<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

一般公用車廃止を決めた中国政府、政府の浪費防止は進むのか?

2013-11-30 | 中国社会学

中国で仕事をしていて痛切に感じるのは、この国は日本と違って「役人天国」だということ。
これまで何度も指摘してきたように、政府部門は国から小さな村まで全て中国共産党。大手企業もほとんどが国有企業、もしくは地方政府系企業なので、元を辿れば皆、公務員。
民営企業も発展してきているが、それとて政府との繋がりなくしては、持続的な発展は難しい。これが中国経済の偽らざる姿と言える。

そのため、政府部門を訪問する場合、ほぼ例外なく公用車が用意され、宴会となると豪華な料理がこれでもかと並ぶことになる。
日本人の感覚からすると恐縮しきりだが、そこは「メンツの国」。
割り勘でも申し入れようものなら、世間知らずとしてバカにされることになる。
まあ、他の場面で恩返しすることになるので、結局は同じなんですけどね。
でも、そういう意味では「古き良き時代の日本」に似たようなところとも言える。
最近、日本ではこういった関係を築くのが難しくなってますからね。特に法人同士の関係は、コンプライアンスとか色々と厄介ですので。。。

そんな中国でも、経済発展に伴って、「役人の浪費」がクローズアップされることに。まあ、当然と言えば当然なんですけど。。。
数年前、役人のあまりにも楽すぎる海外出張が問題になったことがあった。
そもそも、この問題、どうやって明るみになったと思います?
実は、一人の役人が地下鉄にバッグを置き忘れて、そのバッグの中に出張関係の書類が入っていたというもの。
以後しばらくの間、役人の海外出張にはチェックが厳しくなることに。
たった一人のヘマによって、大中国全体が揺さぶられることになるから、世の中はホントに不思議なもんです。


【上海関連の情報が満載の「にほんブログ村 上海情報」はコチラ】


で、今回、新たな対策として発表されたのが「一般公用車の廃止」というもの。

国務院(中央政府)は11月26 日、中国共産党や政府機関の浪費抑制を目的とした条例を公表し、党員や公務員が使用する一般公用車を廃止することを明らかにした。なお、既存の一般公用車は公開競売などを通じて処分する方針とのこと。

うーん、これで少しは役人天国が改善されるかな・・・。
と思ったら、大間違い。そこまで甘くはないだろう。

よく見ると、この「一般」公用車という表現が、ミソ。
「幹部」の公用車は含まれないと読むのが正しいと思われるからだ。
じゃあ、「一般」と「幹部」の違いは?ってことになると、ここはおそらく運用に任せられるワケで・・・、結局、下々の人間が動きにくくなるってことなのかも。
まあ、民衆に対する言い訳めいたところも多分にあると思うので、とりあえずポーズの意味合いも強いか・・・と。

ちなみに、今後、公用車は政府が集中買い付けを行い、購入するのは国産車に限定、とりわけエコカーを優先するという。
しかし、別の角度からみると、こういった国産車限定ってのはWTO違反に当たらないのだろうか?
不勉強なので確定的なことは言えないが、政府調達の分野では海外に門戸を拡げるっていうのが世界的な流れだと思うんだけど・・・、ここは中国ですからね、期待するだけムダということか。

さらに、幹部の家族や部下に幹部の公用車を割り当てることも禁じるらしい。
このあたりは、少し本気度が見受けられる。
「一般」がダメなら「幹部」の公用車をバンバン買って、部下に横流しすりゃあイイじゃん!って考えるのが、中国社会の常ですから。
コレ、「上に政策あれば、下に対策あり」ってヤツです。


【中国関連の話題が満載の「にほんブログ村 中国情報(チャイナ)」はコチラ】


なお、条例には経費抑え込みを目的に、政府買い付けでブランドや産地を指定することを禁止するとのこと。
ここは「ソデの下」対策の意味合いが強いか・・・と。
ただ、地方政府にとっては、地元で生産している自動車メーカーをバックアップしたいという気持ちが強いだけに、入札の現場では様々な思惑が働くことが大いに予想される。そのあたりも、地方の裁量の範囲内ということかも知れないが。

そのほか、公務での海外出張や会議、接待などに関しても基準、審査を厳格化することを盛り込んでいる。規定に違反して浪費した者には個人の責任を追及することにも触れているようだ。

