<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

日本の高級車ブランドの中国市場開拓は進むか?

2013-04-30 | 自動車産業

昨日、上海モーターショーが閉幕した。
同モーターショーは「オートチャイナ」として、北京及び上海で毎年1回交互に開催される中国最大いや世界最大のモーターショーだ。
筆者は中国の自動車市場が世界一の規模になる以前から中国自動車産業に注目してきたが、今年は残念ながら5年ぶりにオートチャイナ(中国モーターショー)を訪れる機会のない年となった。
まあ、既に駐在していませんからね。。。

というわけで、今年の状況はネットから仕入れた情報をもとにする他ありませんが、これまで培ってきた経験をベースに、日系メーカーの今後の行方を占っていきたい。

ご存知のとおり、反日デモが吹き荒れた2012年という年は、日系メーカーにとってはまさに「受難の年」。
あれだけ派手に日本車を破壊される映像が流れたら、どこの国の消費者だって買い控えますよね。
ただ筆者に言わせてもらうと、あれだけの非人道的な行為を行ったのに当時の日本政府がしっかり抗議してないことが、更に事態を悪化させたと思います。もっと「どこの国の購入者であろうと、日本車に乗っているというだけで攻撃されるようなことは許されない。それは、その国を統治する政府の責任だ!」と強く堂々と抗議すべきだったと今でも思っています。

話を戻して、日系メーカーの中国での業績、2013年に入っても芳しいものとは言えない状況が続いている。
これは、日中関係の悪化だけが原因ではないだろう。

とりわけ、日本が得意としてきた高級車市場での苦戦が取り上げられるようになってきた。販売台数ベースで拡大が続く中国市場にあって、日系メーカーは思うように台数を伸ばせていないという現状があるからだ。
例えば、レクサスの販売量は目標の80%、64,000台にとどまっており、インフィニティの販売台数は16%減の16,000台、アキュラの販売台数に至っては42.7%減の2,300台だった。


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こうした状況を受けて、各社が上海モーターショーを機に様々な新しい戦略を発表している。

4月20日、日産自動車は中国において「インフィニティ」の世界戦略車「Q50」と「QX50」を生産することを発表。同時に同社は、自動車市場最大の中国で10年後にはインフィニティ販売が20万台に達するという見通しも示している。現在の販売台数が16,000台であることを考えれば、この数字がいかに強気の見通しであるかがよく分かるというもの。現状はさらに厳しく、インフィニティの在庫は現在5カ月分と、中国の全ブランドの中でもっとも多い数量となっている。よほどのヒット作を飛ばさない限り、工場の稼働率低迷という結果に繋がりかねないだろう。

王者トヨタは、「レクサスの現地生産を検討」と報じられた。
同社は江蘇省常熟市に巨大な研究開発センターを建設しているところからも、中国市場攻略への熱意が見て取れる。
もっとも、同社の生産拠点は北の天津、南の広州となっており、巨大市場である長江デルタでの低迷が続いているのは悩みの種。江蘇省に設置した理由は、まさにこのあたりにあるのかも知れない。
ただ、今回の報道は「現地での部品供給が叶うなら」という条件付き。
高い技術力が要求されるレクサスブランドだけに、現地生産を行う日系部品メーカーでさえ一定の部品レベルを確保するにはまだ時間を要しそうだ。

一方、いち早く中国市場に進出したホンダは、このところシェア低下が目立つ。
その最たる例が、高級車ブランドの「アキュラ」。
同ブランド、日本では販売されていないため、車好き以外は知る由もないが、米国市場などでは十分浸透しているブランド。
ただ、中国では全くと言っていいほどブランド認知されておらず、2012年に至っては42.7%減の2,300台と散々な結果となっている。
こうした低迷の理由はどこにあるのか?
ずばり「現地化の遅れ」とそれに起因する「現地ニーズへの対応力の欠如」の2点と言えるだろう。
同社は起死回生を図るべく、日産と同様、アキュラの現地生産を発表。加えて、デザインコンセプトモデル「アキュラ・コンセプトSUV-X」を世界初公開する等、ブランド露出に躍起だ。


