<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

中国の自動車市場

2011-04-30 | 自動車産業
今日、何気なく道を歩いていて、ふと気がついたことがある。
道路の両側にビッシリと路上駐車してある車の車種をみると、結構日本メーカーの車が目につくではないか!
これは5,6年前と比べると明らかな違いと言っていい。

中国のどこの都市でもそうだが、一般的にその都市に生産拠点を有するメーカーが強いという傾向がある。上海であれば上海汽車、重慶であれば重慶長安汽車、天津であれば天津一汽豊田といった具合だ。
とりわけ上海汽車は、中国で最も売上げを上げているメーカー。
傘下に上海GM、上海VW、上海五菱GMの3社を擁し、全社とも昨年は年間100万台以上の売上げを記録するほどのメーカーだ。

昨年、中国は米国を抜き去り、世界最大の自動車市場となった。
販売台数は1800万台超。今後も増え続けると予想されている。

4月21~28日に開催された上海モーターショーは、史上最大の23万㎡という巨大な展示面積を誇り、来場者数も延べ70万人を超えた。
世界各国の自動車メーカーが最新モデルを一堂に展示する様子をみるにつけ、自動車市場の革命的な変化を感じずにはいられない。わずか5,6年前には500万台程度の市場に過ぎず、海外メーカーのコピーが横行する市場として名を馳せていた市場なのだから。。。
当時は、なんだかんだ言っても米国が自動車産業の盟主だった。
当然ながら、米国で開催されるモーターショーに合わせ、各国の有力メーカーは競い合うように新型車を発表していた。それが今回、偶然ながらも開催日程が重なったNYモーターショーは全く盛り上がらず、次回以降は開催日程を事前に調整することを申し合わせたというから驚きだ。まさに、主役交代を象徴する出来事と言ってよい。

このように、順風満帆に見える中国自動車市場だが、課題も山積みというのが偽らざる現状だ。
特にエンジンやトランスミッション等の基幹部品にかかる技術水準は、欧米・日本に遅れをとっており、その差はなかなか埋まらない。今回の東日本大震災の影響で、日本の自動車生産は大きな影響を受けているが、中国の自動車メーカーへの影響がこれから顕在化するとの見方が出ている。つまり、それくらい日本に依存しているということになる。

加えて、中国は自動車産業を重点分野と位置づけ、海外メーカーが独資で生産することを認めない方針をとってきた。そのため、中国で走っている海外ブランドの自動車は、一部の輸入車(レクサス等)を除き、中国との合弁企業が中国で生産したものということになる。
本来、規模の面からみて有力であるはずの大手国有企業(第一汽車、上海汽車、東風汽車等)は未だに合弁ブランドの売上げに依存した状態が続き、自社ブランドのブランド力向上は政府の掛け声どおりに進んでいない。

日本は少子高齢化が進み、若者も「嫌消費世代」などと言われる。
車が大量に売れる時代は終焉したと思ったほうがいいだろう。
それだけに、日本メーカーがとるべき戦略は「現地化」ではないか?
現地の人々に愛される車を現地で生産すること、ひいては中国ならでは技術も開発していく姿勢が重要ではないか?

次回以降は、上海モーターショーの見聞も交えながら、自動車市場の考察を続けたい。

中国経済、2016年に米国抜く?-IMF予測

2011-04-29 | 中国経済
新華網によると、国際通貨基金(IMF)は「中国の経済規模が購買力平価ベースで2016年に米国を抜く」と予測したとのこと。IMFが「米国時代」の終焉時期を予測するのは初めてだ。

予測だけにこのとおりになるとは限らず、両国の経済システムが異なることもあって、正確な時期を予見することは難しいが、大きな流れは変わらないということか。
実際、この予測が出る前にも、各種経済研究機関は2020年前後に中国、米国の首位交代があり得るとの見方を示していた。

巷では「2012年問題(各国首脳が一斉に交代する可能性がある)」が議論されているが、この観点から考えると、両国の次期トップは「歴史的な転換期」に直面することになる。
果たして、中国は世界経済の盟主たり得るのか・・・?
世界中の人々が不安を抱くのも無理はない。中国経済の実態は、あまりにも分かりにくく、通常の資本主義国家とは異なる部分が多いからだ。

おそらく中国は、現体制を維持したまま、世界最強の経済大国への道を歩んでいくだろう。
しかし、実態を見つめなおすと、これだけ大国になったにもかかわらず、1人当たりGDPでは発展途上国並みとなるなど、これまでの先進諸国で経験したことのない状況を有している。
加えて建国以来、中国共産党が一貫して政権運営を担っており、欧米諸国が求める民主化の推進は、遅々として進まないだろう。

