いや、ホントもう勘弁して。
かれこれ1時間近く歩いてるけど。
墓地からデカイ歩道橋につながっていて、
歩道橋の上で休憩。
っつかしーな。
もう完全に迷った。
確か目的地にもこんな歩道橋あったよなぁ。
そうそう、そこにラーメン屋があって
・・・アレ?
あ、あった。
着いてた。
どんだけ遠回りしてんだ。
きょう日本で
「一番目的地に着くのに遠回りした人」
選手権があったら優勝できるよ。
賞品で洗剤1箱くらいもらえたよ。
何故か帰りの道中を、
フテブテ君と連れ添うハメに。
念願の友達が出来たような雰囲気だが、
あまり友達になりたくないヤツ。
フテブテ君はそんな僕の気持ちも知らずに、
自分がこれまでにしてきた武勇伝を語っている。
けっこう遠くの学校に通っていたので、
電車TIMEは恐ろしく長い。
僕は電車の窓を開けて、タバコに火を点ける。
一番前の車両は不良連中がタムロするので、
それを知っている大人たちはほとんど近づかない。
何も知らずに入ってきても、すぐに出てゆく。
車掌がすぐ前にいるが、運転中はまず後ろは見ないし、
駅~駅はゆうに5分以上あるので、
よほどウッカリでもしなければ、まず見つかることはない。
ようやく景色が見慣れた風景に変わってゆき、
ゴールに近づいてきたと安堵したその瞬間、
一組の不良グループが先頭車両に入ってきた。
見慣れない制服だ。
何やらこっちを見てる。
めんどくせーなー、と思いながら、
僕も連中を見る。
すると連中の中の一人がこっちに声をかけてきた。
「○○じゃねーか!」
それはフテブテくんの名前だった。
なんだ友達かよ、と僕は思いフテブテくんを見る。
だが、何やらフテブテくんはバツの悪そうな表情をしてる。
「なんだよ、オマエ、その格好!
もしかしてデビュー?(高校に入った途端にツッパリだしたヤツを指す)」
は?と僕は思った。
フテブテ君が、この悪魔超人が高校デビュー?
ちょっと戸惑ってると、そいつは僕に話しかけてきた。
「知ってる?コイツ、中学ん時の俺の舎弟。
一度なんてよ、俺のケリ腹に食らってウンコもらしたんだぜ」
というと、そいつは高らかに笑った。
へー、でもフテブテ君の腰の入ったパンチを見た限りは、
そうは見えないけど。
っつーか、明らかに目の前で馬鹿笑いしてるマヌケ丸出しの男よりは
強いような気がするけど。
世の中って不思議、と僕は思った。
「なに?コイツと友達になったの?」とそいつは僕に言った。
「そうだよ、友達になったんだ」と僕は言った。
消したい過去があり、変えたい自分がいる。
フテブテ君もそう思ってるなら、僕と同じじゃないか、
そう思った。
ベクトルは正反対だとしても。
そうして僕たちは本当の意味で友達になった。
ただ、クラスの人に無闇矢鱈な暴力は今後絶対にしない、
と約束してもらってだけどね。