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こうした取組みによって、日本自動車メーカーは世界で最も競争が厳しいと言われる中国自動車市場でシェアを伸ばしていけるのか?
筆者は、今のままでは厳しいと言わざるを得ない。

第一に、アキュラの例で見たとおり、日本メーカーは現地ニーズの把握という面で非常に弱い。
これは、現在の日本自動車市場にも原因があるだろう。
これまで日本メーカーは、自国での自動車生産が最良という観点に立っており、ここで生産された自動車が「ザ・日本車」だったワケだ。
確かに品質という面では、この部分は失われていないと思うが、デザインは各国で嗜好が異なるのも事実。
加えて、中国の家族構成を考えると、ミニバンは売れ筋ではなく、広大な土地を有する中国においては軽自動車という概念はない。にもかかわらず、ホームグラウンドである日本市場で売れ筋となっているのはこの二つであり、中国市場で最も稼げるセダンは日本市場における地位を年々下げていっている。
こうした構造的な変化を考えると、「現地でデザインし、現地で生産する」というのは当然の流れと言えるだろう。

次に指摘できるのは、中長期的な視点に立ったブランド育成という概念の欠如。
現地メーカーが100万円前後のエコノミーカーの分野で激しく競い合う中、日系メーカーは敢えてその領域に踏み込もうとしていないように見える。
日産、ホンダなどでは、合弁メーカーとの間で独自ブランドを立ち上げ、低価格の車を販売しているが、思ったほどの実績を上げるには至っていない。
これはスーパーマーケットにおける「PB(プライベートブランド)商品」のようなものであるため、メジャーな商品になれないということは言うまでもない。
要は過渡的な商品に過ぎず、悪く言えば「ごまかしの商品」なのである。
筆者はいつも思うのだが、日本メーカーは海外に出ると、なぜ急に「安物は作っても勝てない」と言うのだろうか?
どの企業も日本市場で厳しい安売り競争を展開しているではないか?
自動車においても、軽自動車しかり、エコノミーカーしかり・・・である。

日本と同じようなものづくりが難しいことは十分理解できるが、これこそが日本の強みなのだ。
部品メーカーを含め、世界最大の市場での奮起を大いに期待したい。

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2013年第一四半期GDPから勝手に予想する中国経済の行方

2013-04-20 | 中国経済

またしても久しぶりのブログ更新。。。
書きたい気持ちは強いんですが、日本での生活って結構大変なんですよね。
特に、まだ仕事にも慣れていないので。
まあ、そのうちペースを掴むと思うので、今のところはご勘弁のほどを。

さて、今回は久しぶりにマクロ経済ネタ。
と言っても、相変わらずの独断メインですが。

今週15日、中国国家統計局が2013年第一四半期GDPの数値を発表しましたね。
その数値は、実質で前年同期比7.7%増というもの。
相変わらず高水準の経済成長であります。

ただ、前期(2012年第四四半期)の7.9%と比較すると0.2ポイント減速したこと、及び市場予想に反して減速という結果になったということで、日本のマスコミはこぞって「中国経済、曲がり角では・・・」との論調を強めています。
まあ、相変わらずではありますが。。。

以前にも言及したとおり、マスコミ報道というのは基本的にどっちからでも書けるものなんですよね。
なぜって、コレが仮に8.0%を超える数値だったとしたら、インフレ率など都合のいい統計データを集めてきて「中国経済、インフレ・不動産バブル懸念が再燃」などと報道するのは容易に予想できますから。
もうそろそろ真っ当に「経済」を伝えるメディアに登場してもらいたいと思うのは筆者だけではないと思うんですよねぇ。。。
誰かホント、頑張ってください!

