屋上から御堂筋をのぞむ。
事前申し込みのガイドツアーはオール落選という悲しい結果に終わりましたが、ガスビルツアーは当日各回先着順というので、勇んで行ってまいりました。ところが10時の回の5分ほど前に現地に行ったらすでに長い行列で、とっくに締め切られてまして(T_T)
聞けば、整理券発行(開始10分前)の1時間前から並んでいる人もいらしたとか。なめたらアカン、と12時の回は1時間15分ほど前に出なおしたのにすでに16番め! その後も続々と人が現れ、急きょ11時の回が追加されることになりました。結果、15分しか待たなくてラッキーでしたが、すごい人気です。
何かの再利用と思われる、金属製の整理券。
まずはガスビルの成り立ちから。
現在のガスビルは昭和8年竣工の南館と昭和41年竣工の北館と2つの建物が合体した形になっていて、今回は竣工当時の面影を残す南館1、2階と普段は立ち入ることのできない北館の屋上をメインに案内してくださるとのこと。ガイドさんの説明も面白いのですが、同時に写真も撮りたいので、なかなか忙しいツアーです^^;
食堂専用エレベーター。高そうな石と華やかなデザインが、モダニズムの伝統を感じさせます。
可愛ポップなガスビルの意匠。
昭和8年は、立体的な都市の使用(高層ビルや地下街ですね)や、電気やガスの安定供給によるエネルギーの変換、と、市民の生活が革新的に変化していった頃で、モダンで高層な外観に、当時オフィスビルでは非常に珍しい冷暖房完備、数少ない洋食レストランの併設など、ガスビルは時代の最先端を行く施設だったそうです。何よりガスってイカすじゃん!? て感じだったんですかね(笑)。
2階には講演場があって、オシャレなそのホールでは朝比奈隆氏指揮のコンサートや淀川長治氏企画の映画の試写会が行われていたとか。「ガスビル」と聞いただけで、当時のモボモガはウキウキしていたと思われます。作家の織田作之助もお気に入りで通っていたそうです。大阪の人にとってガスビルは昔から特別な存在なんですね。ツアーに参加しているみなさんがものすごく熱心なのが不思議な気がしたのですが、そういう背景を聞くと、なるほどうなずけます。
1階から2階へ階段を上がって見た後は、エレベーターでガスビル食堂へ。食堂ではなくロビーみたいなところを見ただけですが、品の良い西洋絵画やソファにクロークなど、ハイソな空気は満点でした。
大盛況。
ガス灯のフードの形に似ていることからすずらんが意匠として使われています。
面白かったのが、当時は珍しかった生セロリがバーカウンターに置かれていたという話。写真を見せてもらいましたが、いわゆるバーカウンターに、丸ごとセロリがざくっといけられているところをご想像ください。にょきにょきと生えているみたいなんです(笑)。現在はお皿でサーブされるものの、変わらずの名物メニューです。
屋上からの景色。
自然の神秘である炎を家庭に持ち込むことに夢とロマンを感じていた時代に思いを馳せます。
モダンな外観に御堂筋を見下ろす素晴らしい景色と、楽しいイメージしかないガスビルですが、第二次世界大戦当時は、ネオンやエスカレーター、エレベーターなどが不要不急の設備として金属供出され、空襲を逃れる為に昭和19年からは外壁をコールタールで迷彩塗装し、昭和20年3月の大阪大空襲では全館シャッターを降ろして罹災を免れたそうです。終戦後は一時進駐軍に接収されたりと、暗黒の時代をくぐりぬけてます。
古い建物をめぐっていると必ず戦争の影が浮かび上がってくるのですが、そのたびに空を見上げてこの青空を埋め尽くしたであろう飛行機や焼夷弾を想像すると、こののどかな時間が実は大きな苦難を経て獲得されたものであることに気づかされ、ちょっとだけ厳粛な気持ちになります。
ちなみに、迷彩塗装は昭和24年に洗浄されたそうです。南館の外壁はその当時と同じものなのでしょうか? だとしたら、よくがんばったね、となでてあげたいものです^^
気持ち良い屋上からの景色と、大阪の歴史を垣間見せてくれた、大満足のガスビルツアーでした。
(文中のガスビルの歴史については当日お土産にいただいた『ガスビル食堂物語』を参考にさせていただきました)
知りませんでした。
スズランのデザインとか丸く切りとった意匠とか可愛いです
ガスビル食堂はずっと前から一度カレーライスを食べに行きたいと思っているのですが、まだ一度も行った事ないです。
コース料理を頼むと、最初に一本セロリが出てくるらしいですね
↓の青山ビルも・・・
こういうビルって中はどうなってるんだろうと気になりますが、期待を裏切らない内装ですね。
オーナーさんは最初に建築を依頼した居住者さんの子孫なんでしょうか?
建てられてから今までに色んなストーリーがありそうですね
今回のガイドツアーは、イベントのための特別なものでしたが、ミュージアムみたいなのがあって、ふだんも見学できるみたいですよ。予約がいるかもですが。
ガスビル食堂は私も行ってみたいんです。
でも、お昼時は混んでいるらしいし、さりとて夜は高いしで果たせずにいます。セロリ、やっぱり有名なんですね
青山ビルに関しては詳しいことはわかりませんが、持ち主は建築当時から変わっていたように思います。実は、お話の内容からオーナーさんだろうと勝手に検討をつけただけでして、もしかして違ったりして^^;いやいや、でもあんなお話オーナーさんじゃないとできないと思うんですよね・・・。
ところで、ブログをまたいでなんですが、デジカメのお話ありがとうございます。EOSのKiss見たことあります。軽くて使いやすそうだなと思ってました。chikaさんのブログを拝見すれば、色が綺麗なのは間違いないですね
今の気持ちが半年~1年揺らがなければ、購入を検討したいと思います(笑)。
先日、ガスビルのセミナーに行ってきました。
外壁のタイルは剥がれ等があったために、2004年から2年かけて全面張替されたそうです。
すごい費用がかかったと思いますが、ガスビルさんが英断してくれたと、安井建築設計事務所の方が仰ってました。
貴重な情報コメントありがとうございます。
2年もかけて張り替えたんですか。すごいですね。
確かにキレイでした。
でも、そんな最近の話とは思いませんでした。
今ちょうど、「生きた建築大阪」という本を読み始めたところですが、人々の生活とともに移り変わっていく姿こそが「生きた建築」なのだと書いてありました。
ガスビルはまさにその典型ですね。素晴らしい。
当時の壁とは違っても、今度訪れたときはやはりなでなでしてあげたいと思います