<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

中国は日本人にとって住みにくい国になる?Vol.3(環境編)

2014-02-10 | 中国社会学

少し間が空きましたが、今回はシリーズ第3弾。
おかげさまで今回のシリーズ、大変好評を得ているようです。
まあ、好き勝手なことを書いているだけなので、こんなのでいいのかな・・・と思ったりしますが、興味を持って頂ければ嬉しい限りです。
では、さっそく第2弾となる今回のテーマ、「環境編」へ。

中国の環境問題と言えば、日本で大々的に報じられているのは「PM2.5」ですね。
いわゆる大気汚染です。
一般的に環境問題、公害というと、大気・水質・土壌の3つが大きな要素と言えます。後ほど詳しく論じていきますが、この語順に従って分かりにくさの度合いが高まるという特徴がありますね。

まずは、大気汚染について。
日本では「PM2.5」ばかりが報じられるが、そもそも「PM2.5」は微粒子の大きさを表しているだけで、原因物質を正確に把握できていないところに大きな問題があることを忘れてはならない。
あの広い中国の各地でこの問題が発生しているところに、まさにこの問題の根深さがある。北の北京、東の上海、南の広州のそれぞれで同問題は深刻さを増しているが、各地の産業集積が異なるだけに原因物質も同一ではないはずだ。これは、中国政府は統一的な対策を打つということを阻んでいるとも考えられる。解決への道のりは容易ではなかろう。
このほかにも光化学スモッグの発生など大気汚染の問題は後を絶たない。

しかも、これだけ叩かれているのに、危機感の共有、有効策を講じるための抜本的な規制が出来ないところに現体制の苦しい状況が現れている。
要するに、国がデカすぎるだけに、こうした問題に体系立ててキチンと対処するのが苦手なんですね、ハッキリ言って。世界の空は繋がっているので、ちゃんとしてくれない隣国のせいで、日本国民の健康が脅かされるっていうのは、何ともやりにれない気持ちになりますね。何とかしてほしいもんです。

ただ、もう少し歴史を長くとると、日本の高度経済成長期にも公害問題が続々と発生したワケで、とりわけ当時発生した大気汚染は農業国だった中国に対しても多かれ少なかれ影響を与えていた可能性は否定できない。
そう考えると、お互い様なのかも知れませんが。。。


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続いて、2番目は水質汚染。
この問題も結構根深い問題ですね。
ほんの10年前、中国では4つ星以上の高級ホテルですら、客室内の浴槽に水を溜めると水の色が黄色く見えるというのが一般的だった。当時から「沸かせば飲める」とは言われていたが、現代日本人でこんな色つきの水を飲もうと思う人は少数派に違いない。しかも、シャワーの水量も十分とは言えなかった。

そんな水事情も経済成長とともに表面上は一変した感がある。
一定規模以上の都市であれば、ホテル客室内の蛇口からは水が勢いよく出るし、見た目だけで言えば水の色は十分に透明である。ただし、あくまで「見た目」に過ぎないなのだ。

上海などの長江流域では、水はかなり確保されているが、流域に沿って工業が発達したため、工場排水による汚染が慢性化している。とりわけ上流にいくに従って旧来型の工場が集積していることもあって、そこからの汚染物質の排水は後を絶たない。悪い言い方をすると上流から下流のほとんどが汚染されているとも考えられるのだ。

その一方、北京などの北部については水の絶対量が不足している。このため、将来の水源となるはずの地下水に頼っているのが現状だ。しかし、その地下水も重金属などで汚染されているという噂が絶えず、安心して飲用できる原水の調達など望めないという事情がある。

もっとも、こうした事情を抱えながらも、冒頭にご紹介したとおり、見た目だけで言えば中国の水事情は格段によくなっている。これは経済発展によってインフラ整備が進み、汚い水をキレイに見せかける技術が多数導入されたことでもたらされたと言える。短期的にはこれでハッピーかも知れないが、とても持続可能な仕組みではないことは一目瞭然である。
日本では1970年代に各地で公害訴訟が提起されたことで、社会全体が公害への意識を高めることになり、これが企業の環境意識を高めされることに繋がった。中国は一党独裁かつ司法制度不備という特徴を有しているだけに、社会全体でどのような解決の道を模索するのか、真剣に検討すべき時期に来ていると言えるだろう。


