<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

中国在住経験から考えるマイナンバー制度導入反対論の違和感

2013-07-05 | 日記

2013年5月、「マイナンバー法」が国会で可決、成立した。
以前から賛否両論が渦巻く同法案だったが、今回は何となく成立したという感が否めない。
だいぶ前には、戦時中の「国民総背番号制」を想起させることも手伝って、審議すらなかなか進まなかったワケだが、IT化の進展といった同制度を取り巻く環境の変化が同法成立の背景にあるように思われる。

2016年1月からの施行に向けて、懸念される課題をクリアしていく必要があるが、とりわけ反対派から集中砲火を浴びているのが「個人情報の流出懸念」、「莫大な導入経費に見合うだけの価値があるのか」という二点。

一点目の「個人情報の流出懸念」については、程度の差はあるものの、誰しもが不安を抱くところかも知れない。

そもそも今回のマイナンバー制度とは、国民一人ひとりに12桁の番号を割り当てて、氏名や住所、生年月日、所得、税金、年金などの個人情報を、その番号で一元管理する「共通番号制度」のこと。
加えて、希望者には番号と顔写真などが記載された個人番号カードが交付される。

ただ、ここで冷静に考える必要があるのは、税金にしろ、年金にしろ、国民は既に分野ごとに付された番号によって管理されているということ。
これは、管理する立場からすると当然のことで、番号を利用してデータを管理するということが極めて合理的かつ効率的だからなのだ。

そのように考えると、今回の制度における目新しい点は「共通の番号が付される」ということに尽きる。
ただ、一つの番号、一つのカードに色々な情報が詰め込まれているということだけで「危険」と決めつけるのは、いささか乱暴ではないだろうか。


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既に記憶の片隅にも残っていない方も多いかもしれないが、現時点でも住民基本台帳に基づいて「住基カード」というものが発行されている。
もっとも、発行率が異常に低いが。。。
このカード、持っていれば住民票や印鑑証明などがスムーズに発行可能というメリットがあるが、カード発行料の500円を払ってまで発行する価値があるかと言われると首をかしげる向きも多いだろう。
つまり、こうした制度を導入するに当たっては、「発行率の向上によるスケールメリットの確保」と「利便性の向上」がない限り、制度自体が普及しないのである。

いま、マイナンバー制度導入のコストが議論されているが、住基カード導入に当たっても、かなりの金額が投入されたということを、いま一度思い返しておく必要はあるだろう。

住基カードの結果を踏襲しないようにするには、二番目に指摘した「利便性の向上」を図ることが重要となる。
これこそが、まさに賛成派が根拠とする部分で、利便性を向上させていくには「汎用性」を高め、一枚のカードが様々な場面で活躍するということが理想となる。
これを最大限発揮させようとすると、民間利用の解禁というところに行きつくワケだが、今回は制度導入段階での民間利用は想定されておらず、今後の検討課題ということになっている。
要は、課題先送りってこと。まあ、やってみないと分からない部分も多いですからね。

ちなみに、具体的な経費については、時事通信が「導入コストとして「システム構築費などの初期費用2700億円に加え、運用開始後も維持費などで年300億円程度が必要になる見通し」と伝えている。
もっとも、これは必要になる経費だけを見込んでおり、システム統合によって不要となる経費を無視している点で、事実を正確に映し出す金額とは言えないように思うが。。。
ま、何にしても、それなりに大きなコストが必要になるってコト。


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で、実際のところは・・・というと、個人的には「行政手続き」という観点からみると、かなり効率性が向上するのは間違いないだろうと考えている。
そもそも行政サービスというのは、個人個人に対して提供されるものなので、個人単位で情報を管理できる体制というのが望ましい形。
日本社会はとかく現在の形を「正」と捉え、変化させることを嫌うという性質をもっているが、翻って現在の仕組みが正しいのかどうかを考え直すことも重要ではないか・・・と思っている。

例えば、中国では国民一人一人に対して身分証が発行されており、銀行口座の開設、航空便利用時の提示といった様々な場面で、この身分証が活躍することになる。言い換えれば、このカードがないと日々の生活に窮することにもなるワケだが、当の中国人にとってはメリットのほうが大きい(或いは政府が決めたことだから考えるまでもない)ようで、不満の声といったものは聞かれない。

その代わり、日本のマイナンバーと違って、付される番号の桁数は12桁なんてものではなく、たしか20桁前後だったと思う。
つまり、何度も使用する本人でないと、なかなかスラスラと書き出せないような仕組みにしているのだ。極めて原始的ではあるが。。。

でも、単純に考えて、顔写真付きの政府公認の身分証って、有ったら便利だと思いませんか?
「日本では運転免許証があるから問題ないじゃん?」って答えが返って来そうだが、これこそが大いなる矛盾。
運転免許証は、その文字のとおり、運転を許可されたことを証明する目的で発行されたものであり、身分を証明することは本来目的ではないからだ。
これは、日本に政府発行の身分証が無かったが故に、自然と国民に植え付けられた意識であって、グローバルな視点から考えると、全く合理性を欠いたものと言わざるを得ない。
近年、若者の車離れを危惧して、トヨタが「免許を取ろう!」というCMを流していたのを目にしたのは、筆者にとってチョットした衝撃だったが、こうした運転免許証を必要としない若者、加えて加齢を理由に運転免許証の更新を行わない高齢者が増えている現状を考えると、そろそろ「あるべき論」に立ち返って、一つの制度で運用できる仕組みを考えるべきだと筆者は考える。

