ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

大学や地域の現状踏まえ制度の是正を~新医師臨床研修制度でヒアリング(医療タイムス)

2007年06月08日 | 地域医療

コメント(私見):

大学病院は3次医療を担っているので、地域の2次病院ではとても手に負えないような重症の患者さん達が県内各地からどんどん紹介されて来ます。また、大学の医学部では基礎的な医学の研究が行われています。

ですから、一般の2次病院では扱うことのできない高度で最先端の医療を学ぶためには、大学病院での修業が不可欠ですし、基礎的な医学研究に従事するためには大学に在籍する必要があります。

しかし、一般のよくある疾患は、大学病院での診療の対象とはならないので、大学病院における臨床研修ではあまり多く経験できないかもしれません。

初期臨床研修では、プライマリー・ケアの修得のために経験できる症例数が十分にあり、指導体制の整った病院に、研修医が自然に多く集まると思います。都会の有名病院では、それらの条件がちゃんと満たされているからこそ、多くの研修医が集まっているんだと思います。

初期臨床研修の中で、産婦人科研修は2年目に行われますので、すでに1年間かけて内科や外科を回っていますし、当直業務や救急外来なども多く経験してます。ですから、当科では、産婦人科研修中に、各研修医の技術修得状況に応じて、妊婦検診や帝王切開執刀など、指導医の監督下にいろいろと実践してもらっています。実際に産婦人科診療に参加して、産婦人科に興味を示してくれる研修医もいます。その中で、産婦人科医への道を自ら選んでくれる研修医が、年に1人でも出現してくれたら、最高にうれしく思います。

****** 医療タイムス、2007年5月29日

大学や地域の現状踏まえ制度の是正を
~新医師臨床研修制度でヒアリング

 医道審議会医師分科会医師臨床研修部会は25日、4人の参考人からヒアリングを行った。その中で大学病院の代表参考人からは、大学病院を中心とした臨床研修制度への是正や、ある程度地域の状況を踏まえたマッチング制度を求める意見が出た。

 小西郁生信州大学医学部産婦人科学講座教授(卒後臨床研修センター長)は、新医師臨床研修制度の開始によって、産婦人科の不足が一挙に顕在化したことを指摘し、「厚生労働省を深くうらんでいるが、研修医のプライマリ・ケアの修得など優れた面もある。元の卒業後即専門研修に戻したいとは思わない」と評価した上で、新制度の一層の充実を求めた。そのための課題としては、「将来の専門性が決まっていない中で、次々と診療科を移るローテーション研修では、モチベーションを保てない研修医が多い」と述べた。また、「現在の実力ある医師は、大学病院中心の臨床研修で鍛えられてきた。大学離れを促進する研修制度は、若手医師全体のレベル低下を招く危険性がある」とし、大学病院を中心に据えた臨床研修制度とする必要性を訴えた。

(医療タイムス、2007年5月29日)

****** Japan Medicine、2007年5月28日

厚労省・医師臨床研修部会 産科、小児科等は別立ての研修方式採用を 参考人からヒアリング

 厚生労働省の医道審議会医師分科会・医師臨床研修部会は25日、産婦人科、小児科、精神科に携わる参考人を呼びヒアリングした。各診療科の参考人は、全人的な医療を提供する医師の育成を目指す新医師臨床研修制度に一定の理解を示した。ただ、産婦人科、小児科などは別立ての研修方式を採用する必要性を指摘するなど、診療科の特殊性に応じた研修体制を求める声もあがった。

 信州大医学部産科婦人科学講座の小西郁生教授は、新医師臨床研修制度導入のデメリットとして、<1>専門性が定まらず、モチベーションを保てない<2>一般臨床研修病院だけで研修し、一人前になった錯覚を起こす研修医の存在を指摘。信州大では、モチベーションの低下した研修医に対し、メンタルヘルスケアを充実することで対応している。 また一人前になったと錯覚する研修医については、若手医師全体のレベル低下が危惧されるとし、「厚労省と大学病院が一緒になって、若手医師の研修システムをつくる時期が到来したのではないか」と述べた。