あとは、どこまで徹底されるか・・・でしょうね。

とはいえ、徹底されれば、今後の自動車販売市場に影響する可能性もある。
たかが公用車市場と言っても、中国には小さな町や村を足し合わせると万単位の地方政府が存在する。
しかも、地方ごとに独特の自動車マーケットが構築されているという事情も相まって、自動車メーカーの戦略にも影響が出てくるかも知れませんね。
日本を含めた海外勢としては、公平・公正なマーケットが形成されるよう、常に目を光らせ、改善すべき点は他国と協力して改善を促していくという姿勢が必要であろう。

何はともあれ、こうした政府の浪費抑制の姿勢が本物なのか、今後も注視していくことにしたい。


↓ご愛読ありがとうございます。よければ応援クリックをポチっとお願いします。(ブログランキングに参戦中)

にほんブログ村 海外生活ブログ 中国情報(チャイナ)へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ

高騰し続ける中国の不動産市場、その行く末は・・・

2013-11-27 | 中国経済

これまた久しぶりとなる連日の更新。
ちょっと頑張ってみようか・・・と。

本日のテーマは「中国の不動産市場」。
日本では「いつバブルが弾けるのか?」と散々言われ続けていますが、弾けるどころか、どんどん膨張している感じですね。恐ろしいもんです。

国家統計局がこのほど発表した全国主要70 都市の10 月の不動産価格は、前年同期比で浙江省温州市を除く69 都市で上昇。このうち上昇幅が10%を超えた都市は21 都市にも上ったというから、まあ日本では考えられないですね。。。

人間、裕福になってくると、消費に充てる金額自体が上がっていくこともあって、インフレに強い不動産に資金が集まっていくのは自然の摂理。
つまり、中国の不動産価格が落ち着くのは、経済成長がもう少し鈍化しない限り望めないということかも知れない。
もっとも、日本のバブル同様、適当なところで落ち着くという結論を迎えられるほど甘くない結論が待っていそうな気配が・・・。

そんな不動産祭りが続く中国ではあるものの、全国一律の状況とはいかないようだ。最近発表された住宅指標を見ても、1級都市や2級都市は住宅在庫を減少させているが、3級都市では逆に二桁増という状況に陥っているのは実に興味深い。
簡単に言うと、既に地方都市では不動産がだぶついてきているのだ。

こうした状況に呼応するように、不動産価格にも都市間格差が表れてきている。
10月の新築住宅価格の上昇率を比較すると、大都市ほど高く、地方都市ほど低くなっていることが分かる。
3級都市に至っては、既に実勢価格が下落に転じているところもあり、それでも買い手が付かないという事態も発生しているようだ。


【上海関連の情報が満載の「にほんブログ村 上海情報」はコチラ】


これまで中国の不動産市場を語る場合、国全体を見て「バブルかどうか?」を論じることが多かったが、今後はこうした観点を改める必要があるだろう。
一部報道によると、全国で買い手のついていない在庫住宅が現時点で6,800 万戸あり、特に3~4級都市と呼ばれる地方都市の多くで供給過剰が深刻化しているとのこと。とりわけ、こうした余剰物件は中西部の中小都市に集中しているようなので、やはり所得水準の高低が需給バランスに影響していることは間違い無さそうだ。

ご承知のとおり、中国は広大な土地を有しているうえ、貧富の差も激しい。
最近の大都市部での不動産高騰を支えているのは、一部富裕層の旺盛な買い需要と言われており、まさに「金は持っている人のほうに流れていく」の典型的な姿と言えるだろう。

こうした需給バランスが崩れた状態であるにもかかわらず、なおも各地で不動産開発が進むのは何故なのか・・・?
ここには中国特有の事情が関係してくると筆者は見ている。

その代表的な背景と思われるのが、次の2点。
ひとつ目は、お決まりの不動産開発の手法によるもの。
中国の場合、土地は全て公有地であり、不動産開発に当たっては通常、70年という単位の土地使用権を購入することになる。
つまり、政府がOKを出さない限り、開発に着手できないワケで、ここに需給とは無関係の「役人の出世」という要素が顔を覗かせてくる。
とりあえず、目の前にキレイな街が出来上がって、すぐに文句を言う市民はあまりいませんからね。。。
こうした権限をもった高級官僚には、都市開発で設けようとする連中がドンドン集まってくるワケです、ハイ。


