ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

お産の危機

2008年07月09日 | 地域周産期医療

大多数の欧米諸国では、妊婦健診は近くの診療所で行うが分娩施設は集約されているのに対して、日本では多数の小規模施設が分娩を取り扱うという特徴があります。例えば、分娩施設あたりの産婦人科医数は、アメリカが6.7人、イギリスが7.1人であるのに対し、日本はわずか1.4人にすぎず、きわめて小規模な施設で多くの分娩が行われているのが現状です。

日本の分娩施設は少人数の産科医で維持されているため、各施設の産科医の当直回数が多くなって勤務環境が過酷となり、これが若い医師がこの分野への参入を躊躇する大きな要因の一つとなっています。

全国各地の多くの分娩施設が休診ないし規模縮小に追い込まれていて、事態はどんどん悪化し続けてますが、小規模施設での分娩管理にはやはり限界がありますから、各地域で分娩施設の集約化を進め、施設あたりの産婦人科医数を少なくとも諸外国並みの6~7人程度まで増やす必要があると思います。

次世代の若い人達が入門を尻込みするような過酷な勤務環境のままで、無理に無理を重ねて頑張り続けるのは考えものです。産科医療を再生させるためには、若い人達が喜んで入門できるような勤務環境を整えることが非常に重要だと思います。

****** J-CASTニュース、2008年7月5日

半年先まで分娩予約でいっぱい 妊娠判明即病院探しに奔走

 産婦人科医が足りず、半年先まで分娩の予約が取れない。そんな深刻な事態が全国で増えている。今や、妊娠したと分かった瞬間から、妊婦は産み場所を求めて奔走せざるをえないのである。

妊娠わかった時点で予約を取ることが絶対に必要

 「09年1月まで、分娩予約を受け付けることができません」

 そう話すのは、東京都内の産婦人科病院だ。ここでは、2人部屋と個室があるが、2人部屋は人気があり、すぐに埋まってしまう。割高な個室も少し空きがある程度だ。

 また、都内の別の病院の場合は、ホームページに「09年1月前半まで予約を制限している」と書かれている。ここに問い合わせると、担当者は1月後半から予約可能と回答した。今後さらに制限が進むことも考えられるという。

 1か月の分娩数を制限している病院もある。独立行政法人国立病院機構横浜医療センター(神奈川県横浜市)では、1か月の分娩数を70件にしている。産婦人科医が7~8人勤務している比較的大きな病院だが、担当者は「先週で1月までの予約がいっぱいになりました。埋まるのが早かったです」と話す。横浜市西部地区、藤沢、鎌倉地域の中核病院である同センターには、地域の産婦人科で予約が取れなかった妊婦が殺到している様子だ。

 分娩予定日は通常、妊娠9~10か月目とされる。7か月先まで空きがないということは、妊娠2か月目までに受診しなければ間に合わない計算だ。ところがこの時期は自覚症状が少ないという。つまり、受診が遅れると予約が取れない、なんてことにもなりかねない。

 「小さな病院は医師の数も、ベッド数も少ない。そのためすぐに予約でいっぱいとなってしまう。また、分娩できる施設の数自体も減っていて、妊婦さんは手当たり次第病院に問い合わせている」

 妊娠がわかった時点で診察を受けて、早めに分娩予約を取ることが絶対に必要だ。各病院の担当者はこう口を揃える。最近の妊婦はまず、産む場所の心配をしなければならない。

 一方、東京都の医療機関案内サービス「ひまわり」では地域別に助産所の検索ができるが、予約の空き状況まではわからない。各病院にデータを随時更新してもらわなければならないため、予約状況がわかるサービスの実現は難しい、と東京都福祉保険局は話している。

(以下略)

(J-CASTニュース、2008年7月5日)