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最後に、土壌汚染。
これはもう、なかなか手がつけられないですね。
だって、土ほど見た目で区別が付きにくいものはないですもんね、明らかに臭い、変色しているといった特徴があれば別ですが。。。
特に化学工場の跡地などで何年も放置されているような土地などでは、それを判別することは極めて難しいに違いない。
ただ、中国の都市開発を考えるうえで、こうした工場跡地をいかに有効に活用していくかは大きなテーマとなりつつある。なぜなら、人口数百万人といった規模の都市では、すでに都心にまとまった土地を確保することが困難になっており、土壌汚染の疑いがある土地は都心に残されている場合が多く、うまくすれば「金のなる木」に転換できるからである。つい20年前まで発展途上国の典型だった中国においても、いわゆる二次開発が必要な時代を迎えているのだ。

ただ、具体的に土壌汚染を解消するのは容易ではない。
日本や欧米は「土地私有制」が原則だが、中国は「土地公有制」で基本的な理念が全く異なる。私有制であれば、土壌汚染も排出者責任をベースに処理することが可能だが、公有制となると、土地は政府の所有物ということになり、大げさに言うとこれは人民全体の財産となる。汚染処理の完了に関しても、政府がお墨付きを与えることが必要となるが、人民の権利意識が高まる中で「確実な処理」というものをどのように担保するのか、前例のない取り組みが必要となるだろう。
加えて、そもそも土地を汚染した排出元が国有企業(平たく言えば、以前は政府)というケースも少なくない。汚染結果を公表したとたんに、周辺住民が騒ぎ出す・・・なんて事態も想定される。

どの問題も根が深いですね。道のりは長そうです。。。

こうした状況下、現地で暮らす日本人はどのように対応すればいいのだろうか?
うーん・・・残念ながら決定打はないんですよね。だって、全体がかなり汚染されていますし、こちら側には解決に関わる権限がありませんから。
よって、個々人でしっかり対処するということが一番か・・・と。

大気、水質、土壌のどれをとっても、健康への被害は目に見えない形でゆっくりと進行する。たかが数年の駐在と言えども、後々の疾病発生に繋がる可能性も否定できないだけに注意が必要だ。
無論、広い中国ではあまり神経質になり過ぎても生活が窮屈になるだけだ。
したがって、大気に関しては、汚染が激しいと思われる日は極力外出を避ける、日本製のマスクを着用する等、水質に関しては、性能の保証された浄水器を利用する、土壌に関しては、農作物への影響が最も懸念されるため、極力「有機」と表示された悩殺もつを購入するようにする等、消費者自身が身を守る心がけが重要であろう。


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中国は日本人にとって住みにくい国になる?Vol.2(物価編)

2014-02-07 | 中国社会学

気まぐれで別の記事(為替関連)を挟みましたが、再びシリーズものへ回帰。
まあ、何だかんだ言っても、経済の動向は読みにくいですからね。
あくまで投資判断は個人責任ということで。

それにしても、「中国は日本人にとって済みにくい国になる?」というタイトルは読者の皆さんの心に響いたようで、いつもよりアクセスが増えております。
これは為替が原因だったのか、それともタイトルどおりなのか・・・?
ある意味、今回の記事のアクセス数が試金石となりそうです。
まあ、良くても悪くても、シリーズを打ち切るつもりはないんですが。。。

さて、第2弾となる今回のテーマは「物価」。
前回取り上げた円安も影響してくるテーマではあるが、ここでは現地でのモノの価格や品質を中心に論じていきたい。

筆者が駐在を開始したのが5年前。
その頃と比べると、物価は確実に上がってます!
もっとも、最低賃金の上昇っぷりはハンパないので、それと比べれば大人しいものですが、こうした物価の上昇傾向は一時的に緩やかになることはあっても、下落に転ずることはないと考えたほうがいい。だって、GDPが毎年7~8%もの率で成長している国ですから。。。


