<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

尖閣国有化から1年を経て・・・

2013-09-28 | 尖閣問題

またもや久々の更新で恐縮です。
あんまり書かないと、面白い記事、いや記事自体が書けなくなるかも・・・と心配したりしています。頑張らねば・・・。

さて、今回は久しぶりに尖閣関連を取り上げることに。

ご承知のとおり、2012年9月11日に当時の民主党政権が尖閣国有化を発表して早いもので1年が経過。
当時の様子を思い出すと、今となっては懐かしい感じですが、あの1週間ほどは独特の雰囲気に包まれていたのが忘れられませんね。
現地在住の日本人が道を歩いていてラーメンの汁をかけられたとか、飲食店で因縁をつけられたとか・・・色んな報告が領事館経由で伝えられてました。
ただ、この程度の話は日常茶飯事だと思うんですよね、そもそも日中関係は急激に悪化したワケでもないし、中国の庶民目線で見ると「日本人」は中国社会に積極的に入って来ないうえ、そこそこ高い店でばかり飲み食いしてると思われてるフシがありますから。。。

ただ、日系企業は安全管理というものに異常なほど神経を使うので、この時期、大手企業を中心に社用車での送迎に切り替える様子が結構見受けられましたね。いまは通常どおりに戻しているところが多いでしょうが。。。
ちなみに、ウチは小さな所帯で予算も少ないので、何が起ころうと普段どおり中国人をいっぱいに乗せたぎゅうぎゅう詰めの地下鉄で通勤。身を守る術と言ったら、出来るだけ日本人と思われないように、地下鉄の車内でスマホをイジらない(日本語表記でバレる)、小綺麗な格好を慎む(変な話ですが)という程度。
反日デモの当日、香港メーカーのTシャツを着て出勤したのを今でも覚えています。おそらく、あのとき日本人であの地下鉄に乗っていたのは数えるほどしかいなかったのではないか・・・と。
でも、何もなかったので、そんなもんなんです。悪く言うと「自意識過剰」ということになるが、とは言え、管理者の立場になると「万が一」を恐れる心理も分からなくもない。この辺りが途上国で闘えない日本の弱点なのかも。。。


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筆者も帰任して半年が経過。
徐々に中国の知識が薄くなっていくのが自分でも身に染みて分かるので、やっぱり寂しいですね。勿論、もっと研鑽すればいいという話もあるが、やはり現地での刺激に勝るものはない。また機会があれば・・・なんてね。

さて、話を戻して。
尖閣国有化から1年が過ぎたワケだが、政治的な関係は凍りついたままですね。
お互い振り上げた拳はなかなか下ろせないといった表現が正しいのかも。。。
この1年で、日中双方とも政権交代が行われた。
両国の政治風土が全く異なるため、単純な比較は不可能だが、日本側では現自民党政権は民主党時代の重いツケを背負わされているというイメージ。

とかく右傾化が指摘される安倍政権だが、対中関係がこのままでいいと思っているワケもなく、何とか糸口を見出そうとしている様子が見受けられる。
まあ、自民党は長く政権の座に留まっていたので、古くからの中国政府人脈も多少は残っているようなので、その辺りに期待するしかないのかも。。。

一方の中国政府は、思いのほか頑固一徹といった印象。
もう少し対話の余地が生まれてくると思ったんですけどね。
もっとも、海洋覇権を目指す中国の姿勢は対日本だけではなく、フィリピンとの政治関係も悪化したままだし、他の東南アジアの国々も中国の顔色を窺いながら・・・という状況が見受けられる。
やっぱり世の中、カネがモノを言う世界ですから。
現政権、まだ権力の基礎固めをしている段階と言えるので、下手な妥協は得策ではないという心理も働いているのだろう。景気もあんまりよくないですしね。

ただ、1年前と比べると、環境整備は少しずつ進みつつあるようだ。
今年の9月11日には、反日デモが再発しないよう、中国政府はかなり神経を使っていたようだし、先日は立ち話とはいえ、首脳同士が挨拶を交わすということも実現できた。
こうなってくると、いったい日中首脳会談はいつ行われるのか?に注目が集まる。
ホント、いつなんでしょうね・・・?


