ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ®52mg)

2020年07月20日 | 生殖内分泌

レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)

LNG-IUSミレーナ®52mg)は、プロゲスチン(合成黄体ホルモン)製剤であるレボノルゲストレルの子宮内留置型の薬剤放出システムです。約20μg/日のレボノルゲストレルを子宮内に約5年間放出します。本システムの特徴は、プロゲスチン単独の製剤であること、局所療法であることです。

ミレーナ®52mgは、2007年に避妊薬として国内で承認されました。2014年からは過多月経、月経困難症の治療に対してミレーナ®52mgが保険適用となりました。

LNG-IUS装着の目的:
① 避妊(自費診療)
② 過多月経の治療(月経血の減少)
③ 月経困難症の治療(月経痛の軽減)

LNG-IUSの利点
① エストロゲンが配合されていないプロゲスチン単剤のため、血栓症リスクの上昇は懸念されない。
② 局所療法であり、血中に移行するレボノルゲストレル量は軽微であるため、乳癌術後や腎機能不全例にも使用可能である。
③ 従来の子宮内避妊用具(IUD)とは異なり、LNG-IUSは子宮機能に関しては可逆性が担保されており、抜去後の妊孕性は十分に保たれる。
④ 子宮内膜増殖症(単純型)に有効性が認められている。子宮体がんに対する予防効果が期待できる。子宮内膜症・子宮腺筋症の症状緩和に有効である。
⑤ コストパフォーマンスが良好である。同じ目的で経口避妊薬(OC)や低用量ピル(LEP)を5年間服用した場合と比較しても明らかに安い。

LNG-IUSの短所:
① 3ヶ月以内の自然脱出例が4%ある。
② 粘膜下筋腫、骨盤内感染症症例への使用は禁忌である。
③ 子宮頸管狭窄例では挿入困難である。

産婦人科診療ガイドライン・婦人科外来編2020
CQ402 子宮内避妊用具(IUD)・レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)を装着する時の説明は?

1. 避妊を目的とする場合、完全な避妊はできないこと。(A)
2. 妊娠の疑いがある場合にはただちに受診すること。(A)
3. 位置の確認と交換のために定期的に受信すること。(B)
4. 出血、感染、穿孔などの有害事象および自然脱落が起こりえること。(B)

参考Webサイト:
ミレーナ®52mg ご使用中の皆様へ、バイエル薬品株式会社

参考文献:
産婦人科診療ガイドライン・婦人科外来編2020、日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会、2020

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