【中国関連の話題が満載の「にほんブログ村 中国情報(チャイナ)」はコチラ】


次に、上記にも関連してくるが、多くの場合、こうした都市開発で元請けのような役割を果たすのが、日本におけるゼネコンにあたる大手国有企業、もしくは地方政府系企業。
つまり、ここでも政府の意向が強力に働いているということに。
しかも、現政権になって、汚職・賄賂の類に対する締め付けがかなり厳しくなってきたので、合理的に甘い汁を吸おうと考えた場合、不動産開発というステージが最も適しているということは容易に推測できる。
もっとも、あくまで推測に過ぎないが。。。

で、結論として、中国の不動産バブルは起こるのか?
筆者の見立てでは、当面はないと見ていいだろう。
理由は単純明快。
ここまで述べてきたとおり、乱発している不動産開発の根源は政府にあるんだから、結局は政府の責任で問題解決に当たらざるを得ないのである。
加えて、政府は不動産融資を厳しく規制する方針を打ち出すなど、表向きは抑制の市政を見せているが、内需拡大が思うように進まない国内経済の状況を考えると、不動産市況の低迷は何としても避けたいところ。
故に、金を借りることなく次々に資金を不動産に投入できる層を対象とした規制が強化されていないのである。
つまるところ、現政権もこれまで同様、本気で不動産市場を落ち着かせようという想いはないのだろう。この「落ち着かせる」という意味は、即「市場を下落させる」ということに繋がるのだから。。。

しかし、最も怖いのは、世界経済の動向。
もうこれだけは、中国政府のコントロール下にないワケで。。。
ある意味、外界から隔絶された感のある中国不動産市場だが、資金自体は世界的な金融緩和でジャブジャブ供給されている投機マネーが多数含まれる。
米国でもくすぶっている金融緩和の縮小が「中国不動産バブルの終わりの始まり」になる可能性は十分あると思われる。


↓ご愛読ありがとうございます。よければ応援クリックをポチっとお願いします。(ブログランキングに参戦中)

にほんブログ村 海外生活ブログ 中国情報(チャイナ)へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ

人口問題に着手し始めた中国政府、その成否は・・・?

2013-11-26 | 中国社会学

超久々の更新となってしまいました。申し訳ないです。。。
約2ヶ月ぶりなので、このブログ、もう閉鎖じゃないか?と思った読者も多いかも知れませんね。
この間、途中まで書いた記事もあったんですが、どうも最後まで筆が進まず、諸事に手をとられるまま、更新できずに今日に至ってしまいました。
ということで、辞めたワケではありませんので。

ちなみに、今週以降はソコソコ時間が確保できそうなので、以前ほどではないですが、ボチボチ更新していこうと思っています。
お時間の許す方は時々覗いて頂ければ幸いです。

さて、本日は「人口問題」について。

中国は1990年代の改革開放政策以降、豊富な労働力を背景に「世界の工場」と呼ばれたが、それも今は昔のこと。
2012年、中国は遂に労働人口減少社会に突入することに。
先日開催された中国共産党第18 期中央委員会第3総会(3中総会)で、夫婦のいずれか一方が一人っ子であれば2人目の出産を認めるとしたのだ。
急激な人口増加、大げさに言えば人口爆発を回避するために導入された「一人っ子政策」。ここ20年で驚異的な経済成長を実現しつつも、その人口が13億人程度に抑制されているのは、まさにこの政策の功績と言えよう。
ただ、同時に「人口構造の歪み」という「罪悪」を生じさせたことも事実。
2年ほど前にも、夫婦双方が一人っ子の場合、2人目の出産が認められたが、その効果は今ひとつ。。。
その原因は、後ほど詳述することに。

もっとも、この政策、まずは全国統一とせず各省・自治区・直轄市など行政単位の裁量に任せるとみられている。
北京市が早ければ来年上半期にも全国に先駆けて先行導入する見込みで、まずは所得水準の高い大都市部での反応を見極めながら、全国展開を図っていくものとみられる。
中国の場合、国土がべらぼうに広いですからね。
田舎に行けば行くほど、政策は徹底しません。だって、政府の目が行き届きませんから。
よって、地方では今でも一人っ子政策は形骸化していると言われている。
「戸籍を持たない人」って、まさに農村部で生まれた第二子以降の人たちですからね。こうした人々が、中国の発展を「労働力」という形で下支えしていたワケでして。。。


【上海関連の情報が満載の「にほんブログ村 上海情報」はコチラ】


さて、今回の政策転換によって、実際のところ、どこまでの効果が期待できるのだろうか?

