徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

えっ?

ハードランディングの可能性がありますね。METAR を見ると、Final で格納庫の影響をもろに受ける風ですから、雨とも相まって PF がドシンとやってしまったのかもしれません。

雨の中、Evacuation したのでしょうか。タラップ付けて降りることができたならば良いのですが....。

RJTT 150200Z 02012KT 7000 RA FEW007 SCT010 BKN015 19/17 Q1010 RMK 1ST007 4ST010 7SC015 A2984
RJTT 150130Z 03015KT 7000 RA FEW007 BKN010 BKN030 19/17 Q1010 RMK 2ST007 5ST010 7SC030 A2984
RJTT 150121Z 03015KT 8000 -RA FEW007 SCT010 BKN030 19/17 Q1010 RMK 2ST007 4ST010 7SC030 A2983
RJTT 150103Z 03015KT 7000 RA SCT007 BKN010 BKN015 19/18 Q1010 RMK 3ST007 5ST010 7SC015 A2983
RJTT 150100Z 03014KT 7000 -RA SCT007 BKN010 BKN015 19/18 Q1010 RMK 3ST007 5ST010 7SC015 A2984

RJTT 150030Z 03016KT 7000 RA SCT007 BKN010 BKN015 19/18 Q1010 RMK 3ST007 5ST010 7SC015 A2983
RJTT 150000Z 04019KT 7000 RA FEW010 SCT012 BKN015 19/17 Q1009 RMK 2ST010 3SC012 7SC015 A2982

JAL機、前脚のタイヤ2本パンク 羽田、滑走不能に (朝日新聞) - goo ニュース

本来あってはいけない推測ですが、私見をお許しいただけるのなら;

2時の方角からの横風だから、de crab (機首を風上に向けて進入してきて、接地の時点で風上を向いていた機首を滑走路方位[今回の場合、340 度に約左に60度]に合わせ着陸する操作)が必要だったわけで、そこに、羽田 Runway 34L Final 特有の(格納庫の影響による)ラフ・エアーが重なり、方位維持と高度維持とでバタバタせざるを得なかった。

1)高度ロスしないようにパワー入れたので接地点が延びかけたので、ドシンと降りてしまった。滑走路面が Wet だったので、オーバーランを防ぐべく、直ちにフル・リバースを入れ、前輪接地の操作も荒くなり、ノーズギアに相当の加重がかかりパンク、タイヤが外れる事態に陥った。

2)ラフエアーでファイナルで高度をロスした。そのタイミングがパワーを絞り、これからフレアというタイミングと一致してしまい、殆んどフレアをかけられない状態で、主脚が接地、not tilt でスポイラーが extend し、そのモーメントが(もともとフレア不足で余裕の無い)ノーズギアをハードに接地させてしまった。その衝撃でタイヤが外れる事態に陥った。

お怪我をされたお客様が数名いるようですが、大事故に繋がらなくて良かったです。

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(追記)
1.お客様はタラップとバスで降機されたようです。雨中の Evacuation にならなくて不幸中の幸いでした。

2.Yahoo! ニュースの写真

JAL1002_at_HND_Runway34L_photo

を見ると、機体は A6 辺り(そのように見えるのですが)で止まっていますね。
と言うことは、接地は通常の接地帯かその手前だったのでしょうか。

バウンドしたとの記事もありましたが、主脚着いてバウンドした場合、not tilt で extend したスポイラーは、マニュアルで retract しなければ、バウンド後も立ったままなのでしょうか?
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自動化に潜む罠

どうもメートル表記されるとイメージが湧きにくいのですが、FL290 で file した Plan で実際は FL340 を飛んでいたようですね。

全日空機、高度1600m誤り40分間 計器故障のまま (朝日新聞) - goo ニュース

先ず、このようなことがあると必ず“機長(39)と副操縦士(30)を乗務停止、整備士3人も業務から外した”となりますが、航空会社自らがそのような姿勢だからいつまで経っても航空後進国から脱することが出来ないのです。知る人は知っていますが「青社、やっぱりお前もか」です。

なぜ降ろすかというと、世間体やマスコミの攻撃を考えてのことです。その根底にあるのは「ミスを犯した当事者」という航空の安全を考える上では化石時代の発想です。
乗員からの事実関係の聞き取りは必要で、今回の場合それに応じた GS:Ground School(地上での座学)と SIM: Simulator (シミュレータによる訓練)1ラウンド位は必要でしょうが、それ以上地上に引き留めておいて何の意味がありますか。会社が「当該乗員は適切な教育と訓練を経て、早期に通常乗務に復帰いたします」とどうして言えませんかねぇ。



本インシデントは、極めて危険な状況であったと思います。ジャイロ(水平儀)・速度計・高度計は飛行機を飛ばす上で欠かせない計器類であり、どれか一つが故障すると極めて危険です。
今回の場合は、高度計が実高度と異なる値を示した上に、それを自動操縦にカップリングさせて飛んでいた訳ですから、例えば、山岳地帯への降下進入をおこなったりしておれば、CFIT: Controlled Flight Into Terrain (正常コントロールされ飛行している機体が地上に激突する事故)で山に激突という大惨事を招いていたかも知れません。