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ここで、具体的なモノの価格で検証していきたい。

一般的な世帯(夫婦+子ども1~2名)の生活を基準に考えると、日々の生活で必要不可欠なのは「卵」だろう。日本でも「卵」は物価の優等生として取り上げられていますよね。
この卵を取り巻く環境、日本と中国では随分と違うってこと、皆さんはご存知ですか?
中国の卵は基本的に生食はNG。そこまでの衛生状態が確保できないんですね。
対して、日本では生食が当たり前。生食できない卵なんて、そもそも売れませんから。たかが卵ではあるが、国が変われば常識がまるで正反対になるから、面白いと言えば面白いですね。
ちなみに、訪日した中国人に卵かけご飯を薦めると、恐る恐る口に運んだ後、その美味しさに感動するという場面に出くわすことがしばしばある。
このように日中で常識の違いがあるものの、駐在が決まったからといって長年続けてきた食習慣を変えるワケにはいかない。そこで、日系の事業者が現地生産をやって、いわゆる日本式の卵を販売しているのだ。
何とも現地の日本人にとっては有難い話だが、ここで問題になってくるのは「価格」。文字通り「安全」に食すことができそうな卵は、5年前で10個パックが24元前後(当時のレートで約300円)。日本では特売で1パック98円なんかで売っているので、その高さというものが分かるというもの。
これが現在、27元前後まで値上がりしているが、昨今の円安・元高で日本円換算すると約460円ということに。日本のプレミアム卵を上回る価格ですね。

次に、日々の食卓に欠かせないのが「牛乳」。
一部、牛乳嫌いの家庭もあると思いますが、ここでは考慮しないことに。
この牛乳に関しても、面白いことに日中で常識がまるで異なる。
日本では「成分無調整」が当たり前だが、中国では「復元乳」という濃縮還元のような手法で製造された牛乳が一般的なので、現代日本人の口に合うような代物ではない。
そこで、アサヒビールが立ち上がり、現地で一貫生産を始めた成分無調整の牛乳が「唯品」というブランドの牛乳。何でも土づくりから拘ってるというだけあって、味はなかなかのもの。
ただ、ここでも問題になってくるのが価格で、5年前で1Lが21元前後(当時のレートで約250円)、現在は24元前後(現在のレートで約390円)という具合に。日本国内での実売価格(200円前後)と比べると、2倍近い価格ということになるから、現地での生活は楽じゃない。

その他、生活に欠かせない米やパンといった主食、お菓子、ジュース、洗剤なども徐々に値上がりを続けている。


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あわせて、日本でも報じられているとおり、不動産価格の高騰も悩みの種。
こうした不動産価格の上昇は、賃貸物件の賃料上昇という形で跳ね返ってきており、駐在員は住まいレベルを落とす方向のプレッシャーに晒されることになるだろう。

中国で仕事、生活を続けていくには、以上のような物価高に対処していく必要があるワケだが、これを克服するには2点の「覚悟」をもつことが重要だと筆者は考えている。

一つ目の「覚悟」は、中国で生活する日本人の「現地化」である。
日本企業が中国への進出を始めた1990年ごろは治安も不安定だったので、日本人専用マンションに高いお金を払って住むというのも理解できたが、いまの上海では政治的リスクを除けば、現地のマンションに住んでも治安と言う面では何の支障もない。駐在員の奥様方から猛烈な批判を浴びるかもしれないが、ここは断言できる。現地に溶け込もうとしない限り、分からないというだけなのだ。
一般的にグレードが同等でも、日本人専用マンションでは賃料が2倍近くになるなんてことはザラである。これも大企業の総務担当者が知らない事実なのだ。
とりわけ大手企業(関連会社を含む)の従業員は無条件にこうしたマンションに入居する傾向が強く、かなりの割合で現地の生活を腰掛け気分で過ごすことが多いように感じる。しかも、ヒラ社員から管理職までほぼ同等の部屋を確保するワケだから、現地スタッフが不平不満を言うのもある程度理解できる。
ちなみに、こうした日本人専用マンションの賃料は2LDKで月当たり2万元(約35万円)、3LDKでは日本円で40万円を超えるというケースも多い。
少なくとも現地の状況を冷静に分析し、職責に見合った賃料の設定を行うべきと言えるだろう。まさに、駐在員自身、及びその家族の覚悟が必要なのである。

二つ目の「覚悟」は、中国でビジネスを展開する日本企業の「本気度」である。
卵と牛乳の例で取り上げたとおり、現在は日本と同等の食材を手にすることが可能となったが、その代償として高コスト負担という重荷を背負わされている。日本人ですら厳しいのだから、一部の富裕層を除く現地の人々には受け入れられる価格帯ではないことは明らかだ。
原材料の安全性や生産管理の難しさ、果ては土壌汚染といった問題を抱える中国で、安全・安心な食品づくりが想像以上に難しいことは理解できる。
でも、このハードルを克服しない限り、巨大な中国の消費市場を席巻することはできない。現在のように「必要なコストを転嫁し、必要とする消費者だけに買ってもらう」というスタンスでは大きな拡がりは期待できないのだ。言葉は悪いが、まさに「日本人の、日本人による、日本人のための食材づくり」となっていないだろうか?
難しいことは重々承知のうえで、現地の人たちが納得して購入できる価格帯で安全・安心がある程度確保されたモノづくりを目指すことを大いに期待したい。
何と言っても、ここは中国企業が最も苦手とする分野なのだから。。。

