<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

上海地下鉄事故の報道を考える

2011-09-30 | 中国社会学


9月27日午後、上海市地下鉄10号線で追突事故が発生し、260人超の負傷者が出た。
死者がひとりも出なかったことは、まさに不幸中の幸いといったところか。



筆者はたまたま一時帰国中だったため、現地の状況を肌で感じることはできなかったが、実際のところ、1年ほど前にも地下鉄1号線で事故が発生しており、大きな驚きを感じることはなかった(これも現地化の一種かも・・・)。

しかし、日本の報道ぶりは凄まじかった。
その速報ぶりには現地のメディアも舌を巻いたとの話があるほどで、こちらに駐在している日本人よりも情報入手が早かったという話も多く聞かれた。
これは素晴らしいことではあるが、もっと報道すべき問題もキチンと報道すればいいのに・・・とも感じてしまった。とにかくゴシップネタに飛びつく姿勢だけは尋常ではないので。

現地では、先日の新幹線事故と同様、微播(マイクロブログ)が威力を発揮し、メディアの取材を待つことなく、現場の状況がリアルタイムに報じられたわけなので、本当にIT社会畏るべしである。

ちなみに、筆者は先日、台風が東京を襲った際に日本でも同じような経験をした。
台風の接近に伴って、どんどん公共交通機関がストップしていくわけだが、公式HPやポータルサイトの情報はリアルタイムではなく、正確さに欠ける。
現場に居合わせた人間にとっては、5分の違いで電車に乗れるか、乗れないかの切迫した問題であるにもかかわらず、このあたりの対応は日本でも未だに後手後手なのだ。
これをカバーしたのは、やはりツイッターだった。
実際の駅から発信される現場感のある情報によって、どれだけの人が助けられたか、想像に難くない(結局、筆者は帰宅難民となったが・・・)。

日本のメディアは一斉に「新幹線事故の教訓が生かされず、またも同じミスを繰り返した」との報道を連呼している。確かにごもっともな指摘である。
ただ、新幹線と地下鉄が同じ鉄道だからという括りで論じるのは、少々乱暴な面もあろう。
例えば、日本でJRが事故を起こした後、私鉄が別の事故を起こしたとしても、同じような報道は起こらないはずだ。
とりわけ、この広い中国において、一元的に責任を負わせるのは無理な話なのだ。

日本に住んでいる皆さんは、中国は共産党独裁政権だから、公共インフラは何でも国が運営していると誤解しがちだが、実際はその逆と思っていいくらいだ。
勿論、鉄道部が運営する鉄道(日本の国鉄に当たる)は国有だが、上海市地下鉄などは日本の東京メトロなどと運営形態が似通っている。
その他、市民の足であるバスも民間事業者が運行しているし、高速道路に至っては香港市場に上場した企業が運営を行っている例さえある。
まさに「知らぬは恥」の世界である。

現在、事故原因の究明が行われているが、またもや信号設備の不具合で片付けようものなら、あまりにも露骨な「トカゲのシッポ切り」なので、さすがに市民も黙っていないだろう。

とはいえ、日本の原発事故報道はどうだったのだろうか?
冷静にふり返ると、海外への正確な情報発信などの点で恥じるべき点が山ほどある。
他国の欠点の指摘するのも必要だが、自国の状況をいま一度検証し直すという真摯な姿勢も必要ではなかろうか・・・。

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中国の自動車販売に陰り

2011-09-27 | 自動車産業


中国の自動車販売に異変が生じつつあるのは既報のとおりだが、最近のデータをみると、更に危うい状況が垣間見える。

今年上半期の自動車生産台数は前年同期比2.48%増の915万6000台、販売台数は同3.35%増の932万5200台と、どちらも微増にとどまった。
しかも、上半期決算では上場メーカーの半数以上がマイナス成長となってしまったから、年間2000万台を超えるとの予想はいずこへ・・・といった感じである。

