2月27日(月)、富士重工の中国での現地生産に向けた動きについて、新たな報道がなされた。
従来、奇瑞汽車(Cherry)と合弁で遼寧省大連市に工場を建設する計画だったが、自動車市場に不透明感が増す状況を反映してか、中国当局が外資自動車メーカーの新規進出に難色を示し、全く進展が見込めない状況に陥っていた。
このあたりの事情については、以前ブログで紹介した記事をご参考いただきたい。
こうした中、富士重工が河北省唐山市で進められている重要国家プロジェクト「曹妃甸工業区」での工場建設を打診していると報じられた。
当工業区は、現政権の国家事業として位置づけられており、日本政府や経団連も最大限の強力を約束しているが、実際のところ大きくは進展していない。
筆者も2011年8月、縁あって同工業区を訪問することができたが、そこで目にしたのは、広大な企業用地と壮大な事業計画のふたつに尽きると言ってよいものだった。
しかも、同工業区は北京五輪開催に当たって移転を余儀なくされた首都鋼鉄など重化学工業の代替立地場所となったこともあって、大気汚染も深刻化しつつあるように感じた。
訪問時、8月という夏季真っ盛りにもかかわらず、1日中「霧」に包まれ、遠くの視界はままならない状態。
もっとも、同地の政府関係者が「霧」と言い張っていただけで、本当に「霧」と思っている人はいないでしょうが・・・。
中国の開発区は、まず大規模な用地整備を行った上で、政策的なインセンティブを発動して企業集積を進めるという手法が一般的。
以前は「2免3減」といった税制も含めた優遇策を駆使することで、欧米や日本から次々に投資を勝ち取ったわけだが、近年はハイテク産業の優遇に絞っている関係で、なかなか外資からの大型投資案件を勝ち取ることが難しくなっている。
【上海関連の情報が満載の「にほんブログ村 上海情報」はコチラ】
このように考えると、今回の富士重工の動きは注目に値するものだ。
中国自動車産業の振興という観点から一度は難色を示された富士重工の計画が、別の視点から見て重要な国家プロジェクトである工業区への投資によって認可の方向へとチェンジするのか、中国政府内でも意見が分かれるところだろう。
簡単に言えば、富士重工は「起死回生の一発逆転」を狙ったのである。
考えてみれば、日本の乗用車メーカー(商用車は除く)の中で、中国での現地生産を行っていないのは、もはや富士重工くらいのものである。
同社は軽自動車市場からも撤退を発表しており、自社のもつ乗用車市場での強みを活かしていくには、中国での現地生産は一刻も早く成し遂げたい課題であろう。
これは、現在トヨタグループの一角を占める同社の位置づけから考えても、同グループ全体の戦略にも波及する課題のように思えてならない。
ただ、こうした起死回生策がすぐに成就するかというと、ここは意見が分かれるところ。
中国自動車市場は、渋滞の深刻化や大気汚染の問題等も影響して、以前のような成長が見込まれない状況になっている。
いわゆる「成熟した市場」へと進化したと考えてよい。
こうした状況の中で、重要視する工業区への進出という一点で突破できるほど、中国政府は甘くないのでは・・・というのが筆者の見方である。
【中国関連の話題が満載の「にほんブログ村 中国情報(チャイナ)」はコチラ】
もっとも、今年は日中国交正常化40周年という節目の年。
こうした要素も作用するのが中国社会であり、その意味では今年中の決着を目指すのは極めて合理的な判断と言えそうだ。
個人的には、あと幾つかの取引材料を提供すれば、さらに状況は好転するのでは・・・とも考えている。
その材料とは、もちろん中国側にとって有益なものでなければならないが。。。
本件を例にとっても、中国市場における日本企業の立ち位置の難しさが垣間見える。
今こそあらゆる分野において、政府と企業が本当に意味で連携しながら、市場開拓に邁進していくことが求められている。
↓ ご愛読、有難うございます。よければ応援クリックをポチっとお願いします(ブログランキングに参戦中)
にほんブログ村