長きにわたってデフレが続く日本での生活に慣れた我々にとって、物価上昇が避けられない中国で生活を続けることは想像以上に容易ではない。だからこそ、自分たちの現地での向上させ、ひいては中国という国全体の生活向上に資することを目標にする姿勢が求められていると言えそうだ。


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中国は日本人にとって住みにくい国になる?(為替編)

2014-02-04 | 中国社会学

今回から珍しくシリーズ編を展開しようか・・・と。
まあ、完全な思いつきではありますが。

第1弾となる今回のテーマは「為替」。
要は「円安・元高」についてです。
筆者は現在、駐在していないので直接的には関係ないのですが、阿部政権成立前後からの円安には正直、驚いたものでした。何と言っても円安のスピードが想像以上に早かったですから。。。
いま中国で暮らす日本人の方々、とりわけ1ドル75円台の生活を経験したことのある皆様にとっては、ホント「あのころはよかったなぁ・・・」という想いかと思います。
出来ることなら知恵を働かせて、人民元で資産形成しておけばよかったと後悔している面々も多いはず。そう、何を隠そう筆者もその一人。。。
まあ、後悔しても仕方ないですからね、次の機会を狙いましょう!

もっとも、人民元と日本円の関係については、そんなに楽観しできるような状況ではなさそうだ。
日本では、円安・円高の問題が「物価」を中心に報じられることが多い。
これ自体は間違いではないが、こうした物価に跳ね返ってくるというのは為替変動の効果に過ぎず、本質的にはその原因や傾向を掴むことのほうが重要だということに注目すべきだろう。


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では、今回の急激な円安はどのような要因でもたらされたのか・・・?
それを考える前に、少し頭の体操のようなことから始めたい。

まず、筆者の経験を例にとると、中国駐在当初は90円~100円のレンジで推移していたので、自分としてはこのレンジが基準となってるワケです。
その後、80円前後で推移したため、自分が感じている基準より円高ということになり、結果的に「おっ、何か得してラッキー」という気分になっているのです。
で、安部政権発足後、再び90円台に戻ると「円安で損してイヤになっちゃうよー」なんてコトを感じてたワケです。

ここで何が言いたいかと言うと、「人間は最初に見た風景に左右されがち」ということ。
筆者の例では、駐在当初から円高の恩恵を受けたものの、最終的には元の水準に戻ったという感じだが、2007年ごろに海外赴任した方々にとっては、駐在当初のレートが1ドル120円前後。つまり、単純比較ではあるが、いまの水準でもまだ円高だということになるのです(もっとも、一旦すでに円高の恩恵を受けているので、赴任当初と比べる人は少ないでしょうが・・・)。結局のところ、人によって運・不運もあるワケです。

人間は先入観によって大きな影響を受けがち。こうした為替に関する報道も、メディア各社は数日前、数か月前と比べて「円高」とか「円安」という報道しますからね。よく注意して見てないと、結果的に振り回されてしまうことになりかねません、自戒の念も含めて。。。

こうしたことは株式投資やFXなんかにも通じるところがありますね。
改めて、グローバル化の流れを受けて、経済の勉強はしっかりしないと!という感じです。


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全体の流れはこのくらいにして、本題の日本円・中国元の関係について。
いま「円安・元高」が緩やかに進んでいるが、今後はどうなるのだろうか?
あくまで推測に過ぎないが、筆者も多くのアナリストが予測しているとおり、この流れは暫く続くと考えている(最近は少し円高傾向ですが)。

その理由として、まず挙げられるのは、日本の金融緩和政策。
簡単に言えば、日銀及び日本政府は「デフレからの脱却」を謳い文句にして、金融市場に日本円をジャブジャブ供給しているワケです。これは、リーマンショック後に米国が米ドルをドンドン供給したのと同じ手法ですね。当時はこれによって「円高・ドル安」が形作られたんですが、今回は米国政府が金融緩和縮小、つまり金融市場へのお金の供給を減らす方向を明確にしているので、対ドルで考えると「円安・ドル高」の環境は整っていると言えます。

