井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

ジョン・レノンを殺した凶気の調律A=440Hz

2012-04-02 23:37:58 | アート・文化

かなり刺激的なタイトルに触発されて買ってみた。いやはや何とも難しい内容だった。

著者によると、

528Hzが「万能の愛の定数」であり、奇跡を起こし、傷ついたDNAも治す。

古代ソルフェジォの6音は396, 417, 528, 639, 741, 852の周波数。

そのうち741Hzのみが唯一、愛528Hzと不協和になる。楽器をこの周波数にチューニングすれば、ゆっくりと、しかし確実に、愛する気持ちを毒し、社会全体(人口のすべて)をむしばむことができる。

と、恐ろしい事まで書いてあるのだが、はて、一音だけ聴いて奇跡が起きたり、病気になったりなどということがあるだろうか。

それは到底信じられない。

また「A=440HzにするとCが528Hzにならない。528にするにはA=444Hzであるべきで、国際会議でA=440Hzに定めたのはイ○ミナティの陰謀」となっているのは完全に見方がおかしい。

A=440Hzにすると、純正律ならばぴったりC=528Hzになるのだ。平均律が頭を狂わせる話ならばわかるが。

にも関わらず、この本に興味を持ったのは他の部分である。

先ほどの741Hzは、大体F#の音になるが、これとCは増4度の不協和音程。昔から「悪魔の音程」と言われている。

この増4度が「社会全体をむしばむ」というのならばわかる。そして、

イ○ミナティが人間の頭と心を支配しようとしていることが、このテーマによって証明されている。(中略)神からのメッセージや直感を濁らせることが、エゴや「認知機能」の領域を悪用する悪魔たちの最大の目的である。

等の文章があるのだが、そのように苦痛を与えて支配するために「増4度」を使う、ということならば納得できるからだ。

さらにロック○ラー財団が戦時中から「集団ヒステリー」の研究を行い、実践例がプレスリーやビートルズとある。研究者の中にはハンス・アイスラーとテオドール・アドルノが含まれていた。

そしてカッコ書きなのだが、[ビートルズの楽曲をアドルノが作曲していたという「ビートルズ陰謀論」がある。]という一文に惹きつけられた!

以前に本ブログのコメント欄で「ビートルズのゴーストライター」に触れたことがある。これは信じていたのだが、えっアドルノ?

アドルノの本は図書館には必ず置いてる類の、いわゆる難しい本だ。私はまだ読んだことがないし、あまり読みたいとも思わない。

ウィキで調べると、実は作曲も勉強していて、アルバン・ベルクに師事したという。しかし「支持」していたシェーンベルクらが評価されないのに失意を感じて、作曲は止めたらしい。そしてポピュラー音楽を否定的に見ていたとのこと。

これは怪しい。世間をあざむく仮の姿のニオイがする。

また、シェーンベルクも怪しげなところはあちこちある。玉木宏樹さんは「シェーンベルクは調性が大好きだったのではないか」と述べられていた。その説には大いに賛同する。

為政者にとっては、一般市民が音楽を聴いて知性や理性が豊かになっては困るから、その権威であるアカデミズムに仕掛けをして、人々の気が狂いそうになる音楽こそ未来のあるべき音楽だと仕向けるようにイ○ミナティなりが誘導したのではないか、と想像してしまった。

だってですよ、ユダヤ人としてアメリカに亡命してですよ、あの誰も聞かない音楽を書いて最後はビバリーヒルズですよ。あり得ない!

そのアドルノが否定的だったストラヴィンスキーは売れている3大バレエがあったにも関わらず、生活するのに大変そうだったし。

この本の意図するところとは別であり、本来の読み方ではないと思うが、少なくとも私はこの本を読んで、現代音楽に対する訝しさが吹っ切れた。

これを機に、現代音楽から調性を奪ったのはロック○ラーの陰謀と井財野は決めつけ、それに抵抗する道を力強く歩んでいこうと思うにいたったのである。その意味で、大いに役にたった本であった。

ジョン・レノンを殺した凶気の調律A=440Hz 人間をコントロールする「国際標準音」に隠された謀略() (超知ライブラリー 73)

