専門家2人がアドバイス
書き始めに工夫を
自分の考えを深めて
「本を読むのは好きだけど、読書感想文は苦手」と思っている人は多いのでは?
「読書感想文のせいで本がきらいになった」という人もいるかな。感想文を書くコツを、専門家に聞いてみた。
ずばり「読書感想文がラクラク書けちゃう本」などの著書がある、国語作文教育研究所の宮川俊彦さんを訪ねた。
宮川さんは「書き始めの文章を工夫してみては」と提案する。例えば、「きっと」「たぶん」「あるいは」。こんな意表をついた書きだしで始めてみる。会話や音から書き始める方法もある。その本と自分の出会いから書き始めてもよい。要は、文章を書こうとしている自分の気分をのせることが目的だ。「私は」で書き始めると、気分が何だかかたくなってしまいがちだ。
宮川さんは「読書感想文は、本にこめられたメッセージを読み取り、それに対して自分の意見を述べる意見文」と話す。意見を書くためには「ちょっとちがうんじゃないか」「なんでこうなるのか」など、疑問に思ったり、逆に納得して感心してしまったり、考えるきっかけをあたえてくれる本が向いている。読んでただ面白い本を選ぶと、読書感想文を書きにくい場合が多いという。
では何を書くか。宮川さんによると、「『走れメロス』は友情の物語」という、いっぱん的な評価を否定する方法、本の最初に書かれている文章をうんとほり下げて考えるやり方も面白い。
「読む人に分かるように書かないといけない。でも同時に、同じ境ぐうになった人にしか分からないような文章も大事だし、みりょくがある」と、宮川さんは話している。
読書感想文コンクールに出すために、学校で書いた人も多いのでは。毎年一回、コンクールを開いている全国学校図書館協議会の森田盛行さんは「読書は、考えるための最適の手段」と力説する。
例えば小学校六年生なら「作者、著者の言うことを百パーセント受け入れないで、自分なりに考えるきっかけにしてほしい。ハッピーエンドに疑問を持ってもいい。」感想文を書くためには何度もくり返し本を読んで、自分の考えを深めることが大事だ。
一方で森田さんは「本の世界に閉じこもらないで」とも。友達と遊んだり、けんかをしたり、自然にふれたり。そういう体験が、本を楽しむためにも必要だという。 (2006年10月11日埼玉新聞)
読書感想文は嫌いだった。最初に書いたのは、いや、書かされたのは「野口英世」だった。
いま自分で本を読むときは、作者の「この1行」を探している。作者が書きたかった「この1行」は何? というように文を追いかける。それで十分。
人に話したくなる本、があるときはそれを文章にすれば感想文になり書評になると思う。
読書感想文が宿題に出ている子どもたち。本は作者のお手紙だと思います。そのお手紙を読んだらお返事を書きましょう。それが感想文になるのではないでしょうか。