報道にあるように、ニアミスや空中衝突の危険性もありました。

航空管制のレーダーには、一次レーダ,二次レーダとありまして、一次レーダは単に空中の対象物からの反射波をひろい表示しているものです。これだと、ターゲットは解りますが、その高度・速度・便名などはレーダ画面に表示されません。一方、二次レーダは空中のターゲットと地上のレーダ・サイトとの間でデジタル通信を行なっており、その通信内容を基に便名、機種、高度、速度を表示させています。ここでポイントとなるのは、高度の情報は、当該航空機に搭載されている高度計の読み取り値を地上に送り、レーダーに表示させていることです。
したがって、東京航空管制部のレーダー画面には、当該便の飛行高度は FL290 と実際とは異なる高度が表示されていた訳です。
管制官の皆さんの頭の構造は瞬時にして3次元の状況をイメージし的確な処理を出来るようになっておりますので、ターゲットが交差する状況においても、高度差を直ぐイメージします。今回の例ですと、 290 との高度表示で東へ向かっている当該便を、 350 の高度表示で南西にクロスするターゲットがあったとしても、十分な高度差があり安全であると判断するでしょうし、管制システム側も、 6000 フィートの高度差がありますから、Conflict Alert (衝突警報)が作動することもありません。『でも、そのクロスターゲットは高度差 1000 フィートしかなかったことになります』

航空機に搭載されている TCAS: Traffic alert & Collision Avoidance System (衝突防止警報装置)も原理的には類似しています。
自機周囲の航空機に質問電波を発射し、その応答により相手の方位・距離・高度を表示するとともに相手機との接近率をモニターし、接近率の度合いに応じて TA, RA といった回避警報を発するようになっています。ここで、実際 FL350 で西方向に飛んでいる航空機が当該便と真正面から向き合って接近してきたとしても、TCAS の表示は自機よりも -60 ですから、何の回避警報も発しないでしょう。当時の気象状況がどうだった(FL340 が雲中だったか雲上で視界良好だったか)のか分かりませんが、仮に on top (雲上)で視界良好だったとしたら、 FL350 ですれ違った航空機は TCAS 表示を疑ったでしょうし、自機の高度計が故障しているかもしてないと疑ったかも知れません。



まだ、事実関係も表面的なものだけであり、対策を論ずるには不十分でありますが、敢えて私見をお許しいただけるなら、幾つかの問題点が考えられます。

Boeing 767 は、グラス・コックピットを導入した初代の航空機で、システムとしては最新鋭の 777 などよりも一世代前のものです。が、設計思想は今でも十分通用するものですし、それ故に、コンピュータのバージョンを上げることで、より最新のシステムにキャッチアップすることも容易です。ここに、自動化されたコックピットならではのちょっとした盲点が生まれます。
全機体のシステムが一斉に変わり、767 ならどの機材でも微細にわたりコンピュータの revision は同じ、であれば良いのですが、実際問題は、初期に導入した機材のこのシステムはこれこれこうだが、最新に導入した機材では、その部分はこのように自動化され procedure が変わっている。古い機材も、重整備に入ったものから、新しい procedure が適用されるように改修を行なう、といった類のことが起こりえます。通常、そのようなことは、AOM: Aircraft Operation Manual や運航技術情報等で、周知を徹底することになりますが、その手の改定や Bulletin が多くなると、人間が正確に記憶することは難しくなります。多種多様のバージョンが存在する中では、それらの最大公約数をとってマニュアルや procedure を統一する組織と運用が必要でしょう。

次に、コンピュータは常に正しいとは限らないのです。ただ誤動作や誤動作した際のバックアップシステムが機能して、正しい動作や表示をしている状態がほとんどです。そのような状況に慣れてしまうと、コンピュータが万一おかしな挙動をしたとき、「それを正常に戻そう」という危険な心理が入り込みます。
航空機や原子力発電所などのコンピュータシステムは、二重・三重のバックアップ体制がとられており、システムとして自己診断機能や故障耐性機能が備わってはいますが、それをオペレーションする人が適切な措置をしないと、非常に危険なループに陥ってしまいます。

ハイテク機も初期の頃は、「Left Seat と Right Seat で表示が違う」とか「"*** INOP"の表示が出るが、調べてみたらセンサーやシステムは正常だった」といったことが珍しくなかったので、コンピュータに対する良い意味での疑心暗鬼が Cockpit Crew に働いていました。また、新型機の場合や、新規に deliver された機体の場合、同様の疑心暗鬼が働くと考えられます。
ところが、導入後十数年が経過し、大きな事故も無く正常な運航が継続すると、その「疑心暗鬼」の部分がだんだんと麻痺してしまうのです。

