Hepatitis B
【病原体】
B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus:HBV)
【垂直(母子)感染の経路】
産道感染が主であるが、キャリア母体からの児のごく一部(5%以下)において経胎盤感染(胎内感染)が成立する。
【疫学】
・ 妊婦のHBs抗原陽性率:1%以下(0.3~0.5%程度)
・ HBs抗原陽性妊婦のHBe抗原陽性率:25%
【児のHBVキャリア化】
・ HBs抗原陽性でHBe抗原陰性の妊婦(ローリスク群)から出生した児がHBVキャリアになることはほとんどない。
・ HBe抗原陽性妊婦(ハイリスク群)から出生した児を放置した場合、児のHBVキャリア化率は80~90%とされている。
【B型肝炎母子感染防止対策】
・ B型肝炎は血液を介したB型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって起こり、「一過性感染」と「持続感染」(キャリア状態)の2種類の感染様式がある。
・ 日本のHBV持続感染者(キャリア)のほとんどは母子感染により生じる。
・ HBVキャリア妊婦から生まれた児に対して、HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)とワクチンによる「B型肝炎母子感染防止対策」を行い、児のキャリア化を防御する。
・ 日本の全世代におけるHBs抗原陽性キャリアの頻度は約2%弱であり、B型肝炎母子感染防止事業が全国的に開始された1986年以降の世代のキャリア率は0.05%に激減した。
【B型肝炎母子感染防止対策プロトコール】
1. 妊婦に対しHBs抗原検査を行い、陽性であればHBe抗原検査を行う。
2. HBs抗原陽性妊婦からの出生児に、HBe抗原の結果にかかわらず出生後HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を投与する。
3. HBs抗原陽性妊婦からの出生児に、生後1か月でHBs抗原を検査する。児のHBs抗原が陽性の場合(胎内感染)は、以後のHBIGとワクチンは投与しない。
4. 児のHBs抗原が陰性であれば、生後2か月にHBIG とHBワクチン、生後3および5か月にHBワクチンを投与する。
5. 生後6か月頃にHBs抗体検査を行い、HBs抗体検査陰性もしくは低値の場合には、HBs抗原検査を行い、HBs抗原陰性者に対してHB ワクチンの追加接種を行う。
※ HBe抗原陰性妊婦からの出生児に関しては、生後1か月時のHBs 抗原検査、生後2か月時のHBIGは省略できる。
産婦人科診療ガイドライン・2011
CQ606 妊娠中にHBs抗原陽性が判明した場合は?
Answer
1. HBe抗原・肝機能検査を行い、母子感染のリスクを説明する。(A)
2. 内科受診を勧める。(C)
3. 小児科と連携して出生児に対して「B型肝炎母子感染防止対策」を行う。(A)
4. 「B型肝炎母子感染防止対策」を行えば授乳を制限する必要はない旨を説明する。(B)
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B型肝炎母子感染防止対策の手引き
(日本産婦人科医会ホームページ)
B型肝炎について(一般的なQ&A)
作成:厚生労働省
作成協力:(財)ウイルス肝炎研究財団、(社)日本医師会感染症危機管理対策室