今回は、大震災が与える日中経済への影響を物産振興の面から考えたい。
前回記事で言及したとおり、中国では日本全体が放射能に汚染されているかのような報道が繰り返されており、日本製品が売りとしていた「安全・安心」という武器は、日増しに競争力を失いつつある。
これは食品において最も顕著で、日本食スーパーや高級日本料理店は苦しい立場に立たされている。輸入に当たっても、中国政府から放射能に関する証明書の添付義務づけが新たに通達されるなど、実質的に輸入が制限されるような状況にある。
ただ現状を考えると、こうした動きを過剰だと一方的に非難するのは、少し的外れなようにも感じる。例えば、同じようなことが中国で発生した場合、日本の消費者が中国製品を購入するだろうか?以前、餃子事件が発生した際に中国からの食品輸入が激減したことや日本国内でも風評被害が発生していること等を考えると、一定程度こうした動きが起こってくるのは想定の範囲内とも言える。
最も大きな問題は、こうした想定内の課題に対して有効な手段を打てない日本政府の体制にある。震災復興、原発対応に追われている現状は理解できるが、もう少し広い視野に立って、同時並行的に施策を展開すべきである。これができないのであれば、政権を運営する能力に欠けているとの批判を受けても仕方ないだろう。
ただ筆者は、中国での日本製品プロモーションに関して、以前から違和感を感じていた。日本各地が「物産」という名目で食品を中心にイベント等を開催しているが、日本の真の強みは「一般食品」なのだろうか・・・?
ご承知のとおり、日本と中国では当然ながら食文化が異なる。好みとなる味付けも異なれば、使用する調味料や食材も変わってくる。日本人は「淡い旨み」にこだわるが、中国人は「ストレートな味」を求める傾向にある。中国大陸で日本の食文化を浸透させるのが目的であるならば、ある程度長期的な視野に立ったプロモーションが必要となるが、現状では「単発的な物産展」が多いように思えてならない。
加えて、日本食品は「安全・安心」を武器としているため、基本的には「輸入」が前提となる。必然的に中国製品よりもかなり割高ということになる。ただ、食品は毎日口にするものだから、単発的に安心食材を摂取しても意味がない。よって、継続的に日本食材を使用し続けるには、相当な財力が必要となってくる。つまり、市場のパイは大きくないという結論に達する。
勿論、筆者はこうした活動が不要と言っているわけではない。これと並行して、本当に優れた日本製品を輸出する動きを強めるべきだと考えている。
キーワードは、「中国企業が真似できない技術・特徴を有するニッチな製品」と考える。
中国製品には無い技術や特徴を有していれば、多少高くても中国の消費者は購入していくのである。例えば、中国人訪日観光客が購入するお土産品のランキングをみると、その現状が垣間見えてくる。「切れ味抜群の爪切り」や「伝線しにくいストッキング」など、意外なものがランクインしている状況をよく分析すべきである。
ただ、ここでもうひとつ大事なのは、価格と品質のバランスを日本での販売と同様に考えるということを忘れないことだ。とかく日本企業は、コスト積み上げで製品の価格を決める傾向にあるが、どの国の消費者も結局のところ「価格に見合う価値」を判断して購入に至るのだ。俗に言う「上から目線の製品投入」では、中国での成功は見込めない。
物産振興についても、今回の大震災を機に、そのあり方を再考すべきではないか。
これは、一過性の災害に左右されない産業振興という視点からも、無視できない課題であることは間違いない。
前回記事で言及したとおり、中国では日本全体が放射能に汚染されているかのような報道が繰り返されており、日本製品が売りとしていた「安全・安心」という武器は、日増しに競争力を失いつつある。
これは食品において最も顕著で、日本食スーパーや高級日本料理店は苦しい立場に立たされている。輸入に当たっても、中国政府から放射能に関する証明書の添付義務づけが新たに通達されるなど、実質的に輸入が制限されるような状況にある。
ただ現状を考えると、こうした動きを過剰だと一方的に非難するのは、少し的外れなようにも感じる。例えば、同じようなことが中国で発生した場合、日本の消費者が中国製品を購入するだろうか?以前、餃子事件が発生した際に中国からの食品輸入が激減したことや日本国内でも風評被害が発生していること等を考えると、一定程度こうした動きが起こってくるのは想定の範囲内とも言える。
最も大きな問題は、こうした想定内の課題に対して有効な手段を打てない日本政府の体制にある。震災復興、原発対応に追われている現状は理解できるが、もう少し広い視野に立って、同時並行的に施策を展開すべきである。これができないのであれば、政権を運営する能力に欠けているとの批判を受けても仕方ないだろう。
ただ筆者は、中国での日本製品プロモーションに関して、以前から違和感を感じていた。日本各地が「物産」という名目で食品を中心にイベント等を開催しているが、日本の真の強みは「一般食品」なのだろうか・・・?
ご承知のとおり、日本と中国では当然ながら食文化が異なる。好みとなる味付けも異なれば、使用する調味料や食材も変わってくる。日本人は「淡い旨み」にこだわるが、中国人は「ストレートな味」を求める傾向にある。中国大陸で日本の食文化を浸透させるのが目的であるならば、ある程度長期的な視野に立ったプロモーションが必要となるが、現状では「単発的な物産展」が多いように思えてならない。
加えて、日本食品は「安全・安心」を武器としているため、基本的には「輸入」が前提となる。必然的に中国製品よりもかなり割高ということになる。ただ、食品は毎日口にするものだから、単発的に安心食材を摂取しても意味がない。よって、継続的に日本食材を使用し続けるには、相当な財力が必要となってくる。つまり、市場のパイは大きくないという結論に達する。
勿論、筆者はこうした活動が不要と言っているわけではない。これと並行して、本当に優れた日本製品を輸出する動きを強めるべきだと考えている。
キーワードは、「中国企業が真似できない技術・特徴を有するニッチな製品」と考える。
中国製品には無い技術や特徴を有していれば、多少高くても中国の消費者は購入していくのである。例えば、中国人訪日観光客が購入するお土産品のランキングをみると、その現状が垣間見えてくる。「切れ味抜群の爪切り」や「伝線しにくいストッキング」など、意外なものがランクインしている状況をよく分析すべきである。
ただ、ここでもうひとつ大事なのは、価格と品質のバランスを日本での販売と同様に考えるということを忘れないことだ。とかく日本企業は、コスト積み上げで製品の価格を決める傾向にあるが、どの国の消費者も結局のところ「価格に見合う価値」を判断して購入に至るのだ。俗に言う「上から目線の製品投入」では、中国での成功は見込めない。
物産振興についても、今回の大震災を機に、そのあり方を再考すべきではないか。
これは、一過性の災害に左右されない産業振興という視点からも、無視できない課題であることは間違いない。