<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

中国 反日デモの背景にある尖閣報道

2012-09-18 | 尖閣問題

2012年9月16日、中国における反日デモは一つのピークを迎えた。
日本の報道によると、デモ実施都市は100箇所前後、暴徒化による被害規模も国交正常化以降、過去最大ではないか・・・と言われている。
筆者も先週金曜日の状況から推測して、結構な規模になると予想していたが、それを上回る規模に発展した格好だ。

暴徒化した反日デモが繰り返しTVで報道されるため、筆者を含めた在留邦人に対する安否確認の知らせは後を絶たない。
あのような映像を見れば、当然の行動と言っていいが、今のところ在留邦人に対する大きな被害は報告されていないようだ。
モノの略奪であれば経済的な利益を生むが、ヒトに対する危害は刑法上の不利益しか生まないことも背景にあるのかも知れない。

当然ながら、日本では「中国敵国論」が盛り上がっているようだが、筆者は中国に駐在する日本人の一人として、今回の状況を冷静に分析していきたいと思っている。
無論、筆者は日本人なので、色々調べた現時点でも「尖閣諸島は日本の領土」との立場を崩すものではない。
しかし、ここまで外交問題に発展している理由は明確にしておいたほうがいい。
なぜなら、人々がこうした過激な行動に出る際、その根拠となる思想が内面に存在するからだ。
そこで、今回は反日デモの背景にある中国国内での尖閣報道について考察を進めたい。

今回の問題、日本人の間では「尖閣諸島は日本固有の領土」という共通認識が出来上がっている。日本国民は2年前の事件を契機に、この問題に強い関心を抱くようになったのは言うまでもない。

しかし、中国側の見方は当然ながら真っ向から対立する。
日本と同様、中国人民のほとんどが「尖閣諸島は中国固有の領土」と信じてやまないのだ。
このように中国人民が信じる背景には、現地メディアの報道、学校教育現場などでの領土教育などが存在する。
とりわけ、大きな影響を与えているのは、メディアであろう。

中国はご承知のとおり、報道規制を強く実施している国。
大手メディアは中国共産党の指揮下に置かれ、いわば政府広報の一翼を担うような存在となっている。

とりわけ大きな存在感を発揮しているのが「人民日報」。
かつて国民のほとんどが読んでいたと言われるメディアだが、最近はほとんど読まないという中国人のほうが多いようだが、こうした局面では話は別。
国家間の紛争が生じた際には、やはり中央政府に近いメディアが尊重されるようになるからだ。

日本ではあまり知られていないが、この人民日報系の新聞で「環球時報」というメディアもある。
同メディアは国際問題をメインに扱っており、ナショナリズムを全面に押し出した記事構成となっており、時に激しく日本を非難する記事を掲載している。
こうしたメディアの使い分けも行いつつ、中国政府は巧みに世論を形成していくワケだ。

話を戻して、人民日報については「人民網」というサイトが開設されており、これを見ると案件ごとの中央政府の公式見解が分かるようになっている。
(もっとも、こうした公式見解が本音なのか、建前なのか、各自で判断する必要はありますが・・・)
しかも、スゴイのは日本語をはじめ多言語のサイトが完備されているというコト。
参考までに、日本語サイトのURLは以下のとおり。
http://j.people.com.cn/home.html


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今回の尖閣問題に関しては、当然ながら相当な力の入れよう。
「中国、釣魚島の領有権の断固保護」という特集のサイトが組まれていますので。。。
ちなみに、URLはコチラ。
http://j.people.com.cn/94474/204190/206039/index.html

このサイトに掲載されている「釣魚島のいきさつ」を見ると、この問題に関する中国側の見解が読み取れるので、以下転載する。

◇釣魚島等の島嶼は中国人が最も早く発見し、命名し、利用したもの。

◇1895年、日本は甲午戦争(日清戦争)末期に、清政府の敗色が決定的になった機に乗じて、釣魚島及びその付属島嶼を不法に窃取した。

◇第二次世界大戦終結後、中国はカイロ宣言とポツダム宣言に基づき、日本が侵奪・占拠した台湾、澎湖諸島等の領土を回収し、釣魚島と及びその付属島嶼は国際法上中国に復帰した。

◇1951年、日本は米国等の国々と一方的な「サンフランシスコ講和条約」に署名し、琉球群島(現在の沖縄)は米国が管理することとなった。

◇1953年、米国琉球民政府は勝手に管轄範囲を拡大し、中国領である釣魚島及びその付属島嶼をその中に混ぜ込んだ。

◇1971年、日米両国は沖縄返還協定の中で、またしても勝手に釣魚島等の島嶼を「返還区域」に組み込んだ。

◇1972年の中日国交正常化と1978年の平和友好条約締結交渉の過程で、両国の一世代上の指導者は大局に着眼し、「釣魚島問題は棚上げにし、後の解決に持ち越す」との重要な了解と共通認識にいたった。

どうですか・・・?
日本側の主張と真っ向から対立していますよね。
でも、こうした政府見解が中国人民全体の共通認識になっているんです。

しかも、人民網の記事をいくつか読むと分かるが、今回の国有化に至る経緯も、中国側からは「政治的茶番劇」として片付けられている。
(これ以外にも興味深い記事がいくつか見受けられるので、関心のある方はぜひご覧下さい)
勿論、全ての人民がそのように考えているワケではないが、日本の分かりにくい政治システムを理解しているのは、日本留学経験者や日本での勤務経験者など、ごく少数に過ぎないというのも事実。
ましてや、今回のデモ活動に主力として参加している貧困層などにとっては、日本の政治システムなど理解する必要すらないとも言える。


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もともと領土問題というのは、どちらが正しいだとか、どちらが間違いだとか、そういった類の問題で解決できる話ではないことが多い。
世界中、至るところで領土問題が存在するのは周知のとおりだ。

参考までに、以前取り上げた「時代報」における報道ぶりを追ってみたい。

まずは、9月11日の国有化方針発表時。







1、2面全体を使って、温家宝首相の「半歩たりとも譲歩しない」とする談話や外交部の声明なども交えつつ、国有化への反発を謳っています。

次に、9月13日の記事。







これもトップ面で「中国側が再度、国有化方針を撤回するよう迫った」ことを報道する内容。
戦争を想起させるような軍事演習の報道も交えつつ・・・。

そして、各地で大規模なデモが行われた翌17日の記事は・・・というと、



トップ面からほど遠い7面にて、「中国が東シナ海で200カイリ外の大陸棚拡張を申請」、「禁漁期間明けの大量の漁船が出港を準備中」といった記事が並んでいるが、デモの暴徒化といった記事は一切なし。
ここにも報道規制の影がちらつく。

翻って、日本での対応はどうだろう・・・?
不運にも日本は三連休の真っ只中ということもあるだろうが、総じてデモの過激映像は流すものの、肝心の「今後の対応」といった視点の報道は少ないように思われる。

参考までに日本の外務省のホームページを見てみる。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/

三連休中のせいか、今回の反日デモに関する記載は見当たらない。。。

日本のニュースサイトを見ると、国内は自民党総裁選や民主党代表選などで忙しそうだ。

こうした状況の中、在留邦人が最も危惧する9月18日(柳条湖事件発生日)が迫ってきている。
「備えあれば憂いなし」、この言葉が痛いほど身にしみるのは筆者だけではないだろう。
今はただ、これ以上被害が大きくならないことを祈るばかりだ。。。

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