武道・禅の心で臨床を読み解く(武道、禅、心理療法、ボディワークを学ぶ理学療法士)

21年間の運動指導・700冊の書籍からリハビリ・トレーニングを読み解きます。
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合気道の見取り稽古とメンタル・プラクティス(臨床へ生かすには)

2011年03月08日 | 合氣道
 3月3日は端午の節句。そう、お雛祭りです。

 5歳になる娘が通う保育園でも、お雛祭り会がありました。そこで雛祭りの舞踊劇があるのですが、私の娘が主役ともいえるお雛様を演じました(この記事は親ばかによる娘自慢ではありませんよ)。

 実は私の娘はお雛様どころかその劇に出る予定ではありませんでした。娘は他の劇担当だったのです。ところが、急きょ三人官女役の子が体調不良。それで代役として発表三日前に三人官女に抜擢されました。更に主役であるお雛様役の子も体調不良に!!
そこで前日に白羽の矢が立ったのが私の娘です。

 急な配役変更にも関わらず当日、見事に演じきりました。5歳ともなると振付や立ち位置・タイミングなどかなり高度です。それをやってのけた娘に親である私はビックリしてしまいました。

 なんと娘はすべての役の振付を暗記していたのです。元々、良く周りを観察する子だったのですがこの能力を開花させたのは3歳から始めている合気道のお陰ではないかと推測しています。というのはバレエをやっている子なども他にいるのですが、そういった子を見てるとただ身体を動かしているので観察力に欠けているようです。
その違いに先生たちがうすうす気づいていて代打となったと思われます。

そう、合気道とダンスは違うのです(ちなみにスポーツ武道もダンスと同じくくりです)。

 決定的な違いの一つは見取り稽古です。ただ座って師範のやる技やお友達の技を正坐し静観します。稽古の半分以上が見取り稽古となる日もあります。ただでさえ、動きたいざかりの年齢ですからピタッとは正坐していられませんがたまにもじもじしながらも彼女なりにしっかりと見てます。
 そして、見終えたら即技を実行。実はこの過程がとても大切なんです。

 前回の武道PT勉強会(NLP:神経言語プログラミング)に参加した方なら分かると思うのですが、見るという行為は三人称的観察(つまり他人が遠い空間でやっている視覚優位)です。
 そして、自分が技をやるのでは一人称的行為(つまり近い空間でやっている身体感覚優位)です。
 普通のスポーツやダンスはただひたすら勝手に動作を繰り返すか先生が目の前でやってくれるか、鏡をみながらやって模倣するか。
 つまり、三人称的観察を時間をかけずに、頭の中で(脳を使い)考えず、すぐ一人称的行為にしてしまうのがスポーツやダンス。見取り稽古はその両者の間に見るという時間を設け頭の中でメンタル・プラクティスをしているのです。しかも、ただメンタル・プラクティスをしているのではなくメンタル・ローテーションをしてるのです。

 メンタル・ローテーションって皆さんご存じでしょうか?頭の中のイメージだけで観察したものをローテーションつまり回転させる能力のことです。この能力が無いと相手が反転(対峙している手本の人が背中を向けるなど)したことによって、動きを認知できなくなり動作を模倣することができなくなります。合気道は回転と上下動が命の武道ですから、この能力が欠如してると見取り稽古はできません。

皆さん、この画面を見ているパソコンや携帯をイメージだけで自在に回転させられますか?
動作分析している時、患者さんを360°様々な角度から見るイメージをしたり、見ている自分を背後から見たり、患者さんと自分を上空からみる(俯瞰する)ことができるでしょうか?

 私はこの能力が稽古開始当初乏しかったので合気道の稽古中、頭の中で脳ミソがフリーズしたり、パニックになったりと随分と悩まされました。この能力は勿論先天的な才能もありますが、後天的な生活習慣や努力も関与します。

 腰痛患者はメンタル・ローテーション能力が低下していることが知られています。これは三人称的な世界で生きる傾向がある腰痛患者の特徴といえるでしょう(詳しく知りたい方は武道PTワークショップへご参加下さい)。
 また、メンタル・ローテーション能力の低下している者は他人の感情を推測することができません(つまり空気を読めないっ!!))。そう考えるとカウンセラーや心理士という相手の心を読むのが必要な方、もしくは好きな方が合気道に魅かれるのも納得がいきます。

 テレビ、ネット、携帯時代の我々は三人称的思考・身体操作に陥ってしまっているのです。だから心身共に相手の立場に立てません。そんな背景もありKY(空気の読めない)人が加速度的に増殖しています。
 理学療法士は肉体を三人称的に捉える訓練をずっとしているので、KYの人が多いように思います。そして腰痛の人も多いようです。筋トレやストレッチで腰痛は治りません。

 私の稽古している合気道の五原則の中に
「相手の心を知る」
「相手の気を尊ぶ」
「相手の立場に立つ」
という句があります。

皆さんも見取り稽古いかがですか?

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