筆者は、産業振興の面でいつも気になることがある。
中国では、地方都市間の競争が熾烈を極めている、よって、国有企業、民営企業を問わず、有望な企業に対しては、政府からの補助金や政府系金融機関からの融資が積極的に行われる。極端な例では、ベンチャー企業を立ち上げる前から、大きな受注の予定が数件見込まれているというケースもあると聞いている。
これを先進国の企業の立場から考えると、中国市場においては平等な競争条件が確保されていないとも言える。先進諸国でも同様の産業振興策が行われ、補助金や融資を受けるケースはあるが、中国のそれと比べると、規模・件数とも足元にも及ばないだろう。
こうした点は、政府においてもっと詳細な分析を行い、公平な競争環境の形成に向けた努力を続けるべきだと感じる。
もっとも、中国側からすれば、「同様の政策を行えばいいではないか?」という指摘も成り立ち得るだけに、この問題の根は深い。

加えて、中国はWTOに加盟したものの、実質的な市場開放は様々な分野で進んでいないと感じることが多い。こうした目に見えにくい参入障壁の存在は、発展途上においては批判の対象となりにくいが、中国が経済大国を標榜するのであれば、早急に手を打つべき課題のひとつだろう。かつて輸出を増やした日本がそうであったように・・・。

中国が大国への道を歩むことは不可避である。ただ、こうした新しい流れは中国に限らず、どの時代でも期待と不安を生み出すことになる。
このように結果が予測できるのであれば、中国の大国化がアジアの発展、ひいては世界経済の安定に寄与する方向になるよう努力したほうがいいに決まっている。
日本に求められるのは、中国が改善すべき点は正論をもって指摘し、協力すべきところは自らの改革も含めて積極的に対応するといった姿勢ではないだろうか。

北京から新幹線で天津へ

2011-04-28 | 出張
今日は朝早く起きて、北京から天津への移動。
以前は車で1時間半~2時間かかっていたが、いまは新幹線で30分。
中国は、日本人が考えている以上に、どんどん便利になっている。

いつものようにチケット売場に足を運ぶと、VIP席の表示を発見!
これまで一等席と二等席しかないと思っていたので、これは初耳だ。
しかも、ポスターを見ると、眼前に見晴らしのよい風景が広がっている。
これは試すしかない!
乗車30分前だったので、すでに売り切れかと思われたが、意外にもあっさりと席が取れた。それほど人気がないということか・・・。
価格は、一等席が69元で、VIP席は99元。
今後、日本からのVIP対応を行う可能性があるため、お試しとしては悪くない価格だ。今回は30元のお得感がドコにあるのか、じっくり観察したい。

乗車の時間を迎え、該当車両である8号車へ。
北京-天津の新幹線は8両編成なので、どうやら最前方と最後方の2車両がVIP席のようだ。
いざ乗り込んでみると、おやっ・・・という感じ。
8号車は非常に狭く、全座席で8席しかない。希少価値があると言えば、そうとも言えるが・・・。
しかも、そのうちの1席は壁がすぐ目の前にあり、足すら伸ばせない。
これではVIP席の意味がないのでは・・・?

列車が出発して、もうひとつの問題が発覚。
下りの列車については、8号車が最後方なので、ポスターのような開放感のある景色は後ろにしか広がっておらず、何の付加価値もないのだ。
結局のところ、VIP席の価値は、「乗客が少ないから非常に静か」ということに尽きるかも・・・。

この路線は、今年6月に延長され、上海までの距離を4時間台で結ぶことになっている。
日本の新幹線ではグリーン車が完備されており、価格に見合った差別化が図られている。
30分で30元程度の差であれば、誰も文句は言わないだろうが、距離が長くなるこの機会にサービス水準の向上を図ってもらいたいものだ。

ちなみに、この路線に5回以上乗っているが、満車でなかったのを見かけたことがない。他の主要路線でも概ね同じような状況だから、こうした面でも中国経済の力強い成長を感じざるを得ない。
「人の往来が活発だ」ということは、「経済が活発に展開されている」ことを裏付ける証拠だからだ。

車内での快適性や待合室の状況は随分と改善されたが、依然として改善されていない点もある。
特に感じるのは、プラットフォームの構造だ。
前述のとおり、ほとんど満車の状態にもかかわらず、プラットフォームには1ヶ所しか通路の入口が設置されていないことが多い。必然的に入口に向かって一斉に人民の波が押し寄せ、皆が不快な思いをすることになる。
鉄路局の立場からすれば、管理しやすいのは分かるが、そろそろ先進国の事例を見習うべきだ。
同様に改善すべき細かい点は、中国社会の至る所に数多く内在している。
こうした点を見つけ出し、日本の優れた「配慮」を売り込んでいくのも、日本の重要な戦略になり得るかも知れない。


中国の会社って、ココがスゴイ!?

