ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

医師派遣は民間頼み 道内に19社 常勤希望は都市集中 (北海道新聞)

2007年04月13日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

かつては、医学部を卒業後、多くの新人医師達はまず出身大学の医局に所属し、医局人事で地域の病院を数年間づつ回っていろいろな臨床経験を積み、大学に戻った時に研究に従事して博士号の取得を目指すというコースが一般的でした。

当時は、まず最初はどこかの大学医局に所属しないことには、まともな研修もできませんでしたし、将来的にも医局を介さないと希望の病院に就職することはなかなか難しい状況にありました。

しかし、新臨床研修制度が導入されて、医学部卒業後に医師達がたどるコースが非常に大きく変化しました。医局を介さなくても、各自の自由選択で希望する病院で初期研修を受けられる制度となって、従来と比べて大学を最初の研修先に選ぶ者の割合が減少しました。

2年間で主要な診療科を回る初期研修が終了すると、将来の自分の専門診療科を決めて後期研修を開始することになります。従来は、専門研修は医局人事で数年間ごとに大学の関連病院を回って臨床経験を積んでいくコースが一般的でしたが、最近は、専門研修(後期研修)を行う病院も、研修医自身が自分の好みで自由に選択できるようになり、大学を後期研修先に選ぶ者の割合が従来と比べて減少しました。

研修医本人が自由に研修病院を選択できるということになれば、多くの病院を比較検討し、その中で自分にとって条件の一番いい病院を選ぶのは当然です。十分に満足のできる研修ができ、医師のQOLもよくて、待遇面でも満足できる、というような諸条件を満たしてなければ、あえて自分の研修する病院には選ばないと思います。後期臨床研修病院として研修医達から人気があるのは、やはり、都会の有名病院のようです。地方の病院を選ぶ者はまだまだ少数派です。

今後、地方の病院がこの世に生き残っていくためには、非常に厳しい研修医獲得競争に勝ち残っていく必要があり、研修医に選ばれるための諸条件を満たすことが非常に重要だと思います。

参考:大学病院も産科医不足 (朝日新聞)

****** 北海道新聞、2007年4月3日

医師派遣は民間頼み 道内に19社 常勤希望は都市集中

 大学病院に頼ってきた地域病院の医師確保策が、大学側の医師不足で限界を露呈する中、民間の医師紹介業が好調だ。登録する医師の数は急増、業者を介して独自に医師を探す公的病院も増えている。ただ、圧倒的な売り手市場の医師は、都市部志向も強く、「民間頼みでは、へき地に医師が集まらない」と嘆く声も聞こえてくる。(報道本部 内本智子)

 一九九九年に札幌で創業し、全国展開する大手医師紹介業、キャリアブレイン(東京)は二○○六年度、過疎地を含む道内の病院に対し、医師三十二人の就職を仲介した。前年度実績を七人上回り、登録医師数は現在、全国で約四千人と、前年度より千人も増えた。

 過去、医師派遣は大学病院の各診療科の教授を頂点とする医局が握ったが、○四年度の臨床研修制度導入などで研修医らの医局離れが加速。キャリアブレインの吉岡政晴社長は、「医師は医局へのしがらみがなくなり、インターネット上での転職先探しが一般的になった」と説明する。

 同社の場合、就職決定一件につき、その医師の年収の25%程度を報酬として病院から受け取るシステムだ。それでも医師不足に悩む地方病院からの需要は多い。

 「民間医局」とも呼ばれる医師紹介業界は、新規参入も盛んだ。北海道労働局によると、○六年度、新たに三社が加わり、現在道内では十九社がしのぎを削る。

 これに対し、道と北大、札医大、旭医大の各大学病院などが、自治体病院への医師派遣を横断的に調整する道医療対策協議会(医対協)は、○七年度に向けた医師派遣要請四十人のうち、十五人しか対応できなかった。

 道などでつくる北海道地域医療振興財団の医師バンクも医師の登録数は減少。就職が決まった件数も○五年度の三十一人から、○六年度(二月末現在)は二十人に落ち込んだ。全国から登録医師を集める民間の医師紹介業者とは、人材情報に圧倒的な差がついている。

 こうした医師の労働市場の変化に、病院側も独自に動きだした。石狩市の民間病院・石狩病院は、五業者に登録し、今年三月には道外から常勤医の採用にこぎ着けた。同財団の医師バンクからは、従来は一人も紹介されなかった。担当者は「機動力のある民間業者は頼りになる」と断言する。

 医師の「超売り手市場」にあって、選ばれる立場の病院にも魅力向上の努力が求められる。石狩病院の担当者は、「二年前は誰でもいいからと探したがうまくいかなかった。人工透析など重点分野を明確にし、アピールするようになって、採用に結びついた」と話す。

 ただ都市部から遠く、設備投資などに費用をかけられない地方病院は、民間業者を頼っても、医師確保が難しい状況に大きな変化はみられない。道東の過疎地にある国民健康保険病院の担当者は、「民間の医師バンクで採用できるのは非常勤だけ。常勤は都市部希望者ばかりで難しい」とため息をついている。

(北海道新聞、2007年4月3日)