今回も、Co-Pilot 側にカップリングさせたら同一値になったので、ひとまず良しと安心してしてしまったのでしょう。「正常に戻そう」が“疑心暗鬼”よりもちょっとだけ勝ってしまったのかもしれません。PIC はその後、整備さんと Company でやりとりして原因追求をしていたようですが、この 10000 ft の時点で、もう少し“疑心暗鬼”で足掻いて欲しかったですね。カップリングをあれこれ変えてみるとか、STBY の Altimeter (予備のアナログ式高度計)とクロスチェックしてみるとか、思い切って ATB するか FUK に divert する決断をするとか。
この類のトラブルがあったときは、「この状態で羽田までたどり着けるか」ではなくて「この状態で HKG, GUM, HNL, SIN, BKK まで行けるか」との発想が必要だと思います。

それと、巡航に移ってからも手元の Company Plan は 290 の風、気温なのに、自分たちは 340 にいる訳ですから、Wind Factor とか Temp、雲の様子などから「あれっ」と思い大気断面図、悪天予報図と自機の状況とを比較するチャンスもあったのではないでしょうか。四国上空で気付いて KIX か ITM に降りれば(勿論、管制には状況説明して十分なセパレーションをとってもらいながらです)、危険な飛行時間は半分以下で済んだ筈です。



最初にも記しましたが、当該便の Crew は極めて貴重な経験をし、十二分にどうするのが適切だったかを考察していることでしょう。その貴重な声をAOM等に的確に反映させ、早期に乗務復帰してもらうことを望みます。

乱文、失礼いたしました。

全日空機、高度1600m誤り40分間 計器故障のまま (朝日新聞)
 全日空の長崎発羽田行き664便(ボーイング767型機、乗客・乗員計96人)が今月5日、管制官の指示より約1600メートル高い高度のまま約40分間にわたって飛行を続けていたことがわかった。機長が機体の高度計の異常に気づいたものの、適切な処置をしなかったという複合的な要因によるものとみられる。当時、周囲に他の飛行機はいなかったが、空中衝突防止警報装置(TCAS)も正常に作動しない可能性が高く、管制官も実際の高度を把握していなかった。国土交通省はニアミス(異常接近)につながる恐れがあったとして、同社を厳重注意した。

 全日空が14日、明らかにした。664便は5日午前11時すぎに長崎空港を離陸。約10分後、機長は高度3000メートルの上空を上昇中、機長席の高度計と副操縦士席の高度計にずれが生じ、機長席の高度計が高く表示されていることに気づいた。

 この際、機長席の高度計を、機長席のコンピューターから副操縦士席のコンピューターに接続し直したところ、数値が副操縦士の高度計と一致したため、機長席のコンピューターが故障していたと誤解して、飛行を続けたという。

 この結果、同便は大分県上空から静岡県御前崎沖までの41分間、約600キロにわたって水平飛行をした。機長席の高度計は高度8800メートルを表示していたが、実際の高度は1万400メートルだった。

 上空8800メートル以上は約600メートルごとに交互通行しており、同便は航路2本を飛び越えて飛行したことになる。

 また、TCASは別の航空機の接近を察知して回避行動を指示する仕組みだ。しかし、今回のように高度計と異なった高度で飛行した場合、高度計のデータをもとに接近状況を判断するため、実際の衝突を回避できない恐れがある。接近してくる他の航空機のTCASも、誤った高度をもとに作動する可能性が高いという。

 同便は、機長席と副操縦士席にそれぞれコンピューターがひとつずつあり、高度計などが接続されている。しかし、機長は事情聴取に対し、コンピューターが三つあったと勘違いして、自分が切り替えたコンピューターがその三つ目だと思い込み、副操縦士の高度計表示と合致したため、副操縦士の高度計が正しいと判断してしまったと説明しているという。

 機長は水平飛行中、羽田空港の整備士に問い合わせたが、整備士も誤りを指摘できなかった。管制官のレーダーにも機長席の誤った高度がそのまま表示されており、管制官は気づかなかったという。午後0時半過ぎ、羽田空港に着陸後、副操縦士席のコンピューターの配管が故障していたことに気づいた。

 全日空は機長(39)と副操縦士(30)を乗務停止、整備士3人も業務から外した。

 全日空は「別の航空機が接近してもTCASが正常に作動しなかった可能性が高く、あってはならない重大な事象だった」としている。

2005年06月14日23時08分



(追記:6月18日22時17分)
毎日新聞の報道によると、

「計器の不具合は、副操縦士用の高度計を制御するコンピュータと機外をつなぐ管の連結部にすき間があったのが原因で、外気圧が正確に測れず、高度が実際より低く表示されたという。」

とありました。単純に考えると“静圧”が正しくなかった、と言うことは、指示対機速度 IAS: Indicated Air Speed も違っていた可能性はないのでしょうか。B6のシステムを知らないので何とも言えませんが、静圧孔が検出する静圧は、ピトー管が検出する全圧と共に、IAS, Mach Number を算出するのに使われるようにも思われます。
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