加えて、日本は東日本大震災以降、火力発電に使用する燃料の輸入急増を背景に大幅な貿易赤字が続いています。日本は元来「輸出国家」なので、ひと頃は当たり前のように貿易黒字を計上していたんですけどね。今となっては懐かしいです。

さらに、度々報道されているとおり、日本の財政赤字はかなり深刻。
国と地方の債務を合わせると1千兆円を超えており、その規模は刻一刻と増え続けているのです。もはや返済する術はないのではないか・・・と。

GDPに関しても、このところ横ばい状態。対して中国のほうは7%台に落ちたとはいえ、依然高い水準をキープしている。2010年に日本と中国の順位が逆転したワケだが、その後の円安・元高を反映して、2014年は中国のGDPは日本の倍に達すると言われている。日本人が思っている以上に、数字の面での差は拡がりつつあるのだ。

日本からみると暗い材料ばかりではあるが、これらは全て真実である。簡単に言えば、日本の経済力は緩やかに下降している過程にあるのだ。だが、この局面でもなおアベノミクスで財政支出を増やし続けているので、劇的に経済が中長期的に改善しない限り、持続可能でないことは明らかだろう。

要するに、日本円は比較的安全資産と言われているが、現状を精査してみると、とても安全とは言い難い状況にあるのだ。
したがって、日本円も弱含み、つまり円安傾向を辿ると筆者はみている。
しかも、今度の円安は下手をすると「日本売り」のような事態に発展しかねない。

翻って、中国のほうは内政問題を抱えつつも、基本的には貿易黒字を堅持していくだろう。しかも、人民元は未だに政府によって管理されており、ここ数年は「緩やかな元高」へと誘導する政策を続けている。中国政府は実にしたたかである。

以上、筆者の独断と偏見による結論は、「円安・元高」傾向は避けられないであろうというもの(まあまあ自信があります)。勿論、世界経済は色んな要素で激変しますけどね。

円安に進むとすれば、現地での生活は節約に向かわざるを得ないということになる。中国人の生活水準が改善される中、現地で暮らす日本人の意識も現地化していく必要があるのでは・・・と感じずにはいられない。大変なんですけどね。。。


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一般公用車廃止を決めた中国政府、政府の浪費防止は進むのか?

2013-11-30 | 中国社会学

中国で仕事をしていて痛切に感じるのは、この国は日本と違って「役人天国」だということ。
これまで何度も指摘してきたように、政府部門は国から小さな村まで全て中国共産党。大手企業もほとんどが国有企業、もしくは地方政府系企業なので、元を辿れば皆、公務員。
民営企業も発展してきているが、それとて政府との繋がりなくしては、持続的な発展は難しい。これが中国経済の偽らざる姿と言える。

そのため、政府部門を訪問する場合、ほぼ例外なく公用車が用意され、宴会となると豪華な料理がこれでもかと並ぶことになる。
日本人の感覚からすると恐縮しきりだが、そこは「メンツの国」。
割り勘でも申し入れようものなら、世間知らずとしてバカにされることになる。
まあ、他の場面で恩返しすることになるので、結局は同じなんですけどね。
でも、そういう意味では「古き良き時代の日本」に似たようなところとも言える。
最近、日本ではこういった関係を築くのが難しくなってますからね。特に法人同士の関係は、コンプライアンスとか色々と厄介ですので。。。

そんな中国でも、経済発展に伴って、「役人の浪費」がクローズアップされることに。まあ、当然と言えば当然なんですけど。。。
数年前、役人のあまりにも楽すぎる海外出張が問題になったことがあった。
そもそも、この問題、どうやって明るみになったと思います?
実は、一人の役人が地下鉄にバッグを置き忘れて、そのバッグの中に出張関係の書類が入っていたというもの。
以後しばらくの間、役人の海外出張にはチェックが厳しくなることに。
たった一人のヘマによって、大中国全体が揺さぶられることになるから、世の中はホントに不思議なもんです。


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で、今回、新たな対策として発表されたのが「一般公用車の廃止」というもの。

