昨日、上海モーターショーが閉幕した。
同モーターショーは「オートチャイナ」として、北京及び上海で毎年1回交互に開催される中国最大いや世界最大のモーターショーだ。
筆者は中国の自動車市場が世界一の規模になる以前から中国自動車産業に注目してきたが、今年は残念ながら5年ぶりにオートチャイナ(中国モーターショー)を訪れる機会のない年となった。
まあ、既に駐在していませんからね。。。
というわけで、今年の状況はネットから仕入れた情報をもとにする他ありませんが、これまで培ってきた経験をベースに、日系メーカーの今後の行方を占っていきたい。
ご存知のとおり、反日デモが吹き荒れた2012年という年は、日系メーカーにとってはまさに「受難の年」。
あれだけ派手に日本車を破壊される映像が流れたら、どこの国の消費者だって買い控えますよね。
ただ筆者に言わせてもらうと、あれだけの非人道的な行為を行ったのに当時の日本政府がしっかり抗議してないことが、更に事態を悪化させたと思います。もっと「どこの国の購入者であろうと、日本車に乗っているというだけで攻撃されるようなことは許されない。それは、その国を統治する政府の責任だ!」と強く堂々と抗議すべきだったと今でも思っています。
話を戻して、日系メーカーの中国での業績、2013年に入っても芳しいものとは言えない状況が続いている。
これは、日中関係の悪化だけが原因ではないだろう。
とりわけ、日本が得意としてきた高級車市場での苦戦が取り上げられるようになってきた。販売台数ベースで拡大が続く中国市場にあって、日系メーカーは思うように台数を伸ばせていないという現状があるからだ。
例えば、レクサスの販売量は目標の80%、64,000台にとどまっており、インフィニティの販売台数は16%減の16,000台、アキュラの販売台数に至っては42.7%減の2,300台だった。
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こうした状況を受けて、各社が上海モーターショーを機に様々な新しい戦略を発表している。
4月20日、日産自動車は中国において「インフィニティ」の世界戦略車「Q50」と「QX50」を生産することを発表。同時に同社は、自動車市場最大の中国で10年後にはインフィニティ販売が20万台に達するという見通しも示している。現在の販売台数が16,000台であることを考えれば、この数字がいかに強気の見通しであるかがよく分かるというもの。現状はさらに厳しく、インフィニティの在庫は現在5カ月分と、中国の全ブランドの中でもっとも多い数量となっている。よほどのヒット作を飛ばさない限り、工場の稼働率低迷という結果に繋がりかねないだろう。
王者トヨタは、「レクサスの現地生産を検討」と報じられた。
同社は江蘇省常熟市に巨大な研究開発センターを建設しているところからも、中国市場攻略への熱意が見て取れる。
もっとも、同社の生産拠点は北の天津、南の広州となっており、巨大市場である長江デルタでの低迷が続いているのは悩みの種。江蘇省に設置した理由は、まさにこのあたりにあるのかも知れない。
ただ、今回の報道は「現地での部品供給が叶うなら」という条件付き。
高い技術力が要求されるレクサスブランドだけに、現地生産を行う日系部品メーカーでさえ一定の部品レベルを確保するにはまだ時間を要しそうだ。
一方、いち早く中国市場に進出したホンダは、このところシェア低下が目立つ。
その最たる例が、高級車ブランドの「アキュラ」。
同ブランド、日本では販売されていないため、車好き以外は知る由もないが、米国市場などでは十分浸透しているブランド。
ただ、中国では全くと言っていいほどブランド認知されておらず、2012年に至っては42.7%減の2,300台と散々な結果となっている。
こうした低迷の理由はどこにあるのか?
ずばり「現地化の遅れ」とそれに起因する「現地ニーズへの対応力の欠如」の2点と言えるだろう。
同社は起死回生を図るべく、日産と同様、アキュラの現地生産を発表。加えて、デザインコンセプトモデル「アキュラ・コンセプトSUV-X」を世界初公開する等、ブランド露出に躍起だ。
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こうした取組みによって、日本自動車メーカーは世界で最も競争が厳しいと言われる中国自動車市場でシェアを伸ばしていけるのか?
筆者は、今のままでは厳しいと言わざるを得ない。
第一に、アキュラの例で見たとおり、日本メーカーは現地ニーズの把握という面で非常に弱い。
これは、現在の日本自動車市場にも原因があるだろう。
これまで日本メーカーは、自国での自動車生産が最良という観点に立っており、ここで生産された自動車が「ザ・日本車」だったワケだ。
確かに品質という面では、この部分は失われていないと思うが、デザインは各国で嗜好が異なるのも事実。
加えて、中国の家族構成を考えると、ミニバンは売れ筋ではなく、広大な土地を有する中国においては軽自動車という概念はない。にもかかわらず、ホームグラウンドである日本市場で売れ筋となっているのはこの二つであり、中国市場で最も稼げるセダンは日本市場における地位を年々下げていっている。
こうした構造的な変化を考えると、「現地でデザインし、現地で生産する」というのは当然の流れと言えるだろう。
次に指摘できるのは、中長期的な視点に立ったブランド育成という概念の欠如。
現地メーカーが100万円前後のエコノミーカーの分野で激しく競い合う中、日系メーカーは敢えてその領域に踏み込もうとしていないように見える。
日産、ホンダなどでは、合弁メーカーとの間で独自ブランドを立ち上げ、低価格の車を販売しているが、思ったほどの実績を上げるには至っていない。
これはスーパーマーケットにおける「PB(プライベートブランド)商品」のようなものであるため、メジャーな商品になれないということは言うまでもない。
要は過渡的な商品に過ぎず、悪く言えば「ごまかしの商品」なのである。
筆者はいつも思うのだが、日本メーカーは海外に出ると、なぜ急に「安物は作っても勝てない」と言うのだろうか?
どの企業も日本市場で厳しい安売り競争を展開しているではないか?
自動車においても、軽自動車しかり、エコノミーカーしかり・・・である。
日本と同じようなものづくりが難しいことは十分理解できるが、これこそが日本の強みなのだ。
部品メーカーを含め、世界最大の市場での奮起を大いに期待したい。
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