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ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

三尖弁閉鎖症(TA)

2011年10月10日 | 周産期医学

tricuspid atresia

【概念】 三尖弁閉鎖症とは、三尖弁が全く存在しないか、あるいは開口していない先天性心疾患である。全先天性心疾患の1~3%を占め、比較的頻度の少ない疾患である。必ずASDを伴い、多くの例ではVSD、右室低形成、PS/PAを伴う。PDA、TGA、大動脈弓の異常などを伴うこともある。

Ta

【血行動態】 右房から右室への血行が遮断されているため、体静脈血はASDを通して左房に入り、左房で肺静脈血と混合する。この混合した血液が左室から大動脈へと流れる。肺動脈へはVSDまたはPDAを介して血流が保たれる。

【臨床所見】 チアノーゼは生後1日目に気付かれることが多い。肺血流量減少群では新生児期より著明なチアノーゼを呈する。一方、肺血流量が増加している型では、チアノーゼは軽度であるが、心不全や肺高血圧を呈し、加齢とともに肺血管閉塞性病変が進行する。

チアノーゼが長く続くと、多血症、鉄欠乏性貧血、バチ指などが出現し、脳血栓、脳塞栓を生じることもある。さらに、感染症やう歯が原因となり、脳膿瘍や感染性心内膜炎などの重篤な合併症を引き起こすことがある。

聴診では、胸骨左縁にVSDやPSによる収縮期雑音を聴取する。

【検査所見】
・ 心電図: 左軸偏位、左室肥大、右房負荷が特徴的である。

・ 胸部X線: 肺血流量減少群では心陰影は小さいか軽度の拡大にとどまる。肺血流量増加群では肺うっ血と心拡大を認める。

・ 心エコー:  三尖弁の欠損、右室の低形成、ASDの存在、大きな左室を認める。

・ 心臓カテーテル: 造影にて右房→左房→左室の血行を証明する。正面像では右室影が欠損し本症に特徴的である。

【診断】 臨床症状、特徴的な心電図所見、心エコー所見から診断可能。

【治療】
・ 新生児期より強い低酸素状態にある場合、プロスタグランジンE1により動脈管からの血流を増加させ、全身状態の改善を図る。

・ 肺動脈狭窄を伴う病型で、適切な肺動脈圧が維持されていれば、時に準備手術を経ることなくFontan手術適応となる時期まで待機することが可能である。しかしながらほとんどの病型で最終手術到達までに準備手術を必要とする場合が多い。

・ 新生児期(生後1か月以内): 肺血流減少群ではBlalock-Taussig 短絡術(B-Tシャント術)を、肺血流増多群では肺動脈絞扼術を行う。

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・ 乳児期(生後3~6か月前後): Glenn手術(上大静脈-右肺動脈吻合術)を行う。

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・ 幼児期(生後1~3年前後): Fontan手術(機能的修復術)を行う。現在は人工導管を用いて下大静脈と右肺動脈を吻合する方法が主流である。

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