紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

衝撃のデビュー作…ウィントン・マルサリス~マルサリスの肖像

2008-02-19 22:08:18 | ジャズ・トランペット
正しく衝撃が走る!
若干二十歳の若者が、「ハンコック・トリオ」をバックに従えて、ストレイト・アヘッドなトランペットを吹き切る…これこそ「クリフォード・ブラウン」以来の天才的なトランペッターの登場である。

貴方も、「マルサリス」の登場を見て(聴いて)下さい。

アルバムタイトル…マルサリスの肖像

パーソネル…リーダー;ウィントン・マルサリス(tp)
      ブランフォード・マルサリス(ts、ss)①~⑤
      ハービー・ハンコック(p)③、⑤、⑥
      ロン・カーター(b)③~⑥
      トニー・ウィリアムス(ds)③~⑥
      ケニー・カークランド(p)①、②、⑦
      クラレンス・シー(b)①、②
      ジェフ・ワッツ(ds)①、②、⑦
      チャールズ・ファンブロウ(b)⑦

曲目…1.ファザー・タイム、2.アイル・ビー・ゼア・ホエン・ザ・タイム・イズ・ライト、3.RJ、4.ヘジテイション、5.シスター・シェリル、6.フー・キャン・アイ・ターン・トゥ(ホエン・ノーバディ・ニーズ・ミー)、7.トワイライト

1981年7月、東京にて録音③~⑥、1981年8月NYにて録音④、⑦

原盤…CBS  発売…ソニー・ミュージック・エンターテインメント
CD番号…SRCS 9173

演奏について…オープニング曲「ファザー・タイム」…「ケニー・カークランド」の尖ったタッチの硬質ピアノ、「ジェフ・ワッツ」の乾いたクールさが魅力のドラミングに導かれて、「ウィントン・マルサリス」が、20歳とは思えない、テクニックとエモーションで、ハイ・センスのアドリブを吹き切ります。
中盤からは、兄貴の「ブランフォード・マルサリス」が、幾分渋めの音質で、テナーでブロウして、弟をアシストします。
ここからは、演奏もかなり高速化してきて、「ワッツ」が煽り、2ホーンの兄弟が受けて立ちます。
そしてユニゾン調のアーバナイズされた兄弟デュオで曲を締め括ります。

2曲目「アイル・ビー・ゼア~」…曲は短いが、非常に幻想的で、桃源郷の様な曲(サウンド)で、「ウィントン・マルサリス」のオープン・トランペットが、夜空を彩るオーロラみたいに、心を誘う。

3曲目「RJ」…「ウィントン・マルサリス」のミュートを付けていながら、攻撃的な奏法は、まるで全盛期の「マイルス・デイヴィス」の化身の様です。
その後、「ブランフォード」が、ソプラノ・サックスで、煌びやかで軽やかな、天空を駆けるペガサスの如く疾走を始める。
しかし、曲を引っ張る最大のエンジン役は、やはり「トニー・ウィリアムス」ですね。
超絶ドラミングが、えぐいです。

4曲目「ヘジテイション」…「ロン・カーター」と「トニー・ウィリアムス」のヘヴィーなリズム・セクションに推進されて、「ウィントン」がオープン・トランペットで、そして「ブランフォード」がテナー・サックスで、交互に掛け合いをしながら、クールに…且つ大胆にアドリブを吹いて行く。
「カーター」、「トニー」とも非常に短調なリズムを刻むんですが、逆にそこがカッコイイんです。
リズム・セクションはパワーとスピードが有れば、他はあまり必要では無い…シンプル・イズ・ベストが良いですねぇ。

5曲目「シスター・シェリル」…ネオ・ラテン調と言うべき、変則的なリズムだが、「ハンコック」の魅惑的なフレーズでの飾り付けと、「ウィントン・マルサリス」の良く歌うフレーズが、とにかく心地良いサウンドを作り上げる。
「ロン・カーター」が、ぶんぶん言わせるベース演奏が、重厚さを纏って、実に良い仕事をしていますぜい。
エンディングに近づいてから、「ブランフォード」も、とても情緒溢れるソプラノ・サックスで決めるのも味わい深くてgoodです。
個人的には、このアルバムで、一番お気に入りのトラックです。
スーパー・ミュージシャンが描く、絵画の様な極上サウンドです。

6曲目「フー・キャン・アイ~」…「ウィントン」が若いくせに、また一つ引き出しを開けて、ツールを取り出す。
そう、「アート・ファーマー」を彷彿させる、ほのぼの系…いや、幻想的なトーンで、甘い空間を演出する演奏をやってくれるんです。
勿論、「ハンコック」がサイドで、アシストする抜群のピアノ・アドリブも冴えに冴えて…「カーター」「トニー」と、「マイルス・バンド」の勇士達の完璧なバック演奏も加味されて…とにかく、とっても気持ち良いんです。
最高です!!

ラストの「トワイライト」…かなり、モード演奏の極みの様な演奏で、「ウィントン」が、華麗に…そしてインテリジェンスにオープン・トランペットを決めます。
「ファンブロウ」の硬派なベース・プレイと、クールに推進して行く「ワッツ」のカッコイイ、ドラミングも、とにかく行けてます。
中間からは、「カークランド」が、高音域をたっぷり使って、モード・ピアニズム全開のアドリブをバッチリ決ます。
ラストを飾るのに相応しい、ハイ・センスな演奏の一曲です。

神童?の華麗なるデビュー作品を堪能して下さい。