紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

ユーロピアン・ジャズとカリビアン・リズムの融合…新たなフュージョンだ!~バプティステ

2007-09-12 23:49:47 | ワールド・ミュージック
今日紹介のアルバムは…うぅーん、カテゴリーが超難しいなぁ。
UKから発売された、ユーロピアンジャズなのだが、正統的なジャズとは程遠い。
所謂、アシッド・ジャズの様な要素も多分にある。
ジャズなのか、ラテンなのか、フュージョンなのか?はたまた…???
結局、色々なエッセンスが混じり、主役「バプティステ」が多くのジャンルから、音楽を吸収して、影響を受けたアーティストと言う事で、ワールド・ミュージックに入れる事にしよう。

アルバムタイトル…neuriba

パーソネル…David JeanーBaptiste(b-cl、tenor sax)
      Julian Joseph(p、key)
      Daniel Berdichevsky(g)
      Ricardo dos Santos(b)
      Kenrick Rowe(ds)
      Richard Ajileye(perc)
      Rowland Sutherland(fl)
      Sandra Phenis(vocal)
      Orphy Robinson(vib)
                         他

曲目…1.Fortune Smeiles、2.9 Prospect Avenue、3.Mysti、4.Un Cuore in Inverno、5.The Legacy、6.~10. EuroーCarib Classicism Suite《Neuriba、Outcome、State、Egyptian Goddess、Future Pace》

原盤…CANDID 発売…ewe レコード
CD番号…EWBC-79204

演奏について…まず、冒頭で解説したが、とにかくセンス抜群の様々な音楽が渾然一体となって、ネオ・フュージョン(ネオ・ジャズ)が繰り広げられる。
「バプティステ」は、クラシックの素養もあり、演奏技術は申し分無い。
バス・クラでもテナーサックスでも、一級の演奏技術を持ったマルチリード奏者である。

まず、1曲目「フォーチューン・スマイル」…楽しげなカリビアン・リズムにのって、「バプティステ」がクライネットを軽やかに吹く。
しかし、カデンツァに入ると、ラテンのリズムよりも遥か上空を、このクラリネットが飛び廻る。
真夏のカリビアン・ビートに降り注ぐ、クラリネット・シャワーの様な演奏だ。
これまた抜群のノリで、ラテンビートをぶちかます、ピアニストの「ジェセフ」も素晴らしい名演です。

2曲目は「9プロスペクト~」は、「バプティスト」のソロに多くの管楽器のソリストが、輪唱の如く絡みつく、とても印象深い演奏。
そうだ、一言で言うと、管楽器で歌うゴスペルから曲が始まる感じだ。
そのテーマが終わると、アシッド・ジャズ的、超カッコイイ、ベースで「サントス」が淡々と音を刻む。渋いが…この曲1番の聴き所でしょう。
中途で又、「バプティステ」のクラリネットを中心に、管楽器群が絡みつくのだが、またまた「サントス」が硬派のベースでぶちかまし、この曲では独壇場です。

3曲目「ミスティ」…では、例にもれず「サントス」の硬派ベース、ヴァイブの「ロビンソン」を中心に、骨太のリズムを柱にして、女性ヴォーカル「サンドラ・フェニス」が、とてもアンニュイ&ジャジーな色香たっぷりの黒人女性らしく歌う。
伴奏で盛り上げる「バプティステ」も壷を心得た演奏でgood。
夏の夕暮れ、或いは薄暮に聴いていたい、けだるい感じが堪らない魅力です。

4曲目「ウン・コーレ~」は、ピアノの「ジョセフ」が、いかにもラテンチックに、軽快に飛ばす快演が、とにかく気持ち良い。
この曲では、誰が何と言っても、主役はこいつだ!!
パーカションの「アジレイ」もこの演奏の心地よさに大きく貢献している。
そして勿論、「バプティステ」も、好フレーズを次々に吹き捲る。

5曲目「レガシィ」は、変則ラテンリズムに、やや不協和音的なユニゾンが特徴的な曲調で、ここではあえて全員が、音をチョイはずしの美学を追求する。
ドラム、ベースのバック陣営は、カチっと締ったリズムを刻み、崩し系ユニゾンの管楽器群を、上手に支える。
カッティング・ギターの「ベルデシェフスキー」も良い味出してるよ。
正しく、大人の快演奏だね。

6曲目~10曲目…このアルバム最大に聴き物「ユーロ・カリブ・クラシズム・組曲」が最高に決まった演奏。
6曲目の序奏では、またまた「フェニス」のアンニュイなヴォーカルに、フルートの「サウザーランド」が素晴らしいフルートで応戦する。
「バプティステ」の余裕充分なテナーも男らしくて気持ち良い。
この3人の人間模様は…なんてチョット、ミステリアスなフェードアウトで終わる所もにくい演出です。

7曲目はメチャ明るいカリプソで、さらっと行こうぜぇぃ。
8曲目「ステイト」は、6曲目の発展系で、「フェニス」のヴォーカル、いや「語り」が入っていて、メロディは6曲目のテーマの発展型です。
所謂、クラシックのソナタ形式を踏襲しているのです。
この辺があらゆる音楽のエッセンスを混ぜている所以だろうなぁ。

9曲目「エジプトの女神」…一言で好きだ。大好きだ。。
冒頭では「バプティステ」の哀愁タップリのクラリネットを囲って、「ジョセフ」がリストの曲調の様に、華麗なピアノを演奏して警護にまわる。
テーマが終わると、急速調にリズムが刻まれ、この哀愁曲はいつしか、いけいけの明るいラテンに変わっている。
上手と言うか、不思議と言うべきか、見事に転調している。
この後では、「バプティステ」は、「ドルフィー」の如く、クラリネットで絶叫して、とても感動的な演奏である。

そして〆の10曲目は、以前紹介した「デパペペ」の様なラテン調のデュオギターから、発展していき、クラブシーンでかかる、大人のジャジーな雰囲気の演奏に変わる。
「バプティステ」は、苦しさを感じさせない、余裕のソロで、ピアノ「ジョセフ」も流麗なブロックトーンで、エンジン全開になる。
エンディングに近づき、ギター「ベルデシェフスキー」が、フラメンコの様にかき鳴らし、皆の精神も最高揚を迎える。
しかし、熱く成り過ぎず、どこか空の上から、冷静にこの曲を傍観している演奏家達が多くいる。
そう、それは「バプティステ」自身を含めた、彼等ミュージシャンそのものです。
やはり、現代人は一歩冷めた自分を必ず持っているようです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