私の中の「レトロファッション」といえば、昔買った古い洋服を引っ張り出して着ることです。これがなかなかいいのです。
クローゼットの整理は数年かけて大方終わって、あとは「お気に入り」の捨てるにしのびないものが少しだけ。それは20年前に買ったスカートだったり、10年前に買って一度も袖を通していないコートだったり。
無駄といえば無駄な買い物をしたなあとそれらを眺めながら今となっては方策を考えることしばし。
「当時は買えたから買ったんだ!」と妙な納得をしながら、今ではとてもそんな大枚(私なりの)をはたいては買えない上質な物を手に入れていた時代が懐かしくもあります。
そして、そして……。
厚手ウールの黒いロングスカートは裾をチョキチョキハサミで切り、切りっぱなしのままの膝下丈で着ることに。丈の途中にちょっと複雑なデザインが入っていたのでそれを生かしてチョキチョキです。今は何でもありの時代なので、こんなチャレンジができるのもうれしいです。着るととても暖かくて外出着にもなります。
10年間一度も着ることがなかった丈長のマックスマーラの黒いウールのロングコート。しっかりと存在感があり、冠婚葬祭用にもぴったりとそんな思いで衝動買い。
しかし、デザインがシンプルなため地味と敬遠し、買ったもののしまいっぱなしに。
先日、思い切って「お直し屋さん」に持っていき、膝下少し長め丈に丈詰めをしてもらいました。
「切るんですか?もったいないですねぇ……」
「いいえ、いいんです。これからは長いと裾を踏んだり踏まれたりで危ないし……」
「まあ、そんなお齢でもないでしょうに……」
「でも危険なことは確かですから……。それに、このままだと下に着る洋服も選びますから……。」
と、こんな会話のもとに新しくなったコート。丈が短くなった分だけカジュアル感が増し、これなら街着としても合格点。
古いものを引っ張り出して着ることに抵抗がなくなったのは、それだけ流行に鈍感になったのか、どうでもいいわという齢のせいなのか。
昔、団地に住んでいた時、「こうもりがさの修理のおばさん」がハンドマイクを持って歩いていました。
「コ~ウモリガサト~ハモノトギ~イタシテオリマ~ス」と、独特の小節を効かせ、身にまとっているものは修理道具も含めて、ありとありったけのものを着込んで歩いていた姿。
もしかしたら、今の私、寒さに着ぶくれての「レトロファッション」はそんな風に見えるのかもしれないが、まあ、いいか。