2011-04-27 | 中国ビジネス
今日で北京での仕事も3日目。
明日は天津で、ようやく上海戻りとなる。

今日は北京の企業・団体を3社、訪問した。
北京は市域が広いうえに渋滞も酷いので、一日に訪問できる件数はせいぜい3~4件がいいところである。

今日は中国、特に北京の大手企業に行って、スゴイなぁと思うところを幾つかピックアップしたいと思う。

まず1点目、本社ビルがもの凄く大きく、内装も豪華ということ(今日訪問した1社は、床が大理石だったような・・・)。
働く場所なのに、ここまで広いロビーが必要なのか・・・?と、ほとんどの日本人は思ってしまうだろう。

2点目は、会議室の数がハンパなく多いということ(しかも、これまた立派)。
これも、日本人だったら「空間がもったいない」などと感じてしまうだろうが、そういえば日本のオフィスで会議室不足が叫ばれて久しいような・・・。

3点目、必ずお茶を汲むのが仕事の服務員が配置されていること。
中国は茶文化発祥の地、会議の合間にお湯を注ぎ足しに来る服務員は、会議を進める上で欠かせない役回りの人物となっている。

4点目、大きな企業だと接待を目的としたレストランを自前で完備していること。
日本ではあんまり考えられないでしょ?
しかも、街中にある中華料理店より美味しい料理を出すから驚きだ。
店内の雰囲気、サービス水準、料理の質、どれをとっても接待に利用するのに十分なレベルが確保されているから恐ろしい。

ここまではハードの話だが、5点目は仕事の相手方について。
今日だけで全部で15名ほどの方々と話をしたが、非常に優秀な人から意味不明な人まで幅が圧倒的に広いということには驚かされ、そして疲れ果てる。
特に、異常なほど話が長くて、その内容も意味不明といった人には困ったものである(こういう人ほど結構偉い役職の人だったりする)。
そうかと思えば、何を議題にしても専門的な回答を的確にドンドン返してくる人もいた。
日本でも同様のケースはあるが、ここまでの開きを1日で見せ付けられることは滅多にない。

対する日本はどうだろうか?
「失われた十年」以来、経費節減が叫ばれて久しいが、国際的な観点からみると、やや行き過ぎた節約主義ではないか?
日本人が中国に来れば、当然ながら豪華なVIPルームで接待してくれる。
日本人に限らず、国内ではこれが当たり前だと中国人は理解している。
他方、中国人が日本に来たときにはどうか?
あまり深く考えず、年季の入った会議室や応接室で月並みな対応に終始しているケースが多いのではないか?

中国はメンツの社会と言われるが、裏を返せば「返礼を重んじる社会」とも言える。日本人が悪気なく行った月並みな接待のせいで、「中国で接待した分を日本で返してもらえなかった」と考える中国人は少なくないように感じる。

日中の区別はさておき、日頃から「借り」より「貸し」を多く作るような生き方を志向したいものだ。。。

仕事における日本人と中国人の思考の違い

2011-04-27 | 中国社会学
昨日に続いて、今日も北京で仕事をしている。
今日は日本側の相手とばかり接触する日だったこともあって、つくづく考えさせられることがあった。
それは、仕事における日本人と中国人の思考の違いである。

経済の発展スピード、社会の成熟度や民族性が違いすぎるため、一様に比較することは難しいが、あまりにも両者の違いが際立っていると感じたため、今日の話題とすることにした。

非常に極端な言い方かも知れないが、最近の日本人は仕事をする際に「出来ない理由」を並べたがる傾向が強い。これは本社側で決めたことだとか、既に枠組みが出来上がっているとか、あの団体とは色々な事情で一緒に仕事しにくいとか・・・。

これに対して、中国人はあまり深く考えず、「出来る!」「問題ない!」という回答を即答することが多い。よく言えば何事にもポジティブ、悪く言えばいい加減といったところか。

しかし、こういった小さなことが積み重なって「国」という単位まで拡がってくると、その影響は少なくないと感じる。勿論、マインドだけで経済成長が図れるとは思わないが、マインドがなければ成長など見込めないのも事実だ。

以前から感じていたが、日本人は何故「枠組みが決まっているから変えられない」というような発言をするのだろうか?
原点に立ち返れば、「決まっていること」は組織内の誰かが「決めたこと」であるはずだ。つまり、新しい枠組みを決めよう!(変えよう!)と思えば、新たに決めること(変えること)も出来るはずなのに・・・。
しかし、日本の組織内ではこうした現状維持派が多数派を形成していることが少なくない。「Noと言える日本人」という本が注目されて久しいが、未だに「No」と言える日本人は少ないのではないか?

中国人がイメージする日本人像は、「対応は丁寧だが、なかなか結論を出さない、面倒くさい相手」といったところのようだ。実際、米国は政治面の敵だが、ビジネス面では米国のほうが日本よりはるかに組みやすいと考える中国人は多い。

中国人との仕事では、色々なことがスピーディーに決まっていく。そこには他の団体がどうだとか、組織内部がどうだとかいった議論は存在しない。
ひとつひとつの議題は、イエスorノーでどんどん決まっていく。その後、事情変更があれば、すぐに連絡が入り、修正が加えられていく。
無論、よいことばかりではない。直前になればなるほど変更点がたくさん出てきたり、重要な課題が検討されていなかったり・・・といった事態に翻弄されることも多い。

ただ、私個人としては、「悩んで立ち止まったまま」より「走ってなんぼ」と思っている。深く考えて行動することには意味があるが、考えすぎて行動できないのでは意味が無い。
自戒の念も込めて、「前進力」というものを改めて考え直したい。