企業別では、上海汽車と長城汽車が業績を伸ばしたものの、一部メーカーが微増となった以外は軒並み大きな下落となっている。
とりわけ落ち込みが目立つのが自主ブランドメーカーだ。
内陸部の雄、長安汽車の利益は前年同期比24%減、電気自動車開発で注目を集めるBYDにいたっては88%以上も利益を減少させている。
BYDの現状は、予想以上に深刻な様子。
過去1年足らずの間に3回の人員整理を行ったうえ、さらに最近も1000人規模の大型リストラが計画されるなど、経営規模縮小の動きが加速している。
もともと自動車製造は、手間とコストがかかるものだが、同社は電池製造で培った低コストモデルを自動車生産に持ち込み、一躍トップ10入りを果たした。
が、当初からパクリ疑惑が絶えず、技術レベルも怪しいとの噂が根強かったが、産業全体の伸びが鈍化する中でこうした懸念が一気に噴出する格好となってしまった。

同社に限らず、現在苦境に陥っているのは、これまでの省エネ車への補助の恩恵を大きく受けていた企業群。
現行の補助金政策は9月末で終了し、10月からは更に10%ほど燃費性能を向上させたものでなければ補助対象とならず、中小自動車メーカーからは悲鳴が上がっているようだ。

さらに来年度からは「ユーロ5」相当の環境規制が導入されるとの噂が伝わっており、これが実際に実施されることになれば消費へのダメージは計り知れないだろう。

こうした中、また一つ注目に値するニュースが飛び込んできた。
富裕層の増加が続く中国において好調を維持していたメルセデス・ベンツが、ここに来て販売実績を大幅に落としているというのだ。

今年、中国自動車市場全体の成長率が鈍化したにもかかわらず、高級車の販売台数は急増していた。中国のメルセデス・ベンツ販売台数は今年前半、60%近く増加した。中国は既に同社旗艦モデルのセダン「Sクラス」の最大市場となっている。
しかも、中国のメルセデス・ベンツ販売台数全体の7割近くはドイツからの輸入車だ。
他の海外メーカーが合弁会社の生産する車(当然、本国で生産する車より劣る)で勝負せざるを得ない状況とは対照的なのだ。

高級ブランド品の販売状況には変化がないとも伝えられているが、高級車と比べると価格の桁が一つ二つ違う。
悲観的に考えれば、中国にも不況の波がじわじわと押し寄せているとも言える。

筆者は以前から「2012年は正念場の年になる」と訴えてきた。
先進国の財政事情を鑑みると、リーマンショック後のような景気対策は打てず、しかも昨今の景気対策で需要の先食いを行ってしまったため、このまま不況に陥った場合には「処方箋すら書けない状況」となってしまうのは目に見えている。

自動車や住宅が売れなくなるというのは、相当憂慮すべき事態である。
しかし、中国経済がバブル崩壊を回避するには、いまの政策を簡単に緩和するわけにはいかない。
この悩ましい状況、一気に悪化しないことをただ祈るばかりだ。

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中国ビジネスホテル事情 パート3(市場拡大と今後の課題)

2011-09-20 | ビジネスホテル
前回までに引き続き、今回もビジネスホテル業界について。



どんどん増えていくビジネスホテルだが、どこまで市場拡大は続くのか?
業界関係者の予想では、少なくとも2015年までは右肩上がりの成長が続くのでは・・・とのこと。
ただ一方で、この業界では店舗数が売上げに比例するという単純な構図が出来上がっている。つまり、業界内のサービスが均質化しており、消費者にとっての選択基準は立地とコストしかなくなっているのが現状だ。
こうした状況はいつまでも続くものではなく、来るべき市場の飽和を見込んだ「差別化」が今後の課題となろう。

では、その差別化とはどういったものなのか?

第一に、やはりどこまでも低価格を追い求めるという発想。
人件費や不動産価格の上昇が続く中国にあって、この課題を永続的に克服していくのは並大抵のことではない。
しかし、錦江之星や漢庭など一部の大手は、部屋の面積を大幅にカットし、サービスやアメニティ類を徹底的に簡素化した低価格の店舗の展開を開始している。
この辺りは、まさしく日本のデフレ・ビジネスを参考にしたといった感じ。