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いま、直近で期待する声が高いのは、APEC期間中の実現。
いわゆる10月7、8日あたりですね。
中国にとっては、ちょうど長期休暇である国慶節の終わり頃ということで、国民の関心が自分たちの休暇に向けられる時期なので、案外仕掛けやすい時期とも言える。
もっとも、現状から分析すると、正式な日中首脳会談が実現する見込みは薄いと言わざるを得ない。
お互い、譲歩する姿勢を見せていませんから。。。
せいぜい、先日の挨拶を交わすという段階から一歩進んで、外相会談あるいは首脳同士の意見交換といったところが落としどころではないか。

では、日中の首脳が正式に向き合うのはいつ頃になるのか?
筆者の読みでは「経済」がキーワードになると思っている。
なぜなら、日本はアベノミクスでデフレ脱却期待が高まっているが、来春の消費増税で一旦景気が腰折れするのは間違いないだろう。
他方、中国もシャドーバンキングや不動産バブル懸念といった難題を抱えたまま、どうにかこうにか経済運営しているという厳しい現状にある。
つまり、両国とも「経済」という風船がいつ弾けてもおかしくないのである。

こう考えると、来年の夏前くらいになると、とりあえず経済交流から活発化させようという現実路線の話が浮かんでくるのではないかと推測している。
なぜって、ここまで関係がこじれたら、お互い理由が必要でしょ?
人間関係だって、喧嘩して謝るのは、やっぱりこのままじゃマズイっていう状況を打破するためですもんね。
景気が悪くなると、政権トップの権威も揺らぎますからね。
しかも、この険悪な政治関係の中でも、両国の経済交流は淡々と進んでいますから、経済分野から協力関係を再構築していくっていうのは、最もダメージが少ないワケです。

ま、この推測、当たるかどうかは神のみぞ知る・・・ですけどね。


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日中関係 雪解けの兆し(山口公明党代表の訪中結果の重み)

2013-01-25 | 尖閣問題

またまたブログ更新が疎かに。。。
なぜって・・・、いつも同じ理由ですが、日本出張中だからです。
ホント、朝から晩までクタクタ。。。
ただ、もうひとつ、言い訳がましい理由を挙げさせてもらうと、日本のWiFi環境の悪さ。コレ、かなり酷いと思うんですけど。。。
日本で生活していると分からないと思いますが、この部分において日本は相当遅れています。
だって、中国ではどこでもWiFiの電波、拾えますから。
しかも、驚いたことに、ベトナムやカンボジアでも、ほとんどの安宿でWiFiが利用可能。
いまや全世界、スマホ社会ですからね。
有線LANなんて、ハッキリ言って、ビジネスユース以外、意味ないです。
ま、愚痴っても仕方ないんですけどね。

さて、今日は政治面で大きな動きがありましたので。

2013年1月25日、山口公明党代表と習近平中国共産党総書記の会談が実現した。
コレ、かなり重みのあるニュースです。
が、日本のメディアでの扱いはさほど大きくない。
このあたり、いつものことですが、日本の大手メディアの恣意的な報道姿勢が垣間見えるような・・・。
こうしたニュース、あまり一般ウケしませんからね。
悪化、悪化と叫んだほうが、なんとなく国民感情に訴えられる、ひいては視聴率や購読率に反映できると思うのかも・・・。だとしたら、何とも短絡的です。

メディアはさておき、本題へ。
習近平氏と言えば、もはや言及するまでもない中国の最高指導者。
日本人にとって言えば、総理大臣を更に数倍偉くしたような地位。
この人物が、与党とはいえ、国家指導者ではない日本の政治家のために会談を行うということの重みは、冷静に考えれば分かるというもの。
ここは、これまで前総書記や習近平総書記が、これまで誰と公式に会談してきた実績があるかを調べれば、容易に分かるというもの。


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もっとも、筆者はこのタイミングでの動きをある程度予測していた。
これは、本ブログ内の11月21日付/記事を参照して頂くと分かりやすい。
ご興味がありましたら、コチラへ。
↓  ↓  ↓
日中の政権交代がもたらす尖閣問題の行方【大胆予想】
http://blog.goo.ne.jp/chinawatcher/e/4cd591dfc284ba5cfcc522b1a7efb15e

