ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

子宮破裂

2010年05月08日 | 周産期医学

Uterine Rupture

[定義] 分娩時に、まれに妊娠中に起こる、子宮体壁の裂傷を子宮破裂とよぶ。

[予後] 母体死亡率:2~5%、胎児死亡率:20~80%

[裂傷の程度による分類]
①不全子宮破裂:
 裂傷は子宮漿膜まではおよばない。
②全子宮破裂:
 裂傷は漿膜面を含む子宮壁全層におよぶ。

[原因による分類]
①瘢痕部子宮破裂

 ・既往手術による子宮筋層の創部瘢痕が陣痛の圧力で破裂する。
 ・帝王切開、筋腫核出術、子宮内容除去術。

②自然子宮破裂
 ・自然に発症したもの。
 ・多産婦、子宮壁の過伸展(巨大児、多胎妊娠、羊水過多)、過強陣痛。

③外傷性子宮破裂
 ・医原性外傷など外力による。
 ・Kristeller胎児圧出法、骨盤位牽出術、鉗子分娩、外回転術、分娩誘発(子宮収縮促進薬の過剰投与)、交通事故。

[切迫子宮破裂徴候]
・ 陣痛は増強し、過強陣痛になる。
・ 分娩の進行が停止する。
・ 呼吸は促迫し、脈拍は頻脈になり、発熱する。
・ 産婦は不穏状態になり、下腹部に持続性疼痛を訴え、意識消失する場合もある。
・ 外診: 子宮峡部は過伸展し、病的収縮輪は臍高まで達し上昇する(Bandl収縮輪)。円靭帯を索状物として触れる。
・ 内診: 胎児先進部は骨盤入口部に圧迫・固定され、異常な産瘤が発生して、子宮腟部が著しく腫脹し圧痛がある。

[子宮破裂徴候]
・ 急激に進行する胎児機能不全(NRFS)を認める。
・ 疼痛: 陣痛発作時に突然、子宮破裂した激痛を感ずる。
・ 陣痛停止: 突然に停止して苦痛は和らぐ。
・ 出血性ショック症状: 腹腔内に出血が起き、虚脱状態となる。
・ 外診:胎児を腹壁直下に触知する。
・ 内診:子宮腟部挟圧状態が消失する。胎児先進部は上昇して触知不能か、移動性が著明となる。破裂創や時に腸管を触知する。

[無症候性子宮破裂]
 近年、子宮破裂徴候がなく無症状で経過し、児娩出後の外出血により診断される無症候性子宮破裂がしばしばみられるようになった。これは特に子宮瘢痕破裂や不全子宮破裂でみられやすく、帝王切開の適応の増加や帝王切開後の経腟分娩(VBAC)が普及したためであると考えられる。

[子宮破裂の治療]
1.出血性ショックに対する治療を行う。
 (酸素吸入、輸液、輸血)
2.緊急開腹手術を行い、児を娩出する。
3.破裂した子宮に対する対応:
  ①単純子宮全摘術、子宮腟上部切除術
  ②裂傷の挫滅がわずかで、早期に手術できた時、しかも児をなお望む時は、この部分を縫合・修復して子宮を温存する。
4.母体の術後全身管理を厳重に行う。
 (輸液、輸血、DICの治療、抗生剤投与)


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちはです. (○○産婦人外科)
2013-03-06 14:54:48
以前に過去例で幼児虐待に拠る子宮破裂からの子宮収縮が在り、通常の母体保護と母体復元が必要な小児患者さんが、在りましたので、調べてます。研修時代での過去例として、現在も子宮収縮に拠る不妊症だと考えてました!大変に参考に成りました、ありがとう御座いました。
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