第二に、「費用対効果」の観点からサービス水準の向上を図るという発想。
これも言うは易しで、この国でサービス水準を長期にわたって維持するのは簡単ではない。なにせ、人の入替りも半端無いから、教えた端から辞めていくというような状況。。。
しかも、大手ビジネスホテルの価格帯が250元(約3,000円)前後となったことで、この価格帯は中小ホテルチェーンや老朽化した3ツ星ホテルなどが鎬を削る最大ボリュームゾーンとなってしまった。
実際、北京などでは桔子酒店(オレンジホテル)という地場ホテルチェーンが10店舗近くを展開し、大手よりも清潔感のある部屋を提供するなど、新たな動きも見受けられる。

そして第三に、事業の多角化が挙げられる。
これは、先進国における各種産業が通ってきた道だが、この業界も早晩その方向に向かうことになりそうだ。
実際、大手ホテルチェーンの経営者は、携程旅行網(C-TRIP)の創業に関わった人物が多く、ホテル経営とあわせてネット予約分野の拡大を目指す企業が多くなってきた。
実際、最大手の如家などは自社会員を2,000万人以上抱えていると言われ、他社もあの手この手で会員の獲得に精を出している。
ちょっと以前まで、C-TRIPの画面には大手ホテルチェーンの店舗がズラリと並んでいたが、最近では手数料支払いを嫌って、自社サイトのみの販売に切り替えている企業も多いようだ。
しかし、そうは言ってもネット予約の分野ではC-TRIPが圧倒的な力を誇っており、ここでシェアを勝ち取るのは簡単ではない。
C-TRIPは、日本における楽天トラベルと同じようなモデルだが、国が大きいだけにビジネスモデルはこちらのほうが上かも知れない。
同社のことを語ると長くなりそうなので、いつか詳しく取り上げることにしたい。

ビジネスホテルチェーンは、規模がモノを言う世界。
それだけに、今後もM&Aを繰り返しつつ、サービスレベルを向上させていくことだろう。
利用者のひとりとして、更なるレベルアップを期待したい。

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中国ビジネスホテル事情 パート2(各社イメージ)

2011-09-16 | ビジネスホテル
北京出張でバタバタしていたので、ブログ更新が遅れてしまった。。。
気を取り直して。

今回は、大手ビジネスホテルのイメージや戦略を、実体験も交えながら推測したい。

前回言及した6強のうち、私自身は錦江之星と漢庭酒店の2つしか宿泊した経験がない。他の4つを避けているわけではなく、これまで縁が無かったというのが正直なところ。
したがって、ここからは宿泊経験のある他人の評も踏まえることにしたい。

まず、最大手の如家酒店。
黄色がシンボルカラーなので、どこの都市に言っても目立つが、その反面、安っぽい印象が拭えない。
日本で言うと、どことなくラブホテルっぽい感じがするのだ。

これは莫泰(MOTEL)酒店にも通ずるところがある。
ホテル名そのものを見ても、明らかな感じがするが・・・。

しかし、この2社チェーンは、どちらかというと目立つ場所に立地する傾向が強いように感じる。ブランドが定着しているせいもあるが、外観や看板が統一されているため、数回見ただけで認知してしまうのだ。

7天も如家と同じく黄色をシンボルカラーとしているが、立地条件やブランド定着度の低さもあって、どことなく目立たない。
フツーのおばさん風の勧誘員が、路傍で机を出して会員を募るなど懸命な営業活動を続けるが、これが却って安っぽさを助長する。
また、上海など大都市での認知度の低さからみると、もともと地方都市から展開し始めたのでは・・・と推測している。

錦江之星は錦江グループが展開するチェーンだけに、イメージは白で統一され、簡素・清潔を売りにしている。
大手ホテルが手掛けるとあって、業界首位は揺るぎないとの見方もあっただけに、後塵を拝している現在の状況は意外でもある。
見方を変えれば、業界を知りすぎていたことがアダになったということか。
私の宿泊した感じでは、「内装は簡素・清潔で日本のビジネスホテル並みだが、いかんせん水回りが弱い」との印象。
特にシャワーヘッドのパッキンが外れかけていて、水がまっすぐ出ないということが二度あった。
勿論、この体験が全てに当てはまるとは思わないが、二度もあるということは無視できない事実でもある。