改めて読み返すと、公明党代表というのは予想外でしたが、全体の流れは自分でも怖いくらい結構当たっていますね。
ま、かなり偶然ではありますが。。。

で、なぜあの段階で、このような予測を立てたのか。
それは、大きく言って、以下の3つ。

ひとつは、上記の記事でも言及したとおり、「政権交代」を言い訳化できるという状況。現在の状況は、前政権が作り出したものですからね。
どの世界でもそうだと思いますが、新しいリーダーが古いリーダーの実績を翻すというのは、よく見受けられること。
勿論、尖閣問題がすぐに解決するワケではないのは当たり前のこと。
そうなればなるほど、棚上げに近い状況への道筋が徐々に形成されていくというもの。

ふたつ目は、安部総理の過去の実績。
あまり覚えられていないかも知れませんが、「戦略的互恵関係」という言葉は、前回の総理時代に初めて登場したもの。
加えて、自民党政権は長きにわたるため、中国側との政治的パイプが太いというのも大きな要因と言える。


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そして、三つ目は、1月下旬という時期。
これは意外と大きい。
中国は今年、2月9日から春節(旧正月)を迎える。
日本の正月同様、準備などを含めると2月に入ると動きが取りづらい。
そして、旧正月が終わると、本格的な新政権への移行が待っている。
前回の記事でも書いたとおり、まさにこのタイミングに何らかのアクションを起こしておく必要があったと断言できるだろう。

中国側の政治的な行動を考える場合、「偶然」という要素はほぼ存在しない。
とりわけ、国家の最高指導者による言動には、隙というものはほとんど見受けられないものだ。
そう考えると、この尖閣問題の引き金となった「国有化」の発表が、日中首脳会談の翌日に行われたというのは、かなり大きなインパクトがあったとも考えれらる。
その後、日本の前政権がなかなか具体的な行動や対話を行わなかったことも、中国側の苛立ちを高めさせた原因なのかも知れない。

勿論、この後、そう簡単に進むかどうかは分からない。
しかし、中国の最高指導者が「日中関係の重要性」に自ら言及したという意味は日本のメディアが伝える以上に大きい。
筆者は、少なくとも経済交流や人的交流は、以前の状態に急速に戻っていく方向に転換していくものと確信しているが、結果は果たして・・・?

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日中の政権交代がもたらす尖閣問題の行方【大胆予想】

2012-11-16 | 尖閣問題
日中の政権交代がもたらす尖閣問題の行方【大胆予想】

2012年11月15日、中国では習近平氏が新しい中国共産党中央委員会総書記に就任した。
同時に、同氏は中国共産党中央軍事委員会主席にも就いたことから、早くも三つの権力のうちの二つを手中に収めたことになる。
とりわけ、今回の政権移行によって、中央政治局常務委員の数が9名から7名に減員されたこと、この7名の中に共青団(胡錦濤派)系が李克強1名しか入らなかったことは、今後の政権運営に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。
中国が覇権主義へと向かっていくのか、しばらくの間は目が離せないだろう。

偶然にも、時を同じくして、日本でも12月16日に総選挙が実施されることになった。
遅ればせながら、日本も2012年問題のトリを務めることになったワケで、日本国民の「やっと総選挙が決まったか」という感情以上に、選挙が近づくにつれて海外からの注目を集めることは間違いないだろう。

既に報道や巷の雰囲気にもあるとおり、よほどのことがない限り、民主党中心の政権から自民党・公明党を中心とする政権への移行が行われるのは間違いないだろう。
問題は、「どの程度、自民党が勝つのか・・・?」ということ。

ここで、折りしも橋下大阪市長率いる日本維新の会と石原前都知事率いる太陽の党が合併する方向との報道がなされた。
既に太陽の党との合併を決めている減税日本も含め、いよいよ第三極の集結か・・・と思わせる展開だが、果たして国民の支持を得ることはできるのだろうか?

私は、今回ばかりはそんなに甘くないと感じている。
なぜなら、こうした理念抜きの野合こそが、現在の民主党政権の根幹にある問題であり、それを批判してきた勢力が選挙が行われるからと言って、慌てて手を組むなどということは、到底国民の理解を得られるものではないからである。
正直言って、両氏とも、あまりにも国民を見下していると言わざるを得ない。
この合流によって急速に支持率が低下するのは間違いないだろうと筆者は見ている。

また、こういう展開になってくると、第三極を目指してきた古株「みんなの党」は、この枠組みには参加しないのではないか・・・と筆者は見ている。
みんなの党にとっては、結党以来の理念を貫くことで一定の支持を確保することができるし、他の小政党よりも明確なビジョンを打ち出すことが可能となり、長い目で見るとプラスの効果が大きいと思われるからだ。