余談はさておき、ここからは持論の展開です(あしからず)。


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最初に、中国経済は日本のマスコミが報道するとおり、減速しているのか?
これについては、どっちつかずの回答になるかも知れませんが、「当たっていて、外れている」というのが筆者の見解。

この「当たっている」部分というのは、過去と比較してのこと。
確かに中国のGDPは、2003年から5年連続で10%台という驚異的な数値を記録し、2007年にはドイツを抜いて世界第三位に浮上。
リーマンショックの影響で、一時は9%台に低下(それでも高水準)したものの、2010年には4兆元という巨額の財政出動もあって10.4%と再び大台を記録し、この時点で日本を抜いて世界第二位の経済大国の座を掴むことになった。
そして、ここ2年は、2011年は9.3%、2012年は7.8%という具合に数値としては鈍化している。

こうした事実を見ると、なるほど「減速」を裏付けることになるワケだが、それはあくまで「過去」との比較に過ぎない。
通常、「減速」という言葉には「負」のイメージがつくため、日本のデフレのように「かなり悪くなっている」と思うのが一般的。
そうしたイメージと現在の中国経済の状況が重なるか?と言われると、それは違うと言わざるを得ないというのが筆者の見解だ。

加えて、「成長率」というものの特性にも注目しておく必要があるだろう。
ご承知のとおり「成長率」は前年との比較で決まるもの。
中国経済のように、毎年、毎年、驚異的な数値を記録していると、その成長率に対するハードルはドンドン高くなっていくことになる。
そう考えると、ここまで規模が大きくなった中国経済が、以前のような10%前後の成長率を維持することのほうが異常であり、仮にそのようなことになった場合は、その反動でインフレや資産バブルがかなり進行するということが予想され、中国政府が最も懸念する「貧富の差の拡大」、「民衆の怒り爆発」という最悪の事態も想起されることになってしまう。
ありとあらゆる方法を駆使してマクロ経済をコントロールしようとしている中国政府が、よもやこんな簡単なミスを犯すことはないでしょう。
そこに、この7%台という一種の心地よさがあると思うワケです。


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もっとも、今後ずっとコントロール出来るのかというと、そこは懐疑的だと筆者も思っている。

これだけ規模が大きくなると、逆に世界経済の動向によって影響を受ける度合いも大きくなる。現に、欧州経済不調の影響で、輸出は低迷気味。日中関係の悪化を受けて、日中間の貿易も湿ったままだし、米国企業の本国回帰といった動きも見受けられる。
地理的に隣接する東南アジアの成長を取り込もうとする動きもあるが、元々中国との繋がりが強い地域であり、経済規模という面では欧米・日本と比べるとまだまだ大きくはない。
中国経済が一歩ずつ階段を上れば上るほど、その舵取りは難しさを増すという構図が見て取れる。

もうひとつ、心配なのが「内需」の伸び。
これまで富裕層を中心に消費の拡大が続いていたが、最近は消費者も理性的な消費行動に移ってきたように感じられる。
ひと頃のように「ドカ買い」関連の報道は見られなくなっているし、消費関連企業の業績の伸びが低迷しているというニュースも増えている。

加えて、現政権が打ち出している「公費支出の抑制」は、日本人が思っている以上に打撃が大きそう。
政府関係部門は、この方針が打ち出されるまで、毎晩のように宴会を繰り広げていたのに、今や食事なしの会議というのが日常化しつつあり、飲食関係やホテルといった業種は完全に見込み違いの状況に陥っているようだ。

こうした方針、一度打ち出すとそう簡単に引っ込められないというのも悩みの種。
日本でも「官官接待」が問題となった時期があったが、今ではこうした慣習は完全に無くなっていることを考えると、中国も同じような状況になる可能性は十分にあるだろう。