国務院(中央政府)は11月26 日、中国共産党や政府機関の浪費抑制を目的とした条例を公表し、党員や公務員が使用する一般公用車を廃止することを明らかにした。なお、既存の一般公用車は公開競売などを通じて処分する方針とのこと。

うーん、これで少しは役人天国が改善されるかな・・・。
と思ったら、大間違い。そこまで甘くはないだろう。

よく見ると、この「一般」公用車という表現が、ミソ。
「幹部」の公用車は含まれないと読むのが正しいと思われるからだ。
じゃあ、「一般」と「幹部」の違いは?ってことになると、ここはおそらく運用に任せられるワケで・・・、結局、下々の人間が動きにくくなるってことなのかも。
まあ、民衆に対する言い訳めいたところも多分にあると思うので、とりあえずポーズの意味合いも強いか・・・と。

ちなみに、今後、公用車は政府が集中買い付けを行い、購入するのは国産車に限定、とりわけエコカーを優先するという。
しかし、別の角度からみると、こういった国産車限定ってのはWTO違反に当たらないのだろうか?
不勉強なので確定的なことは言えないが、政府調達の分野では海外に門戸を拡げるっていうのが世界的な流れだと思うんだけど・・・、ここは中国ですからね、期待するだけムダということか。

さらに、幹部の家族や部下に幹部の公用車を割り当てることも禁じるらしい。
このあたりは、少し本気度が見受けられる。
「一般」がダメなら「幹部」の公用車をバンバン買って、部下に横流しすりゃあイイじゃん!って考えるのが、中国社会の常ですから。
コレ、「上に政策あれば、下に対策あり」ってヤツです。


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なお、条例には経費抑え込みを目的に、政府買い付けでブランドや産地を指定することを禁止するとのこと。
ここは「ソデの下」対策の意味合いが強いか・・・と。
ただ、地方政府にとっては、地元で生産している自動車メーカーをバックアップしたいという気持ちが強いだけに、入札の現場では様々な思惑が働くことが大いに予想される。そのあたりも、地方の裁量の範囲内ということかも知れないが。

そのほか、公務での海外出張や会議、接待などに関しても基準、審査を厳格化することを盛り込んでいる。規定に違反して浪費した者には個人の責任を追及することにも触れているようだ。

あとは、どこまで徹底されるか・・・でしょうね。

とはいえ、徹底されれば、今後の自動車販売市場に影響する可能性もある。
たかが公用車市場と言っても、中国には小さな町や村を足し合わせると万単位の地方政府が存在する。
しかも、地方ごとに独特の自動車マーケットが構築されているという事情も相まって、自動車メーカーの戦略にも影響が出てくるかも知れませんね。
日本を含めた海外勢としては、公平・公正なマーケットが形成されるよう、常に目を光らせ、改善すべき点は他国と協力して改善を促していくという姿勢が必要であろう。

何はともあれ、こうした政府の浪費抑制の姿勢が本物なのか、今後も注視していくことにしたい。


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人口問題に着手し始めた中国政府、その成否は・・・?

2013-11-26 | 中国社会学

超久々の更新となってしまいました。申し訳ないです。。。
約2ヶ月ぶりなので、このブログ、もう閉鎖じゃないか?と思った読者も多いかも知れませんね。
この間、途中まで書いた記事もあったんですが、どうも最後まで筆が進まず、諸事に手をとられるまま、更新できずに今日に至ってしまいました。
ということで、辞めたワケではありませんので。

ちなみに、今週以降はソコソコ時間が確保できそうなので、以前ほどではないですが、ボチボチ更新していこうと思っています。
お時間の許す方は時々覗いて頂ければ幸いです。

さて、本日は「人口問題」について。

中国は1990年代の改革開放政策以降、豊富な労働力を背景に「世界の工場」と呼ばれたが、それも今は昔のこと。
2012年、中国は遂に労働人口減少社会に突入することに。
先日開催された中国共産党第18 期中央委員会第3総会(3中総会)で、夫婦のいずれか一方が一人っ子であれば2人目の出産を認めるとしたのだ。
急激な人口増加、大げさに言えば人口爆発を回避するために導入された「一人っ子政策」。ここ20年で驚異的な経済成長を実現しつつも、その人口が13億人程度に抑制されているのは、まさにこの政策の功績と言えよう。
ただ、同時に「人口構造の歪み」という「罪悪」を生じさせたことも事実。
2年ほど前にも、夫婦双方が一人っ子の場合、2人目の出産が認められたが、その効果は今ひとつ。。。
その原因は、後ほど詳述することに。