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とりわけ、今回の総選挙はこの3年間で鬱積した国民の不満を晴らすという性格が強い。投票率も、通常より高くなると予想される。
筆者は中国在住のため、感覚がズレているかも知れないが、今回の選挙が最近の選挙と明らかに雰囲気が違うように感じるのは「無党派層」の存在が薄いということ。
確かに近年、「どこの政党に入れても同じ」という感覚から、直前の情勢をみて自民党系か民主党系のどちらかに投票するという向きが強かったように思うが、今回は「現政権には投票しない」という空気がかなり支配的だと感じている。

思い起こせば分かることだが、前回の総選挙で自民党は歴史的な敗北を喫したが、この3年間の民主党政権と比べて、どこまで失点があっただろうか。
確かに、長期政権の弊害と思えるような失策は続いたが、外交にしても内政にしても、そこまで大きなミスがなかったにもかかわらず、あれだけの惨敗をした。

したがって、現在予想されている以上に民主党は惨敗する可能性が高いように思えてならない。

大胆に予想するならば、自民党による単独過半数確保というのも現実性を帯びてきたと言っていいのではないだろうか?
なぜなら、現在の「決められない政治」の根本的な背景に「衆参のねじれ状態」がある。この状態が続く限り、国会運営に気をとられ、大局観に基づく政治運営など出来ないことは、ここ数年で証明されてきたこと。
衆参両院の過半数確保によって、以前のように政権与党に驕りが生まれる危険性があるものの、世の中の空気がやや右傾化していることもあって、地滑り的な自民党の圧勝は大きな流れとなりつつあるように思えてならない。

そうなると、この日中両国の首脳交代が尖閣問題にどう影響するのか?というのが、最も大きな関心事のひとつとなる。
仮に自民党が政権与党となれば、安倍総裁が首相に就任することになる。
同氏が首相に就けば、日中関係は更に悪化するとの声もあるが、果たしてそのような流れになるだろうか?

同氏は自民党総裁就任後、いち早く経団連の米倉会長と会談するなど、経済界との結びつきが強い。
もとより、自民党が伝統的に採用している組織型選挙を展開するのであれば、経済界の支援は必要不可欠のもの。
尖閣問題に端を発した日中関係の悪化による影響をモロに受けているのは大手企業であることから、経済界から「日中関係の改善」を望む声が高まることは想像に難くない。
「領土問題と経済問題をいかにして切り離すか」というのは、難しい課題ではあるが、少なくとも選挙実施によって、国内の環境は整っていくように思えてならない。


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加えて、最近の国内メディアはプラスとマイナスを交互に展開する傾向が強い。
9月の尖閣国有化の時点では、日中関係の悪化を大々的に報道したが、最近では経済的なマイナス面を取り上げることが少なくない。
国内メディアの論調も、9月時点と比べると明らかに変化してきており、この傾向が12月、来年と進むにつれ、後退することはなかろうというのが筆者の見方である。

他方、中国側にも変化が見受けられる。
9月のデモ発生当時は「中国が受けるダメージは、日本より小さいから、何をやっても大丈夫」といった強気の発言が目立っていたが、欧州の景気が上向かない状況の中、やはり中国経済もそれなりに影響を受けているという実態が浮き彫りになってきた。
もとより日中両国経済は、サプライチェーンという面で考えると、もはや「切っても切れない関係」となっており、一方だけが大きな影響を受けるというような関係ではないのである。
そうした状況を受け、政府関係者や有識者のコメントも変化が出始めているのは、日本の政権交代も見越した中国側からのサインではないかとすら感じられる。

さらに、米国はこの問題に関して、一貫して両国に冷静な対応を求めている。
本日のニュースの中で、オバマ大統領が「いかなる領土紛争も国際法に則って解決されるべき」というようなことを言っていたのは、注目に値すると思っている。
両国にとって、米国は無視できない存在であるため、米国が本気で両国の仲裁に入ってきた場合には、事態が急展開する可能性も否定できないだろう。

こうした展開が生まれてつつあるのは、オバマ大統領が再選されたという事実が大きい。
そして、中国の指導部が確定し、日本で新たな政権が生まれることで、この問題の行方が決定づけられるに違いない。

