幼少児の子宮頸部から発生し、ブドウの房に似ているのでブドウ状肉腫と呼ばれる。
2.診断
1)症状
患者の年齢は60歳前後にピークがあり、ほとんど閉経後に発症する。しかしながら、平滑筋肉腫は比較的(10歳前後)若年に多い。ほとんどが不正性器出血を訴えて来院するが、平滑筋肉腫で不正性器出血を訴える患者は半数に満たない。ときに疼痛や腫瘤感を訴える場合もある。腟鏡診で偶然壊死性の脆いポリープ状の腫瘍が頸管から突出していたり、通常双合診で正中に増大した球形の柔らかい子宮を触れる。
2)細胞診、生検
ルーチンの子宮腟部や特に内膜の細胞診および生検による異常がほとんどの癌肉腫で認められるが、特に平滑筋肉腫では異常を示す患者は20%に満たないので注意する。
3)補助診断
画像診断で子宮肉腫に特異的な所見はないので、子宮が増大したり骨盤内に腫瘤を形成する(特に変性を伴う)平滑筋腫、腺筋症、癒着している卵巣腫瘍、骨盤内炎症性疾患、子宮体癌などと鑑別する必要がある。
超音波検査では典型的な筋腫や腺筋症と異なった腫瘤で比較的に血管が豊富、CT スキャンで腫瘤中央部のlow density area,MRI ではサイズが大きくて内部が不均一な腫瘤、などの所見が子宮肉腫でみられる。
感度、特異度ともに満足な腫瘍マーカーはないが、通常進行すると血清LDH 値が上昇し、ときに子宮外に広がると血清CA125値も上昇する。
4)進行期分類
FIGO の子宮体癌臨床進行期分類に準じる。
3.治療
治療の第一選択は手術療法であり、腹水あるいは洗浄細胞診の後、一般に標準手術として単純子宮全摘出術、両側付属器摘除術、骨盤および傍大動脈の選択的リンパ節切除術が行われる。さらに放射線療法を追加併用する施設があり、その有効性が報告されている。
術後の放射線療法あるいは化学療法によるアジュバント療法の有効性については不明である。他の婦人科悪性腫瘍ほど抗癌剤が奏効しないが、子宮肉腫に対してはIfosfamide(奏効率17~30%)とAdriamycin(16~19%)が比較的奏効する。
併用化学療法の奏効率ではIfosfamide, Adriamycin, Cisplatin 3 剤併用が最も奏効する。
例:CYVADIC療法 (VCR/DXR/CPA/DTIC)
また子宮内膜間質肉腫には合成プロゲステロンによる内分泌療法も行われる。
1)Ⅰ、Ⅱ期
標準手術のみ,手術+放射線療法,手術+アジュバント療法
2)Ⅲ期
標準手術(+腫瘍縮小手術)+放射線療法あるいは化学療法
3)Ⅳ期
個別化、化学療法(+内分泌療法)
4.予後
悪性度の高い平滑筋肉種や癌肉腫の予後は極めて悪く,子宮に限局している Ⅰ、Ⅱ期でも50%前後、Ⅲ、Ⅳ期では90%以上が2 年以内に死亡する。
一方、悪性度の低い平滑筋肉腫や低悪性度子宮内膜間質肉腫の予後は比較的よく、Ⅰ、Ⅱ期では80%以上の5 年生存率が期待できる。