もっとも、この政策、まずは全国統一とせず各省・自治区・直轄市など行政単位の裁量に任せるとみられている。
北京市が早ければ来年上半期にも全国に先駆けて先行導入する見込みで、まずは所得水準の高い大都市部での反応を見極めながら、全国展開を図っていくものとみられる。
中国の場合、国土がべらぼうに広いですからね。
田舎に行けば行くほど、政策は徹底しません。だって、政府の目が行き届きませんから。
よって、地方では今でも一人っ子政策は形骸化していると言われている。
「戸籍を持たない人」って、まさに農村部で生まれた第二子以降の人たちですからね。こうした人々が、中国の発展を「労働力」という形で下支えしていたワケでして。。。


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さて、今回の政策転換によって、実際のところ、どこまでの効果が期待できるのだろうか?

国家人口計画出産委員会の調査では、一人っ子政策が緩和された場合に2人目の子どもを産みたいと答えた女性は50~60%と高い割合を示した。
いまの子育て世代は、まさに一人っ子政策のもとで生まれた世代なので、兄弟や姉妹というものへの憧れが相当強い。このあたりの感覚は、日本人にはちょっと理解しにくいものがあるだろう。
余談になるが、こうした環境にあるせいか、中国人は懇意になった方々を「お兄さん」、「お姉さん」と呼ぶことが多い。大げさに言うなら、10年もすればアニキ、アネゴだらけといった感じである。
対して「お母さん」や「お父さん」はそれほど増えないので、その憧れの強さが分かるというもの。

こうした事象を鑑みると、今回の政策転換にかなり期待が持てそうな気がしてくるが、現実はそんなに甘くなさそうだ。
実際のところ、政府筋も意向と実際には大きな隔たりがあり、2人目の出産を選択しない女性が多いとみているようだ。俗にいう「理想と現実」というヤツか。。。

筆者なりに状況を分析すると、この理想を阻む要因は以下の3点と考える。

まずは、教育費の問題。
中国はいま、日本人が考える以上に「学歴社会」。
以前、日本社会が体験した「お受験戦争」に勝るとも劣らない世界なのだ。
経済発展著しい中国にあっても、希望する職業に就くことは至難の業。
大学進学率が上昇した現在、日本以上に就職戦線は厳しい。
よって、子どもに掛かる教育費もハンパではない。
月間の学習塾代が日本円で5万円を超えることも珍しくないため、簡単に二人目を生むことはできないのだ。


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次に、女性の社会進出に関連する問題。
中国は、日本と違って「共働き」が当たり前。
女性が若くして管理職に就くことも珍しくなく、日本と違って結婚しても姓が変わることもない。日本も変革の途上にあるが、そもそも女性の意識が違うのだ。
よって、都市部では母乳で育てるなどということは「夢物語」に近いものがある。
働く女性はギリギリまで産休を取得せず、産後半年もすれば、さっさと職場復帰するのである。コレ、現地で生活した肌感覚でいうと、中国人女性は子ども好きではあるが、四六時中、子どもの世話をするのはチョット・・・という方が多いように感じる。これも前述した独立心の強さが影響しているのだろう。
結局のところ、子育てはリタイアした祖父母の手に委ねられることになる。
祖父母にとって、孫は宝のような存在ではあるものの、二人となると世話する労力も倍増。しかも、二人同時に育てたという経験も有しておらず、お断りの姿勢を示す祖父母も多いようだ。

三つ目は、生む側の違和感。
上記の祖父母同様、兄弟・姉妹のある環境で育った経験がないため、どうやって育てたらいいのか、言いようのない不安があるようだ。
まあ、周囲にもそんな家庭が稀にしかないワケだから仕方ない。
だから、日本人が3人も4人も生んだ、あるいは3人もの子供たちと一緒に行動しているというと、中国人にとっては好奇以外の何物でもない。「年齢が近いと、案外、勝手に育つものだ」と言っても、中国人の頭の中は???だらけとなっているらしい。
筆者も駐在時、現地スタッフに「二人目を生むか?」と聞いたことがあるが、ほぼ例外なく「NO!」。
それほど現実は厳しいのである。

上海のような大都市部では、相変わらず不動産価格の高騰が続いている。
終の棲家と同様、二人目の子をもつというのは、まさに「高嶺の花」ということか。。。


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