総括すると、筆者は総選挙後の来年1月、日中両国が関係改善に向けて大きく歩み出すものと信じている。
いや、このタイミングで始動しなければ、尖閣問題が長期化するに違いない。

物事には必ず節目というものがある。
指導者が交代することによって、悪く言えば責任を全て前任者に押し付けることも出来るのだから。。。
そういった状況を上手く利用できるか、日本の政治力が試されると言えよう。

※すべて筆者の独断ですので、当たらない可能性、大いにありますので、悪しからずご了承のほど。。。

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日中関係悪化による観光業界への影響【VJ推進会議から】

2012-10-25 | 尖閣問題

昨日、ここ上海で、第2回VJ推進会実務者会議が開催された。
この会議、訪日観光に関連する企業、団体、地方自治体などが情報交換を行う場として、JNTO(政府観光庁)、在上海日本総領事館が中心となって開催されているもの。
ちなみに、このVJとは「Visit Japan」の略。

定期的に開かれている会議だが、今回だけは昨今の情勢を反映して、会議室も満員御礼状態。
とりわけ、この会議ではビザ発給件数といった具体的な数値を盛り込んだ資料も配布されるため、参加者の需要も高かったのだろう。

この注目された査証発給件数の状況を見てみると・・・

当たり前ですが、やっぱり減っています。。。
もっとも、いくつか特徴がありますので、ざっと言及しようかと。

まず、今回配布された資料では、前年度との比較ではなく、2010年度との比較を行っていることに注意が必要。
これは、前年度、2011年3月に東日本大震災が発生した影響で、比較対象に適していないこと、2010年度は本年同様、9月に尖閣問題が発生したため状況が酷似していること等を考慮してのもの。

ということで、2010年度との比較で言うと、実際のところ、1~8月までの合計値は過去最高値を更新する勢いだった。
この傾向は、奇しくも2010年度と同じで、9月を境に急降下することになる。

9月単体では、全体で24.7%減、特に団体観光査証に至っては45.7%という大幅減を記録している。
ただ、この二つの数値を比べて分かるとおり、団体観光以外の査証発給数はそこまで減っていないことが分かる。
とりわけ、個人観光査証は91%増という高い伸びを示しており、これもあって観光以外査証の合計も8.2%の減にとどまっている。


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とは言え、尖閣の国有化が9月11日だったので、そこまで貯金があったと考えると、その減りっぷりは相当なものと言える。
団体観光はほぼ半減だから、9月中旬以降、ほとんど催行されなかったと言っても言い過ぎではないかも・・・。
そんなこんなで、10月以降は全く期待が持てないワケです。。。

あわせて、国別の訪日外客数比較表(1~9月合計)も配布された。
※訪日外客とは、ちょっと説明が難しいので、とりあえず訪日客という扱いで。

ここで注目すべきは、韓国と中国。
韓国は、9月単体で24.9%減、1~9月でも19.1%減と大きな落ち込みを記録している。
一方、第2位の中国は、9月単体で10.1%減、1~9月では7.1%増と、まだ貯金を守った状態にあるのだ。
つまり、簡単に言うと、海外からの往来という意味では、韓国からの訪日が減少しており、中国との差はどんどん詰まってきているのである。


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次に、現状についての考察。

現在、団体の新規予約はほぼストップの状態。
個人は団体に比べると影響が少ないものの、やはり少なからず影響が出ている。
また、意外にあまり報道されていないが、各旅行社とも、世論、マスコミ、中国政府の目を異常なほど気にしている。
これが要因となって、訪日観光商品の販売を自粛しているというのが、今の現状なのである。
これを具体例を挙げてもう少し分かり易く言うと、春秋航空が佐賀-上海間の路線で発売を開始した1円航空券は、ネットユーザーからの猛反発を理由に1日足らずで発売中止となった。
熊本の八代で花火を鑑賞するというクルーズの旅には、千人を超える乗客が集まり、地元で大いに歓待を受けたが、これもネットユーザーの猛烈な批判を浴びる結果となっている。
ナショナリズムって、一旦高揚すると、手が付けられないですね。。。

もっとも、こうした状況は日本も同じ。
日本は民主国家なので、勿論、販売自粛要請といったものはないが、消費者の中国渡航自粛の動きが凄まじい。
上海で営業している日本の旅行社は、基本的に日本からの旅行者受入れ(インバウンド業務)しか展開できないワケだが、これが10月は前年比90%減、11月以降も回復の見込み薄という状況。
自分でやったことではないだけに、本当にかわいそうです。。。

