紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

考えるな!感じろ!!モノホンのフリー・ジャズ…ユニット・ストラクチャーズ~セシル・テイラー

2007-12-15 09:42:10 | ジャズ・ピアノ・コンボ
皆様、お早うございます。

このブログ立ち上げから、来月で1年になると言う事から、今日から、いよいよフリー・ジャズの中枢世界へ、…つまり本丸に、大気圏突入と行きましょうか。

その第一段として、革新的・前衛的なジャズ・ピアニスト、「セシル・テイラー」の真髄とも言うべき、歴史的な傑作、「ユニット・ストラクチャーズ」を紹介させて頂きます。

フリー・ジャズ…それも7人編成(セプテット)でのコンボ…聴いた事の無い皆様の想像では、五月蝿い音楽なのか?と考えると思いますが、(曲のよりけりも有りますが)実はそんなに五月蝿く有りません。
いや、むしろピアニストの「テイラー」が作曲しているだけに、「美しさ」さえも感じられます。
私の今迄皆様にお薦めしていた、所謂メロディアスなジャズとは全く異なりますが、楽器の一つ一つの魅力…アコースティックなサウンドの心地良さと、音の美しさは充分に感じられて、決して聴き苦しい音楽では有りません。
メロディではなく、めくるめくアコースティック楽器の「万華鏡サウンド」を堪能して頂ければ良いと思います。
正しく、考えるな!感じろ!!で聴いて下さい。

アルバムタイトル…ユニット・ストラクチャーズ

パーソネル…リーダー;セシル・テイラー(p)
      エディ・ゲイルJr.(tp)
      ケン・マッキンタイヤ(as、oboe、b-cl)
      ジミー・ライオンズ(as)
      ヘンリー・グライムス(b)
      アラン・シルヴァ(b)
      アンドリュー・シリル(ds)

曲目…1.ステップス、2.エンター・イヴニング、3.ユニット・ストラクチャー~アズ・オブ・ア・ナウ・~セクション、4.テイルズ

1966年5月19日

原盤…BLUE NOTE BST 84237  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4237

演奏について…まず、大まかなカテゴリー分けをさせて頂くと、「動の奇数曲」、「静の偶数曲」として考えれば、分り易いだろう。
つまり、1曲目「ステップス」と、3曲目「ユニット・ストラクチャー~」の2曲が、ホーン(リード)奏者を前面に押出した、アグレッシブな曲&演奏だと位置づけるとすると、2曲目「エンター・イヴニング」と、4曲目「テイルズ」は、リーダー;ピアニスト、「セシル・テイラー」のピアノをメインに据えた、クラシックの現代曲風の、比較的静かな曲&演奏と言えるでしょう。

勿論、このアルバム随一の聴き物は、アルバム・テーマ曲であり、一番長大な作品、「ユニット・ストラクチャ-ズ~」に他なりませんが、私的には皆様には、比較的聴き易い、偶数曲から聴く事をお薦め致します。

まず、2曲目「エンター・イヴニング」…ホーン奏者の不安げなメロディと、「テイラー」の不協和音的なピアノと、ベース「シルヴァ」の悲しげなボウイングによって序奏が始まる。
ここでのリード奏者の肝は、オーボエを吹く「マッキンタイヤ」と、ミュートで抑止した美学を貫く「ゲイルJr.」でしょう。
特に「ゲイルJr.」は不安な子羊か子馬が鳴くように…夕暮れの寂しさと怖さを表現しているかの様で…素晴らしいですね。
「テイラー」は低音域を中心に、ブロック・コードで不安感を表現しています。
終盤で「ライオンズ」が不安を和らげてくれる様な…これは子馬の親?の囁きかな?、優しく包み込んでくれます。
そして「テイラー」のピアノが激しくなって来て…すっかり夜になったのでしょうか?馬たちは眠りにつくのかなぁ。
まぁ、馬(羊)の事など、どこにも書いては有りませんので、これは私がこの曲を聴いて「感じた」脳裏に浮かんだ情景に過ぎませんので…悪しからず。。。