とは言え、現政権が公約として掲げている「通年で7.5%成長」という政府目標は、どのような手段を使ってでも達成するだろう。
これは、高速鉄道や高速道路の建設といった政府主導のインフラ整備が再び加速していることを見れば明らかなこと。
中国政府が自ら己のメンツを潰すなんてこと、絶対にありませんから。

ただ、日本としては、中国のこうした状況を嘲笑っている余地はない。
両国の経済成長率が今のまま推移したとすると、2015年には中国経済は日本の1.5倍、その5年後には2倍にも達すると言われているからだ。
まずは自国経済をどうするのか、アベノミクスへの期待が強いだけに、今後、実体経済がどの程度上向いていくのか、注目していきたい。


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今日から再開、心機一転(中国での鳥インフルから)

2013-04-07 | 中国社会学

帰任して2週間。
本拠地に戻ったとは言え、3年半のブランクは大きいですね。
何もかもが微妙に変化していて、何より自由を奪われたような感じで、生活自体に余裕がなくなっているように感じます。
まあ、仕方ないことではありますが。。。

中国関連の情報を収集して、今までのように独断と偏見を交えながら論じていきたい想いは強いのですが、やっぱり日常の仕事などに忙殺されてしまいます。
でも、このあたりは慣れだと思いますので、徐々に解決していくのでは・・・と思っています。

タイトルについては、いろいろ考えましたが、メインのタイトルは慣れ親しんだ「中国サイコウ」のままで続けることにしました。
サブタイトルは、実情に合わせて変更しましたので。
こう考えると、どちらかと言うと「中国との関係から日本を論じる」場面が増えそうですね。現時点では何も考えていない、って言うか、今までも深く考えてブログを更新してきたワケではないですから、まあ自然体で続けます。

さて、本日は日本でも話題の「鳥インフルエンザ」について。
日本のマスコミというのは面白いもので、鳥インフルの話題が出て以降、めっきりPM2.5関連の報道が減っています。言い方を換えれば、旬を過ぎたワケでしょうね。

もっとも、この中国での鳥インフル発生、日本人の皆さんが思っている以上に結構深刻な事態になるのでは・・・と筆者は考えている。
その理由のひとつが、中国の食習慣。
中国では、食肉における序列のようなものがあって、鳥肉→豚肉→牛肉という順でランクが高くなる。価格面でいうと、鶏肉と豚肉はあまり大差ないのだが、庶民の感覚からすると「豚肉のほうが鳥肉よりマシ」との感があるらしい。
これを裏返して考えると、それだけ庶民の間に根付いている食材だということ。

次に、あえて「鳥肉」という表現にしたのは、鳥の種類が多いから。
日本の場合、日常的に食すのは「鶏肉」と決まっているが、中国では鶏肉がメインとはいえ、鴨や鳩、ウズラ等、レストランなどでも一般的に食される食材が圧倒的に多い。
つまり、日本のように養鶏場だけに注目すればいいという環境にないため、感染源を特定することが非常に難しいのだ。

最後に、「生きた状態で購入して、その場で食肉として処理する」という文化。
このあたりは、日本人のみが住人の住居で生活している駐在員には馴染みがないかも知れないが、中国ローカル社会では極めて日常的な光景。
最近でこそ少なくなってきたが、現在でも路上のマーケットなどで鉄製の鳥かごにギッシリと鳥が詰め込まれ、客の品定めによって一匹ずつ処理されていく姿がよく見受けられる。
しかも、こうした鳥肉を処理する市場は低所得者層が多い地域に集中しているため、長引けば長引くほど抑制が効かなくなる可能性がある。
つまり、日本人が思っている以上に、庶民が生きた鳥類と触れ合う機会が多く、中国固有の社会構造も相まって、その抑制は容易ではないのだ。

日本は隣国として、感染拡大が懸念される。
日中関係が悪化し、以前ほど人の往来が多くないとは言え、やはり両国間には頻繁に人が往来している。

日本及び日本国民は、もう少し自分たちの問題として考え、しっかりとした対応策を検討しておくべきだろう。


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