この熟語は広辞苑に書いてはありません。どう読みますか。バツソウ、バッソウ? 罰として走るということです。
土日の東入間送別大会。ゼロ負けでした。自分でグラウンドを走りました。罰として。まとめとして3学期にやってきたことが身についていなかった。何を伝えてきたのかと、最初だけ反省しましたが、罰として走らされての反省は底が浅いことがわかりました。腹立たしくなってきてがんばろうという気持ちは湧き上がってきません。1000mでやめました。
大昔、監督、OB、先輩からの命令で県内一走らされていました。殴られました。坊主頭にさせられました。反省や向上心は湧かず憎しみを感じていたと思います。
走るときは自分のために目標を持って走らないと気分が悪い。苦しくても後の爽快感はあるはず、自分のためならば。
自分に罰走を課して再確認しました。「俺はやらない」
ジーコさんやギドはやらないでしょう、罰走は。インドの選手は大丈夫かな。
参考資料として罰走について書かれた論評を以下に掲載しました。興味のある方はご覧ください。Q&A形式です。
『ジュニアスポーツと法律』
Question 罰走はしごき?指導者の注意義務
試合の内容がよくなかったり、不注意によるミスが多かったため、試合後に罰走を課したところ、知り合いの指導者から、「それはしごきだから、やめたほうがいい」といわれました。ごく普通のことだと思っていましたが、問題があるのでしょうか。(40歳男 指導歴20年)
Answer 罰走の効果は?
罰走がしごきかどうかということを考える前に、罰走を課すことにより、試合の内容がよくなったり、不注意によるミスがなくなるという効果があるかどうかを考えてください。試合の後に必要なことは、選手自身が冷静に試合内容を振り返り、反省することです。そこから、選手自身が次にしなければならないことを考えていくのです。
罰走を課された選手は、ただ罰走をこなすことだけしか考えなくなります。罰走は、選手自身が試合内容を反省したり、考えるということをさせない行為です。また、選手自身のモチベーションを奪ってしまう行為です。
自己満足ではないですか
指導者はなぜ罰走を課すのでしょうか。「根性を植えつけるため」という答えがあるかもしれません。しかし、強いモチベーションを持つこと、持たせることこそが、選手の精神的な強さを生み出していくのです。
罰を与えることは、指導者が自身の感情のはけ口として課しているに過ぎず、指導者は選手に従順さを強いることにより、自己満足をしているのです。
このような観点からいえば、罰走を課す指導者は、指導者としての資質に欠けていることをさらけ出しているといえます。
指導者の注意義務
問題は、その先にもあります。
指導者には、選手の健康状態や技能、体力に留意し、選手が病気になったり負傷したりしないよう、適切な措置を講じる義務があります。
試合をした後ですから、選手は当然疲れています。疲れた選手に罰走を課し、選手が熱中症やその他の障害で意識を失って倒れた場合には、罰走を命じた指導者はこの義務を果たしていないとして、責任を問われます。
試合の彼の罰走は、技術の向上や体力の増強を目的としたものとは考えられません。したがって、罰走によって起きた事故は、原則として前記注意義務に反し、違法となり、損害賠償責任を負うこと、場合によっては刑事罰を受けることもあることを覚悟すべきです。
死亡事故や、失明、四肢麻痺といった大きな障害が生じた場合には、裁判沙汰になる可能性が大です。
厳しさを間違えないで!