無論、情報漏えいや「なりすまし」の防止対策には万全を期す必要があるが、カード紛失といったリスクは、同制度に限った問題ではない。
要は、自己責任なワケだ。
ただ、民間への開放に当たっては、特に慎重を期す必要があるだろう。

もっとも、中国ではこの身分証自体が偽造されていることが多い。
一人っ子政策の弊害で、戸籍のない国民がかなりの数いると言われていますからね、自ずと需要はあるワケです。。。

日本は、こうした問題を内在しておらず、戸籍制度もキチンと整っている国。
新しいコトを導入するには、当然ながらリスクは付きものだが、未来志向に立って理想を追い求めていくという姿勢が求められているのではないだろうか。
とりわけ、ICT化が日々進む社会においては、この流れに逆らうことはもはや出来ないのでは・・・と感じている。


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久々の更新・・・(中国株式市場の気になる現状)

2013-07-02 | 中国経済

またもやブログ更新が滞ってしまいました。
日本に戻って、何だかやることが多くて・・・。
ま、言い訳せずに、ボチボチ頑張ろうかと思います。

さて、今回は巷を賑わせている中国株式市場の状況について。
筆者、リーマンショック当時まで中国株を嗜んだことがあるが、最近は全く売買に参加していない。
あまり株式運用をしない方々には分からないと思うが、株式の売買って結構大変な作業。適当に買うと痛い目に遭うので。。。
特に中国株の場合、手数料が国内株と比べると割高になるので、ある程度の期間は保有しないと割に合わないということになる。
しかも、日本に居ると、中国経済や個別企業の業績を知る機会が少ないので、さらに大変!本気で儲けようと思ったら、サイト検索に燃えないといけないハメに。

ちょっと長くなりましたが、要は株式で利益を出すのは大変なんです。当たり前のことですが。。。


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余談はさておき、最近、中国株の調子がおかしい。
リーマンショック前までは、中国株もご多分に漏れず、上昇一途を辿っていた。
いや、ある意味では、どの国よりも上昇が激しかったと言っても過言ではないだろう。
当時の中国株式市場では、国有企業改革の一環として民営化が推し進められていたこともあり、次から次へと大型企業のIPO(新規上場)が相次ぎ、利益が利益を生むという循環が起きていた。
しかし、こうした足腰の弱い相場は長くは続かない。
リーマンショックの発生と同時に、中国株式市場は一気に冷え込み、その投資熱は現物である不動産へと向かうことになった。
これが、日本で盛んに取り上げられる「中国不動産バブル」の一因とも言える。

日本でも投資指南役として名を馳せた邱永漢(故人)が中国株を推奨し、中国での起業を薦めたのも、ちょうどこのころ。
ある意味、この視点は当たっていたでしょうね。ソコソコ成功している日本人起業家が見受けられますので。

ここ数年、低迷を続けつつも、2012年は緩やかに上昇の傾向を見せていた中国株式市場が一気に下方へと動き始めたのは、あるニュースがきっかけだった。
それは、銀行間取引の短期金利が十数%へと急上昇したこと。
とりわけ、中国本土市場は深刻で、上海総合指数が2013年になって初めて2000の大台を割り込み、1900近辺まで下落。
一時的ではあるが、二日連続で5%超の下落を記録するという急降下ぶりには、筆者も少し驚いた。
ここ二日で2000近くまで押し戻してきているが。。。


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株式市場急落の本当の原因は何なのか・・・?
これは、まさに新政権の政策の方向性を見出だせない、あるいは国内の金融問題が最悪の事態を連想させるほどまで悪化していることが背景にあるのだろう。
中国は、前政権のとき、本質的な改革を先送りしてきた。
その結果、中国に流れ込む大量のホットマネーを制御することが出来ず、結果として企業は右肩上がりの経済を想定した過剰な投資を繰り広げることに。
そして、気が付けば、どの分野でも生産過剰の状況となってしまい、こえrがまた企業収益の悪化を生むという悪循環を迎えている。
そのため、市場関係者は、今度こそ中国政府が本気で痛みを伴う改革をするのでは・・・との想いを抱くのは不思議ではない。
実際のところ、中国は他の国とは違って中国共産党一党独裁の国。その気になれば、一定の正義を振りかざしさえすれば、大胆な政策を打つことが可能なのだから。。。

ただ、筆者が気になるのは、中国企業の先行きにあまり期待が持てないこと。
中国株ブームに沸いていた頃、かなりの割合の企業が「何十%の増益が見込まれるか?」という視点で銘柄推奨が行われていた。しかも、今後数年にわたってという視点で。
いまは、こうした企業が非常に少なくなっており、魅力的と思える銘柄が少なくなっていると感じるのだ。ここは、中国経済の活況ぶりを伝えるメディアとのズレなのかも知れない。つまり、売り上げは伸びるが、利益は思ったほど伸びていないということではないか・・・と。

結局のところ、先進国の技術の模倣と大胆な投資、薄利多売というビジネスモデルでは持続的な成長は見込めないということだろう。
株式相場は、経済の先行きを示すものとも言われる。
中国株式市場の行方は、中国経済の大部分を形成する国有企業が、市場原理に基づいた健全な経営へとシフトできるかに掛かっているのではなかろうか。
先進国の株式相場にも影響を与えるほどまでになった中国株式市場。
その変革の行方は、もはや中国だけの問題ではないということを肝に銘ずるべきだろう。


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