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
亀コメントですみません。神戸では、大変お世話に... (まりどん)
2012-04-05 15:42:44
亀コメントですみません。神戸では、大変お世話になりました。先生にいただいた温かいコメントを、娘は大切にしております。「ファンタジア神戸」の楽譜も、良い記念品になりました。ありがとうございました。

そして今回の記事、相変わらず博識でいらっしゃいますね。「悪魔の音程」には、お稽古母として、違った意味で共感があります。譜読みの間は耐えねばならぬとわかっていても、つい耳栓をしたくなる日々。この時間を短縮する方法はないものでしょうか。そういうお話についても、またお聞かせいただければ幸いです。
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速い遅いはあまり問題ではなく、コメントしてもら... (井財野)
2012-04-05 23:27:53
速い遅いはあまり問題ではなく、コメントしてもらえることに意義を感じますので、どうぞご遠慮なくコメントしてください。
譜読みは大変かもしれませんね。できたら、音を出す前に譜面をじっくり眺めて、出てくる音を頭で想像するようにすると、譜読みが速くなるかもしれません。お試しあれ。
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ほほぅ、アドルノは一冊だけ読んだことがあるので... (まう)
2012-04-13 23:52:13
ほほぅ、アドルノは一冊だけ読んだことがあるので興味深いです。
個人的にはA=440Hzでも弦楽器にはやや高い気はするんですが…。
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忘れた頃のコメントになってしまいましたが・・・ (井財野)
2012-04-19 19:10:11
忘れた頃のコメントになってしまいましたが・・・
この問題は多岐にたっていて、簡単にはお返事できませんでした。

まうさんはヴィオラ弾きだから440Hzでも高いと感じるのかもしれませんね。
そして、反応されたのは、以前のゴーストライター説に関する部分だと思います。
アドルノにそこまでの才能があったのかどうか、アドルノの作品そのものを全く知らないので全然わかりませんが、音楽による大衆制御ということが実験されていて、アドルノもそれに関わったのは事実なのだろうと受け止めています。

それにしても、この本がいくつかのブログに採りあげられていて、それがほとんど無批判の鵜呑み、そのまま「間違った」記述を引用しているのには参ります。

平均律でC=528にしたいのならばA=440より上げなければなりません。
その意味で、博士の主張する444は正しくなりますが、では何人かのミュージシャンがピッチを下げだしたという記述は何ですか?

というように論旨が滅茶苦茶です。ひょっとしたら誤訳の可能性もありますが。
このでたらめな論旨を鵜呑みにする人が案外多いのがきがかりです。
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お返事ありがとうございます。今はアイリッシュフ... (まう)
2012-04-22 21:56:09
お返事ありがとうございます。今はアイリッシュフィドル中心の演奏活動で、A=440Hzでやってます。民族音楽に触れてるのでより440Hzが高く感じてしまうのかもしれません…(笑)たまにオケで使う為に442Hzにするのですが、楽器が悲鳴を上げてるような気がしてしまいます(笑)。

そもそもビートルズの楽曲ってA=440Hzなんでしょうか?絶対音感云々の本もそうですけど、こういう本の信頼度ってどうなんでしょう?
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まう様 (井財野)
2012-05-06 16:47:38
まう様
今頃のコメント返しは普通しませんが、お許しを。
この刺激的なタイトルのせいなのでしょう、いまだにコンスタントにこの記事が読まれています。
まず、ビートルズの楽曲は440Hzではないように思いますが、測ったわけではないので、正しくはわかりません。
しかし、繰り返しますが、440Hzと528Hzは純正律の短3度で、それはきれいに調和します。444と528は平均律なので、そこまで美しくは調和しないと思います。
思います、というのは実は人間の感覚だからで、ピアノの平均律で育った人間は純正律を必ずしも美しいとは思わないからです。
これも詳しく述べると単純ではないのですが、今は省略します。
一部のメンバーがチューニングを下げる話が書かれていますが、下げたら今度は純正律でもなくなる訳で、これも528Hzとは関係ないエピソードとなってしまいます。

第一、本文にも書きましたが、音楽は固定した音をずっと聴かせるものではないのだから、音律で人をどうのこうのはできないでしょう。それにそこまで正確な音高を出すのは大変技術がいるし。
という次第で、この本の信頼度には正直言って疑問が多々あります。が、鵜呑みにしなければ、なかなか興味深いことを書いてあるので、それなりの存在理由は認めるというところですね。
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