国家人口計画出産委員会の調査では、一人っ子政策が緩和された場合に2人目の子どもを産みたいと答えた女性は50~60%と高い割合を示した。
いまの子育て世代は、まさに一人っ子政策のもとで生まれた世代なので、兄弟や姉妹というものへの憧れが相当強い。このあたりの感覚は、日本人にはちょっと理解しにくいものがあるだろう。
余談になるが、こうした環境にあるせいか、中国人は懇意になった方々を「お兄さん」、「お姉さん」と呼ぶことが多い。大げさに言うなら、10年もすればアニキ、アネゴだらけといった感じである。
対して「お母さん」や「お父さん」はそれほど増えないので、その憧れの強さが分かるというもの。

こうした事象を鑑みると、今回の政策転換にかなり期待が持てそうな気がしてくるが、現実はそんなに甘くなさそうだ。
実際のところ、政府筋も意向と実際には大きな隔たりがあり、2人目の出産を選択しない女性が多いとみているようだ。俗にいう「理想と現実」というヤツか。。。

筆者なりに状況を分析すると、この理想を阻む要因は以下の3点と考える。

まずは、教育費の問題。
中国はいま、日本人が考える以上に「学歴社会」。
以前、日本社会が体験した「お受験戦争」に勝るとも劣らない世界なのだ。
経済発展著しい中国にあっても、希望する職業に就くことは至難の業。
大学進学率が上昇した現在、日本以上に就職戦線は厳しい。
よって、子どもに掛かる教育費もハンパではない。
月間の学習塾代が日本円で5万円を超えることも珍しくないため、簡単に二人目を生むことはできないのだ。


【中国関連の話題が満載の「にほんブログ村 中国情報(チャイナ)」はコチラ】


次に、女性の社会進出に関連する問題。
中国は、日本と違って「共働き」が当たり前。
女性が若くして管理職に就くことも珍しくなく、日本と違って結婚しても姓が変わることもない。日本も変革の途上にあるが、そもそも女性の意識が違うのだ。
よって、都市部では母乳で育てるなどということは「夢物語」に近いものがある。
働く女性はギリギリまで産休を取得せず、産後半年もすれば、さっさと職場復帰するのである。コレ、現地で生活した肌感覚でいうと、中国人女性は子ども好きではあるが、四六時中、子どもの世話をするのはチョット・・・という方が多いように感じる。これも前述した独立心の強さが影響しているのだろう。
結局のところ、子育てはリタイアした祖父母の手に委ねられることになる。
祖父母にとって、孫は宝のような存在ではあるものの、二人となると世話する労力も倍増。しかも、二人同時に育てたという経験も有しておらず、お断りの姿勢を示す祖父母も多いようだ。

三つ目は、生む側の違和感。
上記の祖父母同様、兄弟・姉妹のある環境で育った経験がないため、どうやって育てたらいいのか、言いようのない不安があるようだ。
まあ、周囲にもそんな家庭が稀にしかないワケだから仕方ない。
だから、日本人が3人も4人も生んだ、あるいは3人もの子供たちと一緒に行動しているというと、中国人にとっては好奇以外の何物でもない。「年齢が近いと、案外、勝手に育つものだ」と言っても、中国人の頭の中は???だらけとなっているらしい。
筆者も駐在時、現地スタッフに「二人目を生むか?」と聞いたことがあるが、ほぼ例外なく「NO!」。
それほど現実は厳しいのである。

上海のような大都市部では、相変わらず不動産価格の高騰が続いている。
終の棲家と同様、二人目の子をもつというのは、まさに「高嶺の花」ということか。。。


↓ご愛読ありがとうございます。よければ応援クリックをポチっとお願いします。(ブログランキングに参戦中)

にほんブログ村 海外生活ブログ 中国情報(チャイナ)へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