漢庭は馬をモチーフにした看板が目を引くが、こちらは古いホテルをどんどん買収してチェーン化していった感が強い。それ故、全体にわたって統一感が乏しく、古臭いという印象が拭えない。
私が宿泊した部屋など、一応キレイではあったが、日本のビジネスホテルよりも狭かったことがあり、「大きいことを良し」とする中国でもこのモデルが通用するのか・・・と逆に面食らったくらいだ。

最後の紹介となったが、格林豪泰はもっとハッキリしていて、大都市の都心部ではほとんど見かけることがなく、都心から離れたところで「安くてキレイ」を売りにしている感が強い。
そのため、住宅街の一角にポツリと立地しているなんて例も見受けられる。

以上はあくまで筆者の推測の域を出ないが、日を追うごとにレベルが向上しているのは疑いようがない。ただ、全国的な人件費の高騰や人不足を背景に、以前のようにコストメリットを前面に打ち出す戦略は限界に達しており、各社とも利益率の向上に向けた取組みを強化している。
その辺りも含めて、次回以降に考察を進めたい。

中国ビジネスホテル事情 パート1(市場概観)

2011-09-13 | ビジネスホテル


いまから20年ほど前、中国で一人旅を出来ればかなりのツワモノと言われたそうだ。
確かに改革開放以前の中国を旅するというのは、大げさに言えば現在の北朝鮮を旅するようなものなので、その苦労は並大抵のものではなかっただろう。

こういった悪いイメージというものは、時が経ってもなかなか払拭されないものだ。しかも外国となれば、情報も限られているので、当然といえば当然か。。。
筆者が中国を訪れる日本の方々と接していて、いつも感じるのは、「中国を訪れた時期が異なれば、個々人の中国に対するイメージが全く違う」ということだ。
だから、十数年前に一度だけ中国を訪問したことのある人は「ヒドイ国だ」と言うし、つい最近初めて中国を訪れた人は「大都会でビックリした」と言う。
ま、どちらも本当なんですけどね。。。

余談はさておき、今回は中国のビジネスホテル事情をレポートしたい。

筆者も中国国内を出張する機会が多いので、最近はビジネスホテルにお世話になることも多い。
日本からの短期出張であれば、5ツ星や4ツ星の高級ホテルでも構わないが、毎日生活していれば、そこへの価値観は薄れていくもので・・・。

ここで、中国のビジネスホテル業界を外観したい。
この業界もご多分に漏れず、急速な経済発展による旺盛な宿泊需要に支えられて大躍進したわけだが、いま市場では6強と呼ばれる大手とそれ以外という構図が定着化してきた。
この6強とは、如家酒店(HomeInn)、7天酒店、錦江之星、漢庭酒店、莫泰酒店(Motel)、格林豪泰(GreenTreeInn)のこと。
6強は内陸部や中小都市への出店攻勢を仕掛けるとともに、規模のメリットを追及すべく積極的なM&Aを展開している。
こうした中、6強の一角が敵の牙城に堕ちた。
数ヶ月間の買収交渉を経て、今年5月、莫泰酒店(Motel)が如家酒店(HomeInn)に4.7億ドルで買収されることが発表されたのだ。この買収により、如家は既存の484店舗に莫泰の282店舗を加えることになり、総店舗数が1,000店を突破した。



この買収劇を仕切ったのは、莫泰の約59%の株式を保有していたモルガン・スタンレー。やはり経済の現場では、中国と米国はもはや切っても切れない関係ということか。。。
しかし、この買収劇、当初のオファー10億ドルから半値以下での決着になったわけだから、業界では「如家はいい買い物をした」との評判が専らだ。いやはや中国の商魂たくましさには米国もお手上げといったところかも。

とはいえ、6強の各社にとって、米国は重要なパートナー以外の何物でもない。
親会社が大手ホテルチェーンの錦江之星は別として、資金繰りの観点から米国は無視できないからだ。
その証拠に、如家酒店(HomeInn)、7天酒店、漢庭酒店はNY証券取引所に上場しており、格林豪泰(GreenTreeInn)も近く上場を果たすと言われている。
こうした資本形成の部分で隣国/日本が果たすべき役割が小さいのは悲しい限りだが・・・。

次回以降、もう少し細かくチェーンごとに考察を進めたい。

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