紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

ジャケットも演奏もミステリー…ミステリオーソ~セロニアス・モンク

2008-02-03 22:10:03 | ジャズ・ピアノ・コンボ
このジャケットの絵…すご~く興味を惹きますよね。
実は、前衛的な画家、「キリコ」が描いた「預言者」と言うタイトルの抽象画なんです。
この不可思議で、アヴァンギャルドな絵と変わらないぐらい、ここでの「モンク」カルテットの演奏も、不可思議な魅力に満ち溢れている、「ファイヴ・スポット」でのライヴ演奏です。

そしてリーダー、「セロニアス・モンク」の手足として音楽を理解し、豪快にブロウして、演奏をグイグイと推進して行くのが、テナー・サックスの「ジョニー・グリフィン」なんです。

今宵は「モンク」の不思議ワールドへ行ってみましょう。

アルバムタイトル…ミステリオーソ

パーソネル…リーダー;セロニアス・モンク(p)
      ジョニー・グリフィン(ts)
      アーマッド・アブダル・マリク(b)
      ロイ・ヘインズ(ds)

曲目…1.ナッティ、2.ブルース・ファイヴ・スポット、3.レッツ・クール・ワン、4.イン・ウォークト・バド、5.ジャスト・ア・ジゴロ、6.ミステリオーソ、7.ラウンド・ミッドナイト※、8.エヴィデンス※

1958年8月7日…1~6曲目、8曲目、1958年7月9日…7曲目 NYCファイヴ・スポットにてライヴ録音

原盤…RIVERSIDE RLP-12-279  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23587

演奏について…4曲目「イン・ウォークト・バド」…名前通り、「バド・パウエル」に敬意を表した曲だと思うが、演奏自体は「バド」的な訳では勿論無く、「モンク」の描く世界を強烈に表現していて、又、各人が魅せるソロ・パートも用意されていて、11分超えと言う曲の長さに恥じない、そして飽きさせない、聴き応え充分な1曲になっている。
テーマ・メロディからして、超「モンク」的で、不協和音的でありながら、微笑ましくもあり、なじみ易い感覚もある。
このテーマの後、「グリフィン」が、とてもメロディアス且つ豪快なアドリブを演じて、自らも鼓舞しながら、曲をだんだんエキサイティグに押し上げて行く。
それから、尚一層、演奏陣を煽るのが、ドラムスの「ヘインズ」なんです。
「ヘインズ」は、まじめに人を乗せるのが上手く、演奏陣をファイトさせるのが、得意なミュージシャンだけに、ここでも素晴らしい心を高揚させるドラミングがgoodです。
およそこの曲の演奏が始まってから6分以上、「モンク」は静観していて演奏に参加していないのだが、満を持して参加すると…「モンク」節全開で、とにかく知的に…アドリブ・ソロを決め捲ります。
終盤では、「アブダル・マリク」のカッコイイ、ベース・ソロ演奏を演ってくれて痺れちゃいますし、「ヘインズ」のドラム・ソロも、流石の一言で、全員のソロが堪能できる、アルバム・ピカ1の演奏&曲ですよ。

6曲目、タイトル曲の「ミステリオーソ」…序奏から、ず~っと、約8分間に渡り、「グリフィン」が、ヴォリューム感タップリで、テナーを良く歌わせ、そしてかなりエモーショナルなアドリブ演奏を、長時間に渡り決める所からして、すごいなと思わせる。
「グリフィン」のすごい所は、「コルトレーン」や「ドルフィー」等の様に、バーサクやぶっ飛び、或いは、絶叫無しで、メロディアスなアドリブを長く続けられる事である。
「リトル・ジャイアント」は、パワフルさだけではなく、とても良く歌わせる事ができるテナー奏者なのである。
後半は、もう、完全に「モンク」ワールドの中枢に居る演奏である。
「モンク」のテーマ・メロディにユニゾンで合わせる「グリフィン」とのデュエットは、不可思議でいながらも、もはや美しささえ感じる程です。

2曲目「ブルース・ファイヴ・スポット」…このライヴ会場をテーマに、いかにも即興でも名曲を作りあげる、天才「モンク」の真骨頂。
テーマはすごくシンプルながら、「グリフィン」、「モンク」、「アブダル・マリク」、「ヘインズ」と続くソロ演奏は、それぞれ自己主張が有るのは当然なんですが、全員の演奏自体に、素晴らしい切れとコクが有って(高級なビールか?)まじめに酔わされそうになります。
テーマ…コード・チェンジ…アドリブ・ソロ…テーマに戻ると言う、シンプル・イズ・ベストなチューンです。

3曲目「レッツ・クール・ワン」…ユニゾンでテーマが告げられた後、この曲では、いきなり「グリフィン」が限定解除で、激しく、パワフルにテナー・サックスを吹き通す。
ここでの「グリフィン」の演奏には、シャウトやハイ・ノートも多少使用してはいますが、やはり基本的にテナーを歌わせ、アドリブ演奏の美しさをたっぷりと抽出し、気合も目一杯ぶち込んでいる、極上の演奏です。
受ける「モンク」は、シングル・トーンを多用し、高音域を有効に使い、とてもハイ・センスな演奏をしてくれて…「グリフィン」の熱演に花を副えます。
いかにも「モンク」的なんですが、とても美しい演奏です。

オープニング曲「ナッティ」…最初のテーマを聴くだけで、もう「モンク」の世界へようこそってな感じで、不思議空間へ旅立ちます。
「モンク」と「グリフィン」のやりとりが、ライヴ演奏&録音と思えない程、ピッタリ、マッチしてます。

