紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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寺島先生曰く、悪魔が住むバラッド演奏…サージ・チャロフ~ボストン・ブロウ・アップ

2007-11-18 11:57:40 | ジャズ・(他)サックス
おはようございます。
今日はバリトンサックス奏者、「サージ・チャロフ」の代表的なアルバムを紹介しましょう。

タイトルに有ります様に、ジャズ評論家「寺島靖国」先生がCDの帯解説に、「悪魔が住むバラッド云々…」と、興味起こり捲りの文字が記載されており、当時私は購入した覚えが有ります。
PS…「寺島氏」のお薦めする「ジャズ購入本」の類の幾つかの書誌には、このアルバムは何度も推薦されていた事が、もう一つの購入理由でも有るんですが…。
いずれにせよ、「コルトレーン」等の奏でる、ハードな東海岸ジャズとは全く別物の白人、西海岸ジャズを堪能してみては如何でしょうか?

アルバムタイトル…ボストン・ブロウ・アップ

パーソネル…リーダー;サージ・チャロフ(bs)
      ハーブ・ポメロイ(tp)
      ブーツ・ムッスリ(as)
      レイ・サンティシ(p)
      エヴァレット・エヴァンス(b)
      ジミー・ジターノ(ds)

曲目…1.ボブ・ザ・ロビン、2.イエスタデイズ・ガーデニアズ、3.サージカル、4.ホワッツ・ニュー、5.マー・ドロス、6.ジュニア、7.ボディ・アンド・ソウル、8.キップ、9.ダイアンズ・メロディ、10.ユニゾン

1955年録音 MONO

原盤…Capitol  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5374

演奏について…「寺島先生」をよいしょする訳では無いが、やはり何と言ってもスタンダードのバラッド曲2曲が、群を抜いての聴き物です。

まず、4曲目の「ホワッツ・ニュー」…真に美しい「サンティシ」のピアノ序奏からいきなり曲に惹き込まれかと思うと、その後のチャロフの演奏が…感涙物です。
アドリブ・メロディの美しさも有るが、とにかくバリトン・サックスの織り成す音の世界その物(深い腹に染み渡る低音)が、正しく「桃源郷」の様な、或いは江戸時代の「花魁」の舞台の様な色香と幻惑の世界に聴く者を包み込むんです。

そして7曲めの「ボディ・アンド・ソウル」も最高ですよ。
低音を利かして重厚に吹くパートと、ピアニシモでは、あえて音をかすれさせて無音に近い部分を作り出し、そう、空気の振えの一つ一つが全て意味を持つ様に吹いて、フルトーンで吹き切る時の対比が、一種の物語に成っているんです。

8曲目「キップ」は、「ポメロイ」が煌びやかなトランペットを吹き、「ムッスリ」のアルト、「チャロフ」のバリトンと3つの楽器がマトリクス的だが、西海岸らしく軽やかに演奏されていて、お洒落ですね。

オープニング曲「ボブ・ザ・ロビン」…「ムッスリ」のオリジナルだが、イタリア系のミュージシャンらしく、とても陽気でノリノリのメロディで、ユニゾン的に3管が絡み合う編曲も、ライトでポップでセンスが良いですね。
中間でトランペットのソロを取る「ポメロイ」とピアニスト「サンティシ」のアドリブが好演ですね。

2曲目「イエスタデイズ・ガーデニアス」…ショウ・パブのダンス・ミュージック的な寛いだライトな曲だが、「チャロフ」のソロ演奏は流石ですし、「ポメロイ」もブリリアントな音で、「ムッスリ」も原曲を活かした丁寧なアドリブを二人が演ってくれるので、只のライトなナンバーに終わってはいない。

6曲目「ジュニア」…このユニゾンで演奏されているテーマ・メロディは好きだ。
何か「ゴルソン・ハーモニー」を彷彿させてくれて、「ムッスリ」は、あっけらかんとした曲が多いのだが、この曲には暗さと黒さが垣間見えて、私のストライク・ゾーンに来てますよ。
メンバー中では、この曲では「ムッスリ」、「チャロフ」の二人が出来が良いんですが、渋くガッツリとベース・ラインを刻む「エヴァンス」の職人気質も買いですね。

10曲目「ユニゾン」…文字通り、ユニゾンでのテーマが主ですが、ここでの「チャロフ」の早めのテンポにバッチリ乗せて、バリトンサックスを吹き切るテクには恐れ入ります。
「サンティシ」は相変わらず良い味を出して、良いソロを弾いてくれます。

3曲目「サージカル」、5曲目「マー・ドロス」とも…曲自体の魅力は正直無いのだけれども、いかにもこの時代らしく、各人のアドリブ・ソロ・パートの時に、どれだけ遊べるか?を競い合っているのが、微笑ましいです。

バラッド曲2曲と比べると、他の演奏は二枚も三枚も落ちるかも知れませんが、それでもこのアルバムは、買いでしょう。
それ程、この2曲はすごいんです。
&真っ赤なこのジャケットもセンス有ると思いませんか?


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