大きな障害が生じなくても、日頃から、大声で罵声を浴びせたり、罰走などの適切ではない厳しい練習を課している指導者については、選手自身や保護者などの関係者の不信感が潜在的にあり、些細なことから大きなトラブルになることがあることを、指導者は肝に命じるべきです。
岐阜地裁平成5年9月6日判決は、学校の部活動について、「部活動の厳しさとは、生徒各人がそれぞれ自己の限界に挑むという汗まみれの努力を通して、より深い人間的つながりを形成しながら、それを基盤として助け合い、励まし合う中で、生徒が自己の限界に厳しく取り組み、それを自分の力で克服していくという意味の厳しさであって、決して、指導者の過剰なしっ責やしごき、無計画に行われる猛練習や長時間の練習といったものを意味するものではない」としています。これには、スポーツ少年団活動も通じるところがあるのではないでしょうか。
指導者の課した罰練習にともなう死亡事故について、指導者の損害賠償義務を認めた裁判例としては、ラグビーの練習試合の後の罰練習による死亡事故(静岡地裁沼津支部平成7年4月19日判決)、野球の練習中、ポールダッシュ練習をさぼっているとして、罰として再度、練習を課したことによる死亡事故(水戸地裁土浦支部平成6年12月27日) などがあります。
(文責 白井久明 弁護士)
日本スポーツ少年団「少年スポーツ情報誌」スポーツジャスト2005年8月号より
土日の東入間送別大会。ゼロ負けでした。自分でグラウンドを走りました。罰として。まとめとして3学期にやってきたことが身についていなかった。何を伝えてきたのかと、最初だけ反省しましたが、罰として走らされての反省は底が浅いことがわかりました。腹立たしくなってきてがんばろうという気持ちは湧き上がってきません。1000mでやめました。
大昔、監督、OB、先輩からの命令で県内一走らされていました。殴られました。坊主頭にさせられました。反省や向上心は湧かず憎しみを感じていたと思います。
走るときは自分のために目標を持って走らないと気分が悪い。苦しくても後の爽快感はあるはず、自分のためならば。
自分に罰走を課して再確認しました。「俺はやらない」
ジーコさんやギドはやらないでしょう、罰走は。インドの選手は大丈夫かな。
参考資料として罰走について書かれた論評を以下に掲載しました。興味のある方はご覧ください。Q&A形式です。
『ジュニアスポーツと法律』
Question 罰走はしごき?指導者の注意義務
試合の内容がよくなかったり、不注意によるミスが多かったため、試合後に罰走を課したところ、知り合いの指導者から、「それはしごきだから、やめたほうがいい」といわれました。ごく普通のことだと思っていましたが、問題があるのでしょうか。(40歳男 指導歴20年)
Answer 罰走の効果は?
罰走がしごきかどうかということを考える前に、罰走を課すことにより、試合の内容がよくなったり、不注意によるミスがなくなるという効果があるかどうかを考えてください。試合の後に必要なことは、選手自身が冷静に試合内容を振り返り、反省することです。そこから、選手自身が次にしなければならないことを考えていくのです。
罰走を課された選手は、ただ罰走をこなすことだけしか考えなくなります。罰走は、選手自身が試合内容を反省したり、考えるということをさせない行為です。また、選手自身のモチベーションを奪ってしまう行為です。
自己満足ではないですか
指導者はなぜ罰走を課すのでしょうか。「根性を植えつけるため」という答えがあるかもしれません。しかし、強いモチベーションを持つこと、持たせることこそが、選手の精神的な強さを生み出していくのです。
罰を与えることは、指導者が自身の感情のはけ口として課しているに過ぎず、指導者は選手に従順さを強いることにより、自己満足をしているのです。
このような観点からいえば、罰走を課す指導者は、指導者としての資質に欠けていることをさらけ出しているといえます。
指導者の注意義務
問題は、その先にもあります。
指導者には、選手の健康状態や技能、体力に留意し、選手が病気になったり負傷したりしないよう、適切な措置を講じる義務があります。
試合をした後ですから、選手は当然疲れています。疲れた選手に罰走を課し、選手が熱中症やその他の障害で意識を失って倒れた場合には、罰走を命じた指導者はこの義務を果たしていないとして、責任を問われます。
試合の彼の罰走は、技術の向上や体力の増強を目的としたものとは考えられません。したがって、罰走によって起きた事故は、原則として前記注意義務に反し、違法となり、損害賠償責任を負うこと、場合によっては刑事罰を受けることもあることを覚悟すべきです。
死亡事故や、失明、四肢麻痺といった大きな障害が生じた場合には、裁判沙汰になる可能性が大です。
厳しさを間違えないで!
大きな障害が生じなくても、日頃から、大声で罵声を浴びせたり、罰走などの適切ではない厳しい練習を課している指導者については、選手自身や保護者などの関係者の不信感が潜在的にあり、些細なことから大きなトラブルになることがあることを、指導者は肝に命じるべきです。
岐阜地裁平成5年9月6日判決は、学校の部活動について、「部活動の厳しさとは、生徒各人がそれぞれ自己の限界に挑むという汗まみれの努力を通して、より深い人間的つながりを形成しながら、それを基盤として助け合い、励まし合う中で、生徒が自己の限界に厳しく取り組み、それを自分の力で克服していくという意味の厳しさであって、決して、指導者の過剰なしっ責やしごき、無計画に行われる猛練習や長時間の練習といったものを意味するものではない」としています。これには、スポーツ少年団活動も通じるところがあるのではないでしょうか。
指導者の課した罰練習にともなう死亡事故について、指導者の損害賠償義務を認めた裁判例としては、ラグビーの練習試合の後の罰練習による死亡事故(静岡地裁沼津支部平成7年4月19日判決)、野球の練習中、ポールダッシュ練習をさぼっているとして、罰として再度、練習を課したことによる死亡事故(水戸地裁土浦支部平成6年12月27日) などがあります。
(文責 白井久明 弁護士)
日本スポーツ少年団「少年スポーツ情報誌」スポーツジャスト2005年8月号より