7曲目「ラウンド・ミッドナイト」と8曲目「エヴィデンス」は、CD化に際して追加されたトラックなんですが…やはり「モンク」最大のヒット曲にして、モダン・ジャズ史上屈指の名曲である「ラウンド・ミッドナイト」を取り上げましょう。
「グリフィン」が割と渋めに、低音を用いたテーマ・メロディを吹いて曲が始まり、それを受けての「モンク」の演奏なんですが…とてもまともな感じで、「モンク」臭さが薄いんですねぇ。
でも、私は嫌いじゃないです。
こう言うアッサリした「モンク」も良いんじゃないの?
薄いと言っても「モンク」節は、チョイ見せはしてるし、「グリフィン」を立たせたサポート演奏に終始しているのも、賢者「モンク」の意図が有ったんでしょう。
「ラウンド・ミッドナイト」を「モンク」抜きで演っている、多くの演奏(録音)に近い感じなんです。

ジョー・ジョーンズ・トリオ続き

2008-02-02 14:11:17 | ジャズ・コンボ
数日、ご無沙汰しておりました。
前回からの続き、「ジョー・ジョーンズ」トリオのアルバム、諸作品から行きましょう。

1曲目「スイート・ジョージア・ブラウン」…スティック一発で、「ジョー・ジョーンズ」の、大人のおとぎの世界へ入ります。
この、お洒落なドラム演奏…にプラスして、パーカッションとして使用する、ハンドリングでの演奏…いやー、良いですねぇ。
そして、その後は…「レイ・ブライアント」の転がるシングル・トーンで、魅惑のピアノ・トリオ演奏が堪能できます。

2曲目「マイ・ブルー・ヘヴン」…「レイ・ブライント」が、硬質のピアノ音質で、飛び跳ねる様に仕上げる演奏。
彼の跳ねを、後押しする様に「ジョーンズ」のドラミングも跳ねてます。

3曲目「ジャイアント・アット・ファイヴ」…「ジョーンズ」の掛け声一発で、始まるジャイブ・トラック。
このジャングル的な感覚…とても良いんですよね~。
中々、大先生「デューク・エリントン」以外に、こう言うサウンド・曲を選択して、アルバムに入れてくれるミュージシャンがいないので、「ジョーンズ」のストライク・ゾーンとは言え、この選曲センスに感謝したいですね。
とにかく、心地良い、ちょい悪4ビートを楽しんで下さい。

4曲目「グリーンスリーブス」…3曲目でワイルドな感じの曲から、一転して、原曲はクラシックのバラード曲の演奏。
序奏が終わると、ワルツのリズムで、可憐に可愛らしく…微笑ましいピアノ・トリオ演奏がなされる。
こう言う曲を弾かせたら、「レイ・ブライアント」は、ジャズ界随一の名人だ!

5曲目「ホエン・ユアー・ラヴ・ハズ・ゴーン」…「ジョー・ジョーンズ」のセンシティブなブラッシュ・ワークと、渋~い「トミー・ブライアント」のベース演奏が心地良い、規範的なピアノ・トリオ・ミュージック。
ここでの「レイ・ブライアント」の演奏も素晴らしいが、この曲(演奏)については、「レッド・ガーランド」調で、本家「ガーランド」が演った方が、もっと良かったかも?(笑)

6曲目「フィラデルフィア・バウンド」…超高速8ビートで、快速に飛ばす「ジョーンズ・トリオ」。
「ジョーンズ」は、テクニック抜群で、高速で有りながらも、ブラシ演奏で歌わせ、「トミー・ブライアント」のベースも高速で歌う。
このメンバー&アルバム、渋いと言いつつも、この様なスゴテク演奏を聴くと、結構派手な演奏&アルバムに感じるなぁ。

7曲目「クローズ・ユア・アイズ」…ハンド・ワークで奏でる「ジョーンズ」のドラムは、人の温もりまで、音に感じられて…とても温かいサウンドに仕上げている。
「ブライアント」兄弟も、優しい演奏に従事していて、ほのぼのとした寛ぎのピアノ・トリオ演奏は…いつまでも聴いていたい気にさせる、魔力を持っている。

8曲目「アイ・ガット・リズムⅠ」、「アイ・ガット~Ⅱ」…同曲だが、演奏アプローチ自体が、かなり異なる。
8曲目のⅠの方が、やや硬い感じの演奏で、重厚なイメージと、遊び心のテイストが加味されていて面白さも有るが、9曲目の方が、もっと飛んで、跳ねて、より一層メンバーがこの曲をいじって遊んでいる節が強い。
個性を重視するなら、9曲目の方がベターな演奏でしょうか?

10曲目「エンブレイサブル・ユー」…超ベーシックなスロー・テンポで綴るバラード演奏を、ハイ・センスなピアノ・トリオで贈るベスト・トラック。
「レイ・ブライアント」…何て美しく、可憐で…一寸お上品で…まじに良いです。

11曲目「ビバップ・アイリッシュマン」…終盤に来て、もう一度「ジョー・ジョーンズ」の世界へようこそ的な演奏に戻った。
楽しく遊ぶドラム演奏で、「ジョーンズ」が、縦横無尽に駆け巡ります。

ラスト「リトル・スージー」…この曲もチョイ、ジャングル調で、アルバム・ラストにまたこう言った曲を入れて、スタート演奏に帰依すると言う手法が心憎い。
最初と最後のトータル・バランスを考えて、色々な演奏をしているにも拘らず、非常に統一感の取れたコンセプトのアルバムに仕上がったのは、偏に曲順や曲調、まで気を使ったからでしょう。
この辺の気配りが出来るところが、「ジョーンズ」の人柄の良さなんでしょうね。

渋いって言ったけど、スゴテク満載だし、アルバム・コンセプトも優れているので、聴き応えある「ピアノ・トリオ」演奏ですよ。
☆アルバムリーダーはドラムスですけどね(笑顔)