3曲目いよいよメイン・ディッシュの「ユニット・ストラクチャーズ~」ですが…序奏はとても静かな入りで始まります。
「ライオンズ」のアルト・サックスと「マッキンタイヤ」のバス・クラがとても美しい序奏を奏でてくれるのですが…この後、「ゲイルJr.」のトランペットが登場してから、演奏に激しさが加わってくる。
この曲を、いや、アルバム全体を分厚いサウンドで包み込み、それでいて美しさを保持しているのは、偏にツイン・ベース奏者を置いた「テイラー」の読みの素晴らしさではないでしょうか?
この曲でも「グライムス」と「シルヴァ」の二人が…一人はボウイングで弦楽器の美しいサウンドをキープしてくれて、これが聴き易さの要因に繋がっているようです。
また、曲のフレッシュさをエヴァー・グリーン的に保てるのは、「テイラー」の前衛的なピアノ演奏に加えて、見事な空間演出で、コンボのメンバーをアシストする「シリル」のドラム演奏に他なりません。
「シリル」…過激で有りながら、皆を煽りながら、少し離れて客観的に自己を見つめられる己を持っています。
中盤から終盤にかけて曲は益々アグレッシブに展開していきますが、「マッキンタイヤ」のバス・クラのアクセント的な使い方と、「ライオンズ」とのアルト・サックスとの絡み合いも良い仕事になっています。
そして、「テイラー」は終始、過激にピアノをかき鳴らし、打ち付ける様に、まるで打楽器そのもののピアノを弾きます。
原始に帰った様な、ポリリズム、バーバリズムの原点回帰のピアノ演奏です。
やはり…流石「テイラー」…バンド・リーダーとして皆を緊張感バシバシに縛りつけ、妥協を許さず、乾坤一擲にピアノを打ち続けて…狂った「ラフマニノフ」か「スクリャビン」が憑依して、一心不乱に(ピアノ)を弾いている様です。

4曲目「テイルズ」…この曲はホーン・レスで、「テイラー」の前衛的なピアノ演奏を、ドラムの「シリル」が、ブラシ演奏をメインにして、静かに美しく飾り付けてくれます。
この曲は完璧にクラシックの現代曲、そのものと言って良いでしょう。
それぐらい、アコースティックなピアノと言う楽器の音色を、純粋に味わう演奏であり、ベースとドラムとの「ネオ・ピアノ・トリオ」とも言える、美しいモダン・サウンドです。
しかも、とてもビューティフルなピアノ演奏で、不協和音を駆使しているのに、リリシズムさえ感じるんです。
こう言う演奏って普遍なんだろうなぁ。

オープニング・ナンバー「ステップス」…最初からリード奏者がやる気満々で、それ以上に燃えているのが、ドラムの「シリル」だろう。
「お前等全員束になってかかって来い」と言わんばかりに、ドラミングが冴え渡ります。
そして、大将もそれを受けて、「テイラー」が叩き込む様な鍵盤連打で、皆を更に煽ると、「ライオンズ」?がアルト・サックスで、「エリック・ドルフィー」の様に嘶き、シャウトをします。
ドラム、ピアノ、アルト・サックスが織り成す、コスミック・ワールドの様に、混然一体となった音の塊りが膨れ上がって…暴発しそうだ。
取分け終盤の「シリル」と「テイラー」のガチンコ・バトルは最高に聴き所で、ベーシスト二人だけが、ひっそりとサポーターに廻って、彼等を保護しますが、二人には廻りは見えて無く、素晴らしい殴り合い?が続くんです。
いやー、すごい。素晴らしい。これがフリー・ジャズだ。フリー・ジャズなんだぁ
このアルバムの中で、一番フレッシュでパワフルな曲&演奏はこれでしょう。
但し、初心者は一番最後に聴くべきだと思います。
そうした方が、曲が分り易いと思います。
でも…最初に感じろ!って言ったのは私ですね。(失礼)
最初から過激に感じるのも良さそうです。  


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3 コメント

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怖くて聴けてません・・・。 (加持顕)
2007-12-16 10:02:50
周辺情報は入手しておりますが、未だに怖くて聴けてません。オーネットは行けても、セシル・テイラーはねえ(笑)。

録音の時、ルディ・ヴァン・ゲルダーと音が被りを防ぐ『ついたて』設置を拒否した。とかのエピソードがあったと言う事を読んでからは、購入意欲がさらに遠ざかる、遠ざかる・・・・。
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加持さんノー・プロブレムですよ。 (えりっく$Φ)
2007-12-16 22:14:53
加持さん…このアルバム、決して怖くは有りません。
加持さん程の、優れたジャズ・スキルを持ってらっしゃる方なら、尚更(理解できて)聴けますよ。
まじめに五月蝿い、(聴き辛い)演奏・曲ではございませんので、安心してご賞味下さい。(笑)
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ドン・チェリーは買ってますが・・・。 (加持顕)
2007-12-17 08:49:26
おはようございます。
私程度のフリー・スキルで大丈夫でしょうか(笑)?(フリーはまったく無知)

ドン・チェリーのブルー・ノート盤はホイホイ買ってしまうんですが・・・・。
ちなみに『Complete Communion / Don Cherry(Blue Note 84226)』は持ってます。
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