観光関連のイベントや日中国交正常化40周年記念事業も、次々に延期、中止の憂き目に遭ったワケだが、いまはこうしたイベントがどのタイミングで再開されるのかに注目が集まっている。
一部イベントは再開の方向で動いているようだが、大規模になればなるほど実施の判断がつかないという状況に陥っているようだ。

いずれにせよ、ヒトの交流は、両国政府の良好な関係の下でしか成り立たない。
あの反日デモの嵐から1ヶ月強が経過した現在、まさに問われているのは政治的対話による解決策の模索と言えそうだ。

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尖閣問題にみる日本と中国「報道」をめぐる相違点と共通点

2012-10-19 | 尖閣問題

今回の尖閣国有化を機に、両国メディアで尖閣問題を巡る報道がヒートアップしていった。

日本では、中国各地で発生した反日デモの様子が繰り返し放映され、一部暴徒化した民衆の過激な行動の数々は、日本の市民に恐怖感を植え付ける結果となった。
とりわけ、反日デモがピークを迎えた9月18日などは、どのチャンネルを選択しても同じような光景が映し出され、まるで中国全土が戦争状態にあるかのような錯覚を引き起こさせるような取り上げ方だった。

他方、中国では情報統制されたメディア社会で、政府見解に沿った政府や各種団体の代表者、日中関係研究の専門家が連日のように出演し、「日本政府による尖閣国有化は誤りだ」と繰り返すばかりだった。
しかも、時折、人民解放軍の映像なども交え、「いざとなれば、交戦状態になることも辞さない」といった雰囲気も醸し出し、見方によっては日中戦争の再来を想起させるような内容のものも見受けられた。

こうした外交問題が先鋭化した局面においては、両国のメディアが互いの主張を批判し合うのは珍しいことではなく、ある意味では当然のこととも言える。

ただ、筆者はこの局面で、どうしても両国の「報道」をめぐって違和感を感じずにいられなかった。
報道の違いというものが、端的に言って、全く正反対の性質だったからだ。

日本は、日本国民の誰もが知るとおり、「言論の自由」が確立された民主主義国家。
各種メディアを通じて、政府の方針と異なる見解を展開しても、その行為自体で罰せられるというようなことはない。
しかし、近年の各メディアの報道を見ていると、あまりにも短絡的で目立つ映像ばかりを採用し、真実を伝えようとする努力が不足しているように思えてならない。
勿論、高度情報化社会を迎え、各社が情報伝達スピードを速める必要があるのは分かるが、情報番組すらワイドショー化の道を辿るようでは日本の未来は明るくないだろう。

一方、中国はご存知のとおり、情報統制の行き届いた国。
あまり知られていないが、中国は国土が広大なこともあって、地方のTV局も合わせるともの凄い数のTV局が存在しており、これまたデジタル放送の普及によって、各家庭で視聴できる局数も60近いチャンネル数となっている。
各TV局は、独自性のある番組なども放映しているが、基本的にはメディア各社は何らかの形で政府の関与を受けている。CCTV(中国中央テレビ)は中央政府の管轄化におかれているし、有事においては政府広報の役割も果たす。地方TV局もそれぞれの本拠地の地方政府が所管する形となっている。


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しかも、中国のTV局で日中戦争を題材としたドラマが放映されない日はないと言っていいくらい、どこかの時間帯で必ず戦争モノの映像が流されている。
勿論、視聴率がそんなに高いとは思えないが、繰り返しというのは怖いもので、中国人民の深層心理から「日本の侵略行為」という残像が消える日は近くないと感じざるを得ない。

こうした両国のメディアの特性は、今に始まったことではなく、これまでも両国間で何か問題が発生するたびに、自国メディアの影響を受けた民衆が何らかの行動に出るという場面もしばしば見受けられた。

ただ、いまは両国ともにネット社会が急速に発達。
中国では微博(マイクロブログ)が爆発的に普及し、TVのニュース番組は見ないが、微博関連のサイトでニュース等を仕入れるという若者は少なくない。
微博は基本的に個人が開設したものであるため、情報の即時性が高く、ネット社会の中で拡散するスピードも速い。その半面、個人的な行動ゆえに信憑性に疑問が付くこともあるワケだが、ここはフォロワー数の大きさや通常の記事内容などから自然と信憑性の確度が判断できるようになっている。
あわせて、フォロワーがコメントすることもできるため、一方通行で政府見解ばかりのTVニュースよりも遥かに現実的だということもあるのだろう。

