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これなんちゅうじや ~大阪府『逸翁美術館』~

2015-08-02 23:33:40 | アート

2015夏季展【特別展】 小林一三ワールド ―逸翁の審美眼

 昨日ご紹介しました豪邸の主、小林一三の5000点を超えるコレクションを所蔵する逸翁美術館。現在は特別展『逸翁の審美眼』を開催中です。小林氏の素顔を探る催しということで、逸翁がたしなんでいた茶の湯にまつわる美術品が展示されていました。

 湯木美術館でみた品々は、和食の料理人らしい、滋味を感じる奥ゆかしい香合や枯れた味わいの風炉など、こじんまりした座敷が似合う風情のものでしたが、宝塚歌劇や高校野球、東宝の映画などさまざまな娯楽を庶民に提供してきた小林氏のコレクションは、その多彩な事業に見合ったスケールの大きなものでした。香合も大きくて華やかなデザインのものが多いですし、お気に入りの墨蹟なんかも、豪胆で男性的な感じ。その中に、千利休、古田織部、小堀遠州がそれぞれつくった茶杓「三不点」とか、応挙や呉春、蕪村の軸がさらりと置かれてあったり、仁清作では珍しい信楽の水差があったりと、枯淡な趣味も垣間見えます。しかもこれがまた、はあっと声がでてしまうくらい良いんです。

 度肝を抜かれたのは、インドやジャワ、インドネシアの更紗を使った掛け軸や風炉先屏風! 写真をお見せできないのがとても残念ですが、従来の茶の湯の調度品では考えられないモダンな華やかさ、でも決して嫌みではなく思わず見とれてしまいました。こういう枠にとらわれない考え方が、次々と新規の事業を起こす原動力なのでしょうか。

 そうした小林氏の感性の真骨頂ともいえるのが「見立て」で、ウェッジウッドやセーブル焼きを香合や花入れに見立てて使用されていたそうですが、これがまたとんでもなくキレイでした。どことなく宝塚歌劇のショーを思わせて、ああいったレビューはお好みだったのだなと改めて思います。

 微笑ましかったのが、自作の掛け軸。右肩上がりのとがった字は、実業家らしい少し短気で荒々しい気性を垣間見せますが、そこにかかれてある字が『是楠忠辞乎』。

 なんて読むと思われますか?

 正解は『これなんちゅうじや』(これは何という字だ)

 そういう茶目っ気もあったみたいです。

 ちなみに9月に放送予定のドラマで主役の小林一三を演じるのは阿部サダヲさん。

 チャーミングなやんちゃさと凄味が同居している、というイメージの方ですが、このキャスティングだけで逸翁の魅力が感じられる気がしますね。

 もう一つ、いいなと思ったのが、こちらでは500円で呈茶が受けられるんです。美術館内併設の茶室で、なんと美術館所蔵のお茶椀でいただけるそうです! お茶のたしなみがないので気おくれして今回はいただきませんでしたが、庶民を楽しませようというこの逸翁イズムが素晴らしいですね。

 いいものを見せてもらいました。また来たいと思います。

(逸翁美術館HPより)

 

 


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