****** 東奥日報、2007年4月12日

産婦人科小児科の入局ゼロ/弘大

 弘前大学医学部の二〇〇七年度後期研修希望者(入局者)は二十五人で、前年度より九人減ったことが分かった。全国的に医師不足が深刻な産科婦人科は前年度に続き入局者ゼロ、小児科は初めて入局者がなかった。関係者は「若手医師が大学に残らないと地域医療は崩壊してしまう」と危機感を強くしている。

 後期研修は、初期研修を終えた若手医師らが専門技術を身に付けるプログラム。研修先の大学や、選択した診療科が、医師の将来の進路に大きく影響する。

 二〇〇七年度、弘前大での後期研修を希望したのは二十五人、前年度の三十四人に比べ九人減となった。二月末の希望調査では三十二人が同大学を希望していたが、その後、七人が他の病院などに変更した。

 新規入局者二十五人のうち、四月から実際に弘大医学部勤務となるのが十八人。他の七人は、関連病院などに勤務する。

 診療科別では、第一外科、耳鼻咽喉(いんこう)科など十二診療科で入局者がいなかった。産科婦人科は前年度に引き続き入局ゼロ。

 卒後臨床研修制度スタートに伴い全国的に入局者がいなかった二〇〇四-〇五年度を含めると四年連続で入局者がなかった。小児科は初めて入局者なし。

 入局者が多かったのは、第二外科の六人。第一内科、第二内科、整形外科が各三人となったほかは、各科一-二人と軒並み苦戦している。県内で後期研修プログラムを持つ十病院の中でも、指導体制、医療設備がそろっている弘大だけに、今回の結果について関係者は深刻に受け止めている。

(東奥日報、2007年4月12日)

****** 東奥日報、2007年4月4日

試験不合格などで研修医12人辞退

 二〇〇七年度、県内の臨床研修指定病院で初期臨床研修を予定していた医学部卒業者(予定者)六十四人のうち、十人が医師国家試験に不合格、二人が留年などで研修を辞退し、四月からの県内採用者が予定より十二人少ない五十二人にとどまったことが、県の調べで分かった。特に弘前大学医学部付属病院は研修予定者九人のうち三人が国家試験不合格。医師不足の本県の医療を担う貴重な人材だけに関係者は、肩を落としつつ「来年度こそ、試験に合格して本県で研修してもらいたい」と望みをかけている。

 県内十二の臨床研修指定病院の研修医募集人員は百十八人。〇七年度、病院と医大生の組み合わせをコンピューターで決める「マッチング」で六十一人、マッチング以外で三人、計六十四人が県内で研修を受ける予定だった。

 しかし三月二十九日発表になった医師国家試験で、近年では最も多い十人が不合格となった。また、留年などで二人が研修を辞退。結局、予定より十二人少なく、昨年より二人多い五十二人(県出身三十三人、他県出身十九人)が本年度から県内で初期研修を受けることになった。五十二人のうち弘大卒は二十九人(55.8%)にとどまった。

 病院別の研修医数は、八戸市民病院が十五人で最多。弘大のほか、東北大、琉球大、鹿児島大、東海大など全国から研修医を集めた。続いて県立中央病院が十二人。弘大病院は三人が国家試験不合格となり、昨年の七人より一人少ない六人となった。また、研修医八人を予定していた健生病院(弘前市)は三人不合格となり、採用者は五人。

 八戸赤十字病院は不合格者一、辞退者一で採用は一人。青森労災病院(八戸市)は辞退者一人が出たので採用なしとなった。

 今回の結果について健生病院の担当者は「正直、がっかり。来年度も受けてもらうように働きかけたい」、青森労災病院は「せっかくマッチングで一人確保したのに残念」と話した。

(東奥日報、2007年4月4日)

****** 毎日新聞、2007年4月4日

地方医大生:地元に残った医師は約3割…毎日新聞調査

 医師不足が深刻な10県にある大学医学部の04、05年の卒業生で、地元の病院に残った医師は約3割にとどまったことが毎日新聞の調べで分かった。各医学部には県内高校出身者が平均で約2割しかおらず、多くを占める県外高校出身者の大半が県外の病院へ流出しているためだ。国は医師確保対策の柱として、この10県の大学医学部に対し、08年度から最大10人の定員増を認めているが、各県の担当者からは「県内高校出身者が少ない中で、どれほど効果があるのか」と疑問の声が上がっている。

 調査は3~4月、定員増を認められた青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重の10県にある大学医学部を対象に実施。05、06年度入学者の出身内訳は全県から、04、05年度卒業生の進路状況は5県から回答があった。

 卒業後の進路については、回答のあった5校の平均で、04年度は35%、05年度は33%しか県内に残っていない。出身高校別で見ると、県内出身者は約7割が県内に残るが、県外出身者は約2割しか残らなかった。

 入学者のうち県内高校出身者が占める割合は10校平均で、05年度が22%、06年度が25%。福島県立医大が06年度に40%となった以外は、2割前後の大学が大半を占めた。山形大と信州大は2年連続で2割未満だった。

 弘前大医学部(青森県弘前市)では、県内高校出身者が県内に残る割合は、04年度が74%、05年度が77%。一方で、県外高校出身者は、04年度17%、05年度12%と非常に低い。佐藤敬医学部長は「他県から入ってくる学生は地元に帰る傾向が強い。県外出身の人も県内に残ってくれればありがたいが、今のところ地元出身者に頼るのが現状だ」と話している。【田村彰子】

(毎日新聞、2007年4月4日)