翻って、日本はどうだろうか・・・?
日本という国に住んでいると気付かないと思うが、日本では政府広報というものに出会う回数が異常に少ない。
厳密に言うと、NHKは純粋な国営放送ではないし、紙媒体に至っては、政府見解をそのまま掲載した日刊のものは存在しない(と思うが、あるのだろうか・・・)。
日本の市民は、これまで朝日、読売、毎日といった大手新聞社の発行する新聞の情報があたかも真実を伝えるニュースペーパーだと信じきっていたが、各種記事が実社会の状況にマッチしていないことが多く見受けられるようになるにつれ、情報感度の高い知識層を中心に新聞離れが進むようになってきた。
情報の即時性という観点からも、いまではインターネットやスマホで情報をチェックする方々が増えているのは自然な流れというもの。
こういった環境の中、日本の市民は既存のメディアを信頼しない傾向が強まっているようで、物事の真相を知りたいときほど、よりディープなメディアであるオンライン専門記事(ダイヤモンドオンラインなど)や個人開設のブログ記事等へと検索を進める傾向が強まっている。


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日中両国の現状、なぜか似ていますよね。
中国の場合、表の情報が統制されているが故に非公式の情報へと駆り立てられる。
日本の場合、ニュース提供が自由すぎるが故に、これまた非公式の情報へと向かっていく。
つまり、どちらのメディアも心のどこかで信用されていないってコトなのかな?
だから、置かれている状況は180度異なると言ってもいいのに、人々の行動のベクトルは何故か同じ方向に向かっていくのだろう。

あの反日デモがピークを迎えたとき、筆者のブログでも象徴的なことが起きた。
私が開設しているgooブログは、総数175万を超える大所帯。
そこで、筆者ごときの記事が第43位を獲得した日があったのである。
ハッキリ言って、あり得ないこと。
書いている本人としては、勿論嬉しいという気持ちもあったが、これは裏返すと既存メディアに満足していない人々の数が累積されたものの表れとも言えるので、ちょっと複雑な気持ちになったのを今でも覚えている。

日本は、中国に対して「もっと言論の自由を担保しろ!」と主張することが多い。
でも、日本を反対側から見ると、政府見解がどこでタイムリーに発表されているかさえ分からない状態なので、「日本はもっとハッキリ自国の見解を示せ!」となるわけである。
でも、やっぱり分からないでは済まされないので、結果的に大手メディアの報道から日本の考えを探ろうとする。
ただ、各メディアが政府見解だけを掲載するなんてことは極めて稀なわけで、どうしてもそこには記者や新聞社としての主観が介在することになるから話がややこしくなる。
こうした記事を巡って、中国側メディアから批判が出たりする状況・・・、あまり好ましくないと思うんですが。。。

筆者は以前から主張しているとおり、日本政府はもっと政府広報を充実させるべきだと思っている。政府の人間がTVのインタビューに答えたり、記者会見を開いたりするだけで、その国の方針が正しく伝達されるはずと思うのは、あまりにも自己中心的な考えに過ぎない。
もっと丁寧に説明を尽くせば、少なくとも現在よりは状況が改善されるはずだし、そうした行動を積み重ねていけば、より良い情報伝達の仕組みが出来上がっていくはず。
要は、積極的に情報提供していく姿勢、その背景に持つべきは情報戦略ではないか・・・と。

この点、中国は本当にしたたかである。
人民日報は政府広報の役割を果たしているワケだが、同社のHPは既に多言語化されており、主要な記事はタイムリーに多言語で配信される仕組みが整えられている。
他国の人々は、重要な案件にかかる中国政府の方針等をタイムリーに知ることができるのだ。(無論、それが正しい情報か、操作された情報かは自己判断する必要あり)

恥ずかしながら筆者もそうだが、日本人は他言語に対するアレルギーが強く、日本語に頼ろうとする傾向が強い。
日本全体がこのアレルギーを克服して、高度情報化社会に対応した情報伝達の仕組みを築くことこそ、日本の国益に沿うものではないか・・・と、筆者は強く感じている。

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