  新潟大大学院医歯学総合研究科の内山聖氏(小児科教授、医学部長)も、新制度の今後の課題について、「地域での小児科医確保が難しい状況。そのため、ある程度、人口、医師数を考えて、地域の定員を設けてもらいたい」と要請した。さらに、小児科、産科などは他科にまたがる“何でもやれる医師”は不要とし、「別立ての研修制度が必要ではないか」と述べた。

  大宮厚生病院の小島卓也副院長は、新制度が精神科に与えた影響について、「約2割の研修医が、うつ病などの精神問題を経験しており、精神科指導医の支援が有用だった」と振り返った。

  ヒアリング終了後に国立病院機構の矢崎義雄理事長は、新制度下での研修医について、「売り手市場のため学生気分が抜けず、医学部8年制のような傾向がある。定員を一度に下げる訳にはいかないが、全体として考え直していかなければならない」と提案した。

(Japan Medicine、2007年5月28日)

****** Online Med、2007年5月25日

新医師臨床研修 産科・小児科・精神科からヒアリング、制度は維持すべきの意見 厚労省部会

小児科・産科に特化したローテーションなど注文

 厚生労働省・医道審議会の医師分科会医師臨床研修部会(部会長:斎藤英彦:名古屋セントラル病院長)は5月25日、産婦人科、小児科、精神科の各学会から臨床研修制度に対する考え方をヒアリング。各学会とも、修正すべき点を指摘しながらも、臨床研修制度そのものは維持すべきものとの考えを示しました。

 産婦人科では信州大学医学部産科婦人科学講座教授で付属病院卒後臨床研修センター長の小西氏が、新制度の前には毎年350人程度いた産婦人科学会に加入して研修に入る医師数が、新制度の導入にともなって2年間はゼロとなり、700人程度が入ってこなくなったことが現在の産婦人科医師の不足の大きな要因としました。
 また、新臨床研修制度になって産婦人科研修に入る医師数は300人以下となり以前に比べて2割減少していることも示しました。
 こうした状況に「厚生労働省をうらんでいる」としましたが、臨床研修制度自体はプライマリケア修得の面で評価でき、産婦人科医師の処遇問題を浮き彫りにした面もあるとして、維持すべきものとしました。
 修正すべき点としては、新制度の欠点とされる研修医のモチベーションの低下に対し、「将来の専門性を明確にしたうえでの初期研修」とすることなど、スーパーローテーション研修の充実を求めました。

 小児科では、新潟大学医学部小児科教授で医学部長の内山氏が、新潟県は医学部入学者数の割合が少なく、そのため医師数も少なくなっている中で、小児科医確保策として、県内の病院について、地域ごとの小児科医の集中化を積極的に進めていることを紹介、臨床研修制度については、マッチングに地域性を導入すること、小児科と産科の専攻を希望する研修医については両科を中心とした研修方式とすることを求めました。
 小児科と産科では、「他科にまたがる何でもやれる医師は不要」とし、小児科であれば皮膚科でアトピーを研修したり耳鼻咽喉科を研修することが有用になるとしました。

 精神科では、大宮厚生病院副院長で精神科7者懇談会委員長の小島氏が、研修医に対するアンケート調査の結果、87人中18人、約2割が「最近1年間に1週間以上うつ状態になったことがある」と回答したことを明らかにしました。一般企業の新入社員の状況と比べて多いとし、原因は力のない指導医など研修カリキュラムの問題が影響しているとしました。ただ、研修の中での精神科の指導医によるサポートが有用に働いたことも指摘しました。
 精神科研修では、研修期間1ヵ月が多い中で、2ヵ月以上になると満足度・有用度・参加度が高くなると指